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半熟な恋
その店に訪れたのは2回目だった。
中央線から外れた、貨物倉庫が林立する場所にあるcafé。
コンテナを積んだトラックに挟まれながら、その店に辿り着く。
視界が狭い中に不意にサインが輝いていた。
まるで手品のように思えた。
その朝は体調が良くなかった。
それなのに彼はタンデムシートに私を積んでいく。
シートが薄くて跳ねるので、荷物になった気分になる。
その振動に包まれて、生理が近いのかな、とぼんやりと考えていた。
おしゃべりのない店内。
どうしてこの場所にcaféを開いたんだろう。menuを開いても場違いなものがセレクトされて並んでいる。
「galetteが美味しいんだってさ」
女性誌の表紙からでも学んだのかな。
そんな薄い女ではないと思うけど。
その彼を眺めながら、ガレットをフォークでつついている。
時計を見れば、まだ午前中を消化しきれていない。ということは午後が広々と横たわっているわけか。その時間的な余裕に思惑が透けている。
こんな日は寝たくないな。
生理中ってことにしておこうかな。
お預けしてあげるのも、躾のうちかな。
彼の思いを逸らしながら、目玉焼きを潰してみた。
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