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ドクダミの花


今朝、ノンと散歩をしていたら、終わり頃にポツリポツリ雨が降り始めた。

咄嗟に肩から提げたカメラが濡れないよう確かめていると、

ふわっと雨の匂いが鼻先をかすめた。

一週間、天気がよかった。

一週間、毎日自転車で通勤ができた。

そんな日々のあとの雨。

降り始めのときだけに現れる、少し土埃をまとった香り。

幼い時分から心に馴染んだ雨の匂い。

愛知県の小さなあの町。

大阪の枚方。

そして今、倉敷。

どこにいても不思議と雨の匂いは変わらない。

近所のお地蔵さんの前でドクダミが白い花を咲かす。

庭のあじさいの蕾が色を見せ始める。

家に入って朝食をとり、コーヒーを淹れる。

雨も

コーヒーも

ドクダミも

白檀のお香も

香りは、幸せの記憶だ。

コーヒーがきれそうだから、明日あたり買いにいこうかと、インターネットからいつものお店で焙煎の予約をする。

ほんのひとときの雨は、感傷と匂いの記憶だけを呼び起こして、すぐに止んだ。


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