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【エッセイ】ニベアソフト

香水の強く香るところ。わざわざ無差別に自己主張をしたくない私はあまり得意ではない。ガラスやフォルムの美しさにはとても惹かれるのだけど。そんな私も香るもの自体は大好きなので、もっぱらハンドクリームを使っている。因みに今の一番のお気に入りは、クナイプのネロリの香りのハンドクリームだ。記憶が正しければネロリとは、オレンジの木から採れるオイルのことである。

しかし私の中での安定は、ニベアソフト。
なんと中学生の頃から愛用している。親友とお揃いで買ったニベアソフトの、蓋部分に合わせて八角形に切ったプリクラを貼って使っていた。親友とは、四歳からの仲である。
中学一年生の頃、「悪口を言える人がかっこいい」みたいな小学生の名残がまだ少しあった。強く言える人がカーストの上にいて、悪口だけの繋がりの友達(今の私ならそれを友達とは言わない)がいて、悪口を言う時が一番”上の子”達と共感ができた。
私は人の良いところを簡単に見つけてしまうし、割とどんな人とも一度は仲良くしてみたいと思う。だから、居心地の良い人間関係を作れる器用さを、あの頃の自分が持っていれば良かった。そんな時期でもお互い素のままで大口開けて笑えた親友は、ある意味戦友とも言えるのかもしれない。

今でもニベアソフトの蓋を開ける時、その八角形にピンク色の色褪せたプリクラの影を見る。優しい香りは、どこか幼い香りがする。

#エッセイ

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