■イスラエル軍のガザ侵攻の主目的は地下要塞(トンネル)の制圧(完全に近い破壊)だと考えられるが成功する公算は小さいであろう

■イスラエル軍のガザ侵攻の主目的は地下要塞(トンネル)の制圧(完全に近い破壊)だと考えられるが成功する公算は小さいであろう
 この記事全文-> https://note.com/sawataishi/n/nb49c5b1c7774

▼はじめに
 イスラエルの生存権を認めるパレスチナ自治政府の方針に断固反対するハマスがガザを2007年から支配しているために、ガザ住民が受けてきた悲劇については申すまでもありません。パレスチナ自治政府はイスラエル国に対して無差別攻撃を一度もしてきてないのに、ハマスは幾度も幾度もしてきました。それに対する自衛権行使としてのイスラエルによるガザ空爆は必至であり、ハマスはイスラエル人の死者の数倍のガザ市民が死ぬことをわかっていて繰り返してきました。
 ハマスやイスラム戦線の戦闘員や指導者は地下都市に住んでおります。イスラエルがある建物を空爆の対象とる場合、地下都市へのトンネル入り口があることが条件。民間人の死傷者を減らすためにイスラエル軍は常に建物に住んでいる住民の携帯電話等に退避勧告をしてきました。当然のことながら、ハマス等のテロリストはそれを知ると、地下に避難。民間人も地下に避難することができたのか? 私は証拠によりyes/noに回答することはできませんが、おそらく民間人が地下都市に逃げることをハマス等は許してこなかったと思います。間接的証拠ではないですが、これまで私がいろいろと検索してきた範囲では、ハマスが民間人を地下要塞に待避させたという報道を見たことがありませんし、ハマスが空爆予告を受けて民間人を守るためにそうしたとの声明も見当たりませんでした。
 テロリストは地下に逃げ、大急ぎで民間人は建物の外に逃げ、そして空爆。建物は破壊され、常に逃げ遅れた民間人、爆撃をうけた近傍の民間人が多数殺されてきました。テロリストの死者一人に対して、民間人の死者は数倍~10数倍だったと考えられます。そして、ハマスはイスラエルによる蛮行と常に声明してきたわけです。常にイスラエル人の死者よりガザ人の死者が数倍は多いため、嘆かわしいことに、日本や欧米のマスコミはハマスの宣伝に踊らされるというより、現実を理解する努力不足のために、どちらも悪いがイスラエルの方がより悪いとの姿勢。西側の「有識者」「人道主義者」「リベラル派」「左翼」の過半数どころか圧倒的多数もその姿勢で今日に至ってます。
 
▼人類の目標はガザをハマスから解放することでなければならない
 もしも、自治政府がガザをずっと支配していたらば、今頃はパレスチナがイスラエルにより独立国として承認されていた公算が小さくありません。ハマスこそがパレスチナ人にとって「客観的な作用としての」敵であり、イスラエルはパレスチナ国民の敵ではけっしてありません。但し、イスラエル内閣はこれまでしばらく愚劣な民族主義者(反イスラム、反アラブ、反パレスチナ)により支配されてるため、ヨルダン川西岸に国際法違反・オスロ合意違反の入植地建設やデモ隊を銃撃するなど蛮行を重ねてきたことは事実です。けれども、それでもイスラエル政府はパレスチナ人そのものを敵と見做すことはなく、条件が整えば独立を認める姿勢は継続して維持してきました。地球村としてのスローガンはこうであるべきです。
 Let's free GAZA from HAMAS!

 ガザの人々を(Gazans)をハマスとかイスラム聖戦から解放して、パレスチナ自治政府の統治下に戻すための手段こそが、私達が真摯に検討せねばならないことだと思います。目標はパレスチナ自治政府が領土を回復すること。
 ほぼ自明なことは、イスラエルによるガザ侵攻は目標達成とならないこと。その理由をあげます。

  1. ガザには地下都市(地下要塞)があり、イスラエル軍はそれをほぼ完全破壊することはできようもない
     補足1: 地下要塞と言いましたが、イランの技術支援による
      ロケット弾等の武器製造工場も地下にあると考えられます。
     補足2: ハマスが地下に巡らした要塞都市・武器製造工場建設の
      資金はイラン、アラブ諸国の有志(アラブの諸政府からも)などに
      よりますが、ハマスの税収のかなりがそれに支出されている
      のです。国連機関がガザ住民のために学校を運営したり
      病院を運営するために莫大な資金をこれまで毎年毎年投じて
      きてますが、支配者ハマスがガザ住民から得た税収のうち
      国連が支出した総金額を地下都市建設に充当してきたのです。
      国際社会がガザの民間人のためにお金を用いてきたことは
      当然のことでありますが、その総額はハマスに対する補助金と
      なってきていのが単純明快な事実。だからと言って、国連が
      ガザ住民にために資金援助 and 要員派遣をするべきでないと
      は全く主張しません。
      この事実故に、ガザ住民をハマスから解放しなければならない
      のであります。もしも、ガザ住民に対して無記名にて、
      ハマスの妨害なき世論調査がなされるならば、
      「あなたは自治政府とハマスのどちらを支持しますか」と
      問われたら過半数は自治政府支持と予想します。そんな
      調査はハマスが支配している限りありません。
      確かに、2006年にはハマスがPLOに選挙で勝利しましたが
      今のガザ住民の過半数以上はハマスから解放されたいと
      望んでいると私は推察します。

話しを戻します。イスラエル地上軍はガザの北側半分に関しては、地下要塞の完全破壊ができるかも知れません。その過程において、地下都市に捕らわれているイスラエル人/アメリカ人/タイ人等の何割かはそこにいますので、ハマス・イスラム聖戦のテロリストと同じく人質が犠牲となります。イスラエルは敢えてそうすると考えます。ああ、なんたること。それほどの犠牲を払っても、イスラエルの目的は達成されるはずないと思います。
 なぜなら、ハマスは当然のことながら、北ガザの地下要塞から南ガザの地下都市に何ヶ月も前から人員、武器を移動させてないはずありません。ハマスは二年以上前から今回の軍事作戦を準備してきたので、イスラエルが北側半分に侵攻することを予測して備えてないとは考えられません。人質のほとんど全員を南の地下要塞に閉じこめていると考えられます。おそらく、北側の地下都市にも数人以上の人質を意図して幽閉しており、イスラエル軍が地下要塞を爆破して子供や女性や老人がイスラエルの爆破により死ぬ場面をリアルタイムで中継すると思います。中継するハマス要員は自分が死ぬと覚悟してそうするのです。
 北ガザの地下要塞が完全に破壊されたとしても南には地下都市が残ります。ハマスの主力はそこに隠れており、人質の大多数はそこに閉じこめられてるでしょう。イスラエルが南ガザの地下要塞を破壊するためには、南ガザから住民がエジプト(シナイ半島)に待避する必要があります。そんなことができるはずありません。イスラエルがそのことを呼びかけること自体が論外ですが、エジプト政府が仕方なく認めるとしても、アメリカなどの国連加盟国がしかたなく全力を尽くすとしても、200万人以上がシナイ半島に歩いてないしは車で逃げることができるとしても、莫大な人命損失とならないとは考えられません。シナイ半島は砂漠みたいなところであり、そこには食料となる植物も動物もほとんどないし、水は少ししかなく、雨風をしのげる洞窟も少ししかありません。暖をとり、食べ物を調理するための薪もほとんどありません。200万人以上の難民をエジプトの都市に収容するとエジプト政府が決断するとしても、道路にも輸送手段にも深刻な限界があり、ガザ人はシナイ半島で輸送の順番待ちをするしかないし、待っている間の食料・水、燃料、住居等は必要の 1/100 を遙かに下回り、医療などほとんどないので、病者、老人から先に死にます。新型コロナやインフルエンザが蔓延したり、衛生が欠如することによるコレラとかの感染症発生による死亡が破局的になることも避けられないでしょう。赤ちゃんの母達は飢餓状態になり、乳がでなくなり、乳幼児の死亡も激増することでしょう。アラブ人・イスラム教徒は「困った時はお互い様」の文化を人類の中でも最も高く維持している民族の一つだと思いますが、生きるために同胞同士で争うようになることも避けられないと思います。

 イスラエル人の出エジプトにおいては100万人以上(? 人数は私にはわかりません)が脱出しました(エクソダス)。神による奇跡によりイスラエル人は無事にエジプト軍の追撃から逃れました。しかし、200万人以上のガザ人のエクソダスはそうはなりません。エジプトから逃げたユダヤ人は食料、家畜を豊富に持参してましたが、パレスチナ人はほとんどもってません。ガザとエジプトの境を着の身着のまま越えても、そこには生きるための資源はないし、諸国・国連ができるかぎり準備するとして全く不足します。

 以上のことは私が云うまでも無いことです。要するに、イスラエルは南ガザの地下要塞・都市を完全ないし大部分破壊しようとしても不可能ということ。イスラエルが南ガザ住民のエジプトへの退避が不可能と認識したら、取る道は二つに一つ。

  1. 南ガザを本拠としているハマスに最後通牒を発する。降伏せよ、しないならば地下都市を破壊するために侵攻すると宣言
     もしも、ハマスが拒否したとしても、イスラエルはできないでしょう。したくてもできないのではなく、恐るべき大虐殺となることが自明だから。けどもイスラエルは最後通牒を発すると私は予想します。もしかしたら、ハマスは降伏するかもしれないから。ハマスは降伏しないと思います。
     結局のところ、ハマスは脅迫に屈しない、しかしながら、イスラエルは南ガザに侵攻しないとなるでしょう。イスラエルには打つ手がなくなります。そこからが、アラブ諸国、国連、アメリカの出番。諸国 and/or 国連による停戦仲介が始まり、実際に停戦が実現すると予想します。そもそもハマスもイスラエルも戦闘凍結を事実上はしていることでしょうが、停戦 truce とは事実としての戦闘中止ではなく、両当事者が公的文書で制約する戦闘停止。
     公的文書による両者の停戦が仲介により実現したら、ハマスの処遇が国連にとっての主題となります。停戦条件にハマスの処遇が含まれるのが望ましいのですが、そうはならないでしょう。停戦後、国連ないしは仲介する諸国連合はハマスの支配を完全に排除して、パレスチナ自治政府にガザを戻すことを当面の目標としなければなりません。そうなることを願うし、そうなる公算が高いと思います。
     ハマス要員については自治政府が全員を投獄して、1人1人について自治政府が裁くこととなりましょう。その過程が実現するためには、国連平和維持軍の駐留が必須となりましょう。イラン以外のアラブ・イスラム諸国だけにより構成されないとなりません。

  2. イスラエルは南ガザの地下要塞完全破壊をあきらめて、停戦を呼びかける
     イスラエルがこの選択をするか 1) を選ぶか? 私は 1) だと予想します。何故ならば、2) だとハマスからするとガザの南側支配をイスラエルは容認することとなり、ハマスの領土はほとんど半減するもののイスラエル国の目的(ハマスの殲滅)は達成されようがないからです。ハマスの領土が南半分に減じてもイスラエルに対する脅威はそんなに減りません。地下要塞・武器工場の質×量は半分以下によるとしてもイランの援助とアラブ諸国の有志からの支援も継続するので、数年以内にハマスの軍事力は元に戻ることでしょう。
     イスラエル政府はこのように計算するので、2) を選択する公算は極めて小さいと考えます。そもそものことですが 2) つまり、ハマスに対する停戦呼びかけにハマスが応じる公算もほとんどないと思われます。ハマスからするとこう読めます。ハマスが断固として停戦を拒否するならば、イスラエルによる軍事侵攻が現実となり、それこそハマスにとって「嬉しい」ことだから。220万人が閉じこめられてる南カザにイスラエルが侵攻するならば、大虐殺となることは必至。しかも、ハマスは地下要塞に隠れているので死傷者の99/100は民間人となりましょう。アメリカすらイスラエルを非難し、イスラエルは完全に孤立して、結局のところ戦争目的が達成されない状態での停戦に追い込まれましょう。
     言うまでも無く、ハマスが 2)のようなイスラエルがしふしぶ妥協しての停戦を受諾したならば、それはそれでイスラエルにとっては短期的にはまあまあでしょうが、前述の如くハマスがイラン等の支援により軍事力を元通りにすることでしょう。

▼まとめ・結語(解説してない追加も)
a) ハマスこそがガザ封鎖をもたらした元凶である
 天井無き監獄をもたらしたのはハマスである
b) ハマスはこれまでの事態の結果として、パレスチナ人にとって有害
  ハマスの無力化こそ人類の目標とならねばならない
c) ハマスによるガザ支配がなかったら、オスロ合意によるパレスチナ国の独立は達成されていたであろう、あるいは今後二十年以内に
d) ハマスの無力化は第五次中東戦争、第三次世界大戦を回避するためになんとしてもなされねばならない
e) アメリカによる空母艦隊派遣は、アメリカのこれまでの蛮行を知るアラブ・イスラム諸国の民衆の気持ちを逆なでするものであり、完全な過ちである。アメリカによる空母打撃群派遣をハマスとイランが大喜びしており、期待していたことであろう。アメリカによる空母部隊派遣は火に油を注ぐ効果のみであり、戦争の抑止になるとは到底思えない。
f) ハマスとイランは第五次中東戦争開始を望んできてはいないであろうが、アラブ諸国の大衆の情念がアラブ諸国政府を動かして対イスラエル宣戦布告をもたらす危険があると思う。第五次中東戦争の危険は大いにある
g) イランの民衆も政府もイスラエル国を理念として敵とみてはきているが、おそらく民衆の多数派は対イスラエル戦争を本気で求めることはないと思う。歴史的にイランとイスラエルの間には領土問題がなかったし、イスラエル独立直後の第一次中東戦争にイランは参戦してなかった。アラブ人とペルシャ人の対立がそもそも千年以上にわたりあり、イスラエル国とイラン国にとってラブ諸国が敵であり、敵の敵は友という構造を有する。とはいえ、イラン政府はイスラム原理主義であり、イスラエルと国益が対立してないのに、理念によりハマスとヒズボラ等のテロリスト集団を援助・育成してきたし、イスラエルが一線を越えたらイランは関与せざるを得ないと二日前に声明した。本当は対イスラエル戦争をしたくないのに、イラン政府が対面を保つために宣戦布告あるいは宣戦布告なしの限定的な対イスラエルの軍事攻撃をする公算が小さくはない。

▼補足1
 パレスチナ人(アラブ人)、ユダヤ人、どちらも(アフリカ人も日本人も)ノアの子孫・同胞であり、もっと重大なことにアラブ人とユダヤ人はアブラハムの長男・次男であるイシュマエルとイサクの子孫、兄弟姉妹。両民族は誇り高く、どちらも頑固で、名誉と約束を重んじてきました。ユダヤ教もイスラム教も天地創造の神・万軍の主たる神はただ1人(ユダヤでは YHVH、イスラムだとアッラーという固有名詞。神には固有名詞があるのです)としており、困っている人を助けるための税・喜捨が宗教的義務だとし、異邦人の旅人が村にきたら手厚くもてなす文化を育んできました。どちらも普遍的宗教でありますが、ユダヤ教は布教を全く促さないのに対して、イスラム教は全人類をイスラム教徒にすることを命じてるのが違い。

▼補足2: ガザの地下都市・要塞について
 イスラエル・パレスチナの対立について関心がある人達の間では常識のことですが、知らない人が多いと思います。ガザの地上には220万人の民間人が住んでおり、ガザを支配するハマスは地下都市・要塞を建設し、その規模はおそらく人類史上最強の規模だということ。イスラエルの目標が地下要塞破壊であることはいうまでもありません。以下に読むべき最近の記事のURLsを記します。

以上。

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