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なんでも話せる人

なんでも話せる人がいる。まるまる全部を受け入れてもらえる感じがして、それは少し贅沢な気もする。

そんな幸せなことがある一方で、言葉を選んで話さなくてはいけない人もいる。そういう人と会わなくてはならない時、わたしは決まって、なんだかとんでもない間違いをしてしまったような気になる。不安で今にも泣きそうな、迷子の子供みたいに。

社会人なのに、と思う。社会人なのに、未だ全然ちゃんとしていない。ちゃんとするというのはわたしにとって、ある意味すごく得意なことでもあり、でも「ちゃんとしなさい!」と強制させられるのは嫌い。言葉や話題を慎重に選んだり、自分が何を大切にしているのか明言できない環境は息苦しくなる。社会人なのに。

だからというべきか、スーツを着てタイドアップするのは好き。スウェットとかジーパンとか、人様の前に出るのに適当ではない格好をして、しかも空気の読めない発言ばかりしていては、本当にちゃんとしていない人に見られてしまう。見た目だけでもちゃんとしていれば、せいぜい「変わった人」くらいで留まることができるかもしれない。ちょうどボブ・ディランがジャケットを着ているのに似ている。

もしかしたらそれは、危険思想なのかもしれないと思ったりもする。芥川龍之介曰く、「危険思想とは常識を実行に移そうとする思考であ」り、ひいては常識を疑えというメッセージだ。好きな人とだけ、ただ一緒に暮らしたいというのは、常識的すぎるのかもしれない。

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