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シアタークリエ日本初演ミュージカル『GIRLFRIEND』へ愛を込めて


ミュージカル『GIRLFRIEND』シアタークリエ公演、千穐楽、本当に本当におめでとうございました。
もう1週間以上経ってしまって、やっと一旦感想をまとめることができました。(できた…のか?)
とめどなく思いが溢れてきてしまって、文章をまとめるのにえらい時間がかかりました。

私が観劇したのは、高橋萩谷ペア、高橋木原ペア、高橋吉高ペアなので、
そこから感じたこの公演の感想になります。
島さん、井澤さんは、インスタライブとYouTube等で拝見した印象を書かせて頂いてます。
あくまで個人的に感じた解釈なので、もし間違っていてもご容赦頂ければ幸いです。

無事にキャストさん、バンドメンバーさん、スタッフさんたちが欠けることなく、最後まで走り抜けられたことが本当に嬉しいです。
この6人が、カンパニーが、ウィルとマイクが出会ってくれて、そしてこの作品に私たち観客を出会わせてくれて、本当にありがとうございました。

本当に本当に素晴らしかった。心の底から面白いと感じたし、初日のあまりの衝撃に、余韻を引きずりに引きずりました。
何ならいまも余韻の真っ只中ですが。
初日を見た後の1週間は特に、本当に仕事に支障をきたすレベルで心がネブラスカに行っちゃってました。
寝る前もずっと頭の中で考えてしまうから、寝つきが悪くて寝不足で、
この現象は私だけかと思ったら観劇された皆様も同じような状態だったらしく、そうですよね!考えちゃいましたよね!と握手を求めに行きたい笑
なんとか今は落ち着きましたが、終わってしまった寂しさや作品への想いはずっと心に残ったままで、
自分の中で落とし所を探さないと次へ行けないな、と葛藤しているところです。

頭が評価する前に心がもう震えている作品って、なかなか出会えないですよね。
どんなに名作と言われている演目だって自分には全然響かない時もあるし、
逆で、すごく評判が悪くても、自分には運命なんじゃないかと思うぐらい刺さる演目もあって。

もちろんキャストさんや脚本、演出、セット、衣装、照明、その他もろもろの作品側だけの要因だけじゃなくて、
自分の健康や精神のコンディション、役者さんたちのコンディション、お天気、隣に座ったお客さん、
色んな要素が影響しあって舞台を見た後の気持ちって決まると思うので、
そうした奇跡が噛み合って自分の中にとてもとても大きく響いた作品でした。
こういう舞台に出会えた時に、本当に生きてて良かったと感じます。


◯題材について

初日に行く前に分かっていた情報は、HPのあらすじに書いてある1990年代のアメリカの2人の男の子同士の恋愛のお話ということだけで、
作品の情報を探そうにも海外で上演された際の一部の切り抜きの動画しかでてこないし、そもそもあんまりネタバレを知りたくないので調べたくないしで、日本初演ということもあり、面白いのか面白くないのかの判断材料が少なく、尻込みしていました。

正直なところ、非常に構えていました。
自分が今まで見てきた同性愛をテーマとした作品って、主張したいテーマが結構強く、見るのにも精神力と体力を使うことも多くて、しかも結ばれなかったり死別したり、切ない終わり方が多かったので。
だから、健介さんの2人ミュージカルだから見に行きたいという気持ちはあれど、何回も見て自分が耐えられるのかな。重い気持ちになって疲れてしまわないかな、と思っていました。

でも初日の公演を見終わったら、完全に杞憂でしたね。
切ないシーンもありましたし、苦しいシーンもあったけれど、でも私が目にしたのは、どこまでもお互いを全力で思い合う未熟で魅力的で愛すべき2人の恋物語でした。

そもそも恋愛映画とか恋愛漫画が自分はあまり好きではなく、何で好きじゃないのかなと自分なりに分析していたのは、あくまで2人の間だけで話が展開して、スケールが小さいからだと結論づけていました。
それよりもっと大きなスケールの、恋愛が関与しない映画の方が面白いじゃないか!というのが過去の私の主張。

でも、この作品を見て、人のことを好きになったり大切に思うことって、素敵なことなんだなぁと、純粋にそう思っちゃったんですよね。
徹底的に2人の世界だからこそ、深いお話になるということをつくづく学びました。人生観を変えられてしまった…。

◯自分の中の一番印象的なシーン

初日の高橋萩谷ペアの観劇を終えた後、あまりの余韻に、これはすぐには家に帰れないなと思い、
街中を長い間ふわふわと浮かれた気持ちで歩いてからやっとのことで帰ってきて、
もう寝なきゃ。でもどうしてもこれだけは書き留めておかなきゃ、って思ってスケッチを残したシーンが
2人が一緒に過ごした夜の後、空っぽの部屋で目覚めたウィルの不安な背中でした。
ここが私のGIRLFRIENDにおける一番鮮明な記憶。

この演出、すごいと思いました。

2人が一緒に騒いで歌って、そのあと甘い雰囲気になって愛を交わした後の、
圧倒的な落差。

大きな効果音があるわけでも、大転換があるわけでも、大声のセリフどころか一言すら喋らなくて、朝の外の街の音だけが聞こえてくる空間。

シアタークリエのあの大きな空間に、ウィルが1人でポツンとベッドに上半身だけ起き上がってる。
とても静かなシーンなのに、ウィルの大きな不安と絶望を感じました。
世界が一気にガラッと音を立てて崩れる感じ。
ねえ、ねえ!っていう声も、怖さをなんとか抑え込もうとしているみたいで必死で。

やっと部屋に入ってきたマイクはウィルとは正反対でとってもご機嫌で、
俺はこの部屋でお前と朝を迎えることで、やることをすべて完遂した。すべてに対応した。でしたっけ?
最高だ。みたいなセリフ。自分の記憶力が怪しすぎますが、そういうことを言って。

つまりこれって、ウィルとの恋も、この町で済ませておくことチェック事項のひとつとして処理していると無意識に発言していて、
更に、これから朝ごはんを食べて〜等々、先々のプランまで明確に述べてみせる。
全てがマイクの計画通りに進んでいる。進んでいると若いマイクは思ってしまっている。

(この感じは、大学生活中のマイクもずっと変わっていなくて、
まだ1学期しか終わっていないのに、すでに卒業後のことを気にし始めている発言がありました。常に計画的に動き、未来を見据えて今を生きている人。
厳格な父親を嫌いつつも、父親の教えは悲しいほど身に染み付いていて、そう生きずにはいられない人。)

でもウィルにとっては好きな男の子のお部屋に行くなんて初めての体験で、
普段のウィルは打ち解けるとたくさん喋る子なのに急に静かになっちゃうくらい緊張していて、
その中で音楽で心を通わせて一緒に夜を過ごして、
朝起きたら空っぽの部屋の中で1人だけ、
マイクはご機嫌で部屋に入ってきて、すがすがしい気持ちで街を去ろうとしている。

(ウィルはマイクとは違って、先々のことを考えて動くということをやってこなかった人。
おそらく複雑な家庭環境や1990年代に同性愛者であるという事実で、
そうする術を与えられてこなかったのかもしれない人)

自分には何が残るんだろう?
マイクと比べて、自分ってなんて空虚な存在なんだろう。
って、ウィルは気づいてしまった。

それをなんとか否定して欲しくて、大学に行くのは遅いかな?って必死にマイクに聞いても、軽い調子でそうだねと言われてしまう。
大好きな人に、一番否定の言葉を言って欲しかった人に、完全に梯子を外されてしまった。
ここでウィルの気持ちを察してちゃんと配慮した言葉を選べるほどマイクは大人ではないし、ウィルの人生を背負えるほどの力もない。
どうしようもなく無力な2人のすれ違い。

様子がだんだんおかしくなっていくウィル。心配そうに背中をさすってくれるマイク。どこまでも残酷に優しい。
その優しさもつらくなっちゃったんじゃないかな。
未来があって、友達も多くて、裕福で、かっこよくて、何よりも自分にこんなに優しく接してくれるマイク。
それに対して、何も持っていない(ように感じてしまっている)ウィル。
あまりにも自分を惨めに感じて、なんとかマイクから離れることで自分を守りたかったんじゃないかな、と感じました。

ずっと猫背だし、肩をギュッと寄せて手を体の前で組んで、なかなかリラックスした様子を見せてくれないウィル。
寝る時も静かに体を丸めるように寝ているウィル。
自分を守るように生きていて、他人から自分をシャットアウトすることで自分の世界に入り込んで、それを大人になることだと思っていたけれど、
初めての友達・恋人との交流を通してメッキが剥がれて、自分のまだ幼くて臆病な部分が晒されてしまった。
全然成長していなかった自分を否応なく自覚させられてしまった。
身長はマイクより高くて身体だけは大きくなっていたけど、精神的には未熟なギャップが、悲しいほど浮き彫りになっていたシーンだったなと。
切なくて苦しいけれど、大好きなシーンです。

今思い返せば、早起きなマイクとお寝坊なウィル(映画デートの翌日の朝の電話とか、お部屋デートの時の起きる順番とか)
ここにも人生の計画性がうっすら出ていたなと後々思い返して気づきました。

◯高橋健介さんのウィルの哀しさと声

高橋ウィル、めっちゃ愛すべき子だな。
というのが初日を見てすぐ思った感想です。
多分初日は結構濃いめに頬にチークが入っていた気がするんですが、それ以降は薄くなっていたような。
初日が一番おどおどしたおとなしい子の印象が強かったです。それ以降は少し自然になっていて、それもそれでとても好き。

基本的には世の中に対して斜に構えて自分を世界からシャットダウンして、おそらくそうすることで自分を本能的に守って生きていて、
諦めモードが滲み出ている。観客の前では明るく振る舞ってるけど、常にどこか空虚。
でも、世間に擦れていないぶん、純粋さが時たま垣間見えて、急に見せてくれる笑顔とか仕草がめっちゃ可愛い。
そして時々はっとするぐらい色っぽい。
身長は高いはずなのに、自身なさげに少し猫背でポテポテ歩くから、マイクと比べても小さく見えました。

マイクが好きになったのは、ウィルがゲイという事実に加えて、
おそらく最初はこういう見た目的なところがスタートだったんじゃないかなと。
綺麗な顔でおとなしくて常にふてくされていそうなクラスメイトが、ふとしたタイミングで笑ったりして、わっ、可愛いって思ったのでは?
あと、マイクのセリフにもあるように、「ウィルは最高。蜘蛛の腕」ということで、やはり見た目が好きそう。
だからこそあんなに最初の映画デートの時点で、ウィルの横顔をうっとり見つめちゃうんじゃないかしら。

私は、健介さんがお芝居の中で醸し出す哀しみの雰囲気が本当に好きで、
今までもワーステの迅さんの飄々とした中でふと見せる哀しさとか、
幕末天狼傳での蜂須賀の、自身の戦いの経験が少ないことを憂う気持ちとか、
舞台地獄楽の天仙様の長く生きるが故の退屈さからくる一種の希死観念に近い虚無感とか、
(じごステ本当に大好き。天仙様が本当にぴったりの配役でしたし、演じてくださったことが本当に嬉しい。
いまでも心に強く残っている舞台です。サントラ欲しい。)
色々な演目を拝見してきましたが、
それとはまた違う哀しさをもったウィルが目の前に現れて、こんなお芝居を見せてもらえちゃうんですか!?と本当に嬉しかった。

健介さんって、セリフとか歌とか仕草に本当に繊細に感情がのっていて、後からその演目を思い返した時に、
そのちょっとした繊細なシーンがずっと心に焼き付いて1つの動く絵画のように思い出されることが自分の中であって、そうしたシーンが今回もたくさんありました。

これが特に感じられたのが、星空のWe’re the Sameのシーンでした。
ここ、めちゃくちゃ複雑なシーンじゃないですか?
さらってやってるけど、下記のことが交互に展開されて、すごく情緒がぐちゃぐちゃになる。そもそも順番がちゃんと思い出せない。

・ウィルの親の事情
・マイクが今週末に街を去ること
・マイクが彼女と別れたこと、他に好きな人がいるって言ったこと
・マイクがギターで歌を歌って、ウィルに対して愛を語る

「僕の父さん ユタに行ったんだ」
何のこともないように小さな声で言いながら、でもマイクに背を向けて、
草をえいえいって蹴ったり、しゃがんで草をいじる感じが、すごく印象に残っています。
草がないのにそこに草があるように見える。わかるよ、芝生でしゃがんでだべってる時って草いじるよね。
平気な感じで自分の家の事情を述べていますが、
調べたらネブラスカからユタって車で8時間くらい、電車で1日以上かかる、すごい遠いところらしくて、
お父さんがいなくなって寂しいんだろうなぁって全身から伝わってくる。

(ここではマイクはセットの上にゴロンと寝転んで星を眺めていて、
ウィルの両親が離婚したことに驚いて起き上がってたような。)

顔を見せてってマイクに言われた時の「すごく暗いけど」の言い方も好き。

順番が合ってるか全く自信がないですが、その後に、今週末にマイクが街を去ることを聞いて、
「来週じゃなかったの!?」って本当に悲しい顔で問いかけて、
それに答えずにマイクがギターでWe’re the Sameを弾き語りし始めた様な。

この後、多分ウィルは芝生に座ったままで、マイクは一旦芝生から立ち上がってギターを取り出して弾き始めると思うんですが
(でも来週じゃなかったのってセリフを立って言ってた気がするんだが。。。記憶が、記憶がもう薄れてる。一回立って座り直したんだっけか?)
ここでのウィルがとても好きでした。
マイクは歌で愛を語っているのにその奥には別離が潜んでいて、
ウィルはその曲を聴きながら芝生の上に座り込んで、腕で顔を覆って、いろんな感情でぐちゃぐちゃになって、
泣いてしまっている様に見えました。暗いからマイクからは見えていないのかもしれないけれど。
マイクが自分に愛を語ってくれる嬉しさと、今週末に去っていく事実を急に知らされた驚きと悲しさとか、
決して甘酸っぱいだけのシーンじゃ無かったなぁと。
そんな感情を抱えたまま、震える泣きそうな声で途中から「Baby」と歌い出す。

ワンフレーズをマイクが歌い終わった後、
「うまいね! 俺もピアノで猫ふんじゃったは弾けるよ」って、あえて明るい声でキッパリ切り替えて、
マイクに近寄っていって、セットの上のマイクの隣に座り直す。

そこで彼女と別れたこと、好きな人がいるって言ったことをマイクから告げられて、え?ってなって、
またマイクが歌い出してからの、「お前、何で目をつぶってるの?」→ウィル無言→マイクがぐっと顔を近づける
→ウィルが直前で気づいてお互いハハハハ→ふと見つめ合う→キス、だった気がします。

ここのシーン、本当にいろんなことが展開していて複雑だけれど、すべてがひとつの流れの中で、
最後のとても神聖で静かなシーンへ導かれていくところが本当に好きでした。本当に綺麗な星空だった。
劇場中のお客さんがすごい集中力で息を詰めて2人を見守っていた。嘘じゃなく一体感を感じてました。
ここを丁寧に丁寧に描き切っていたからこそ、この作品がとても好きだなぁと本当に感じました。

他に健介さんウィルのセリフの中で、特にとても好きだったのは以下のシーン。

「夢、見なかったな」(引越し当日の朝のシーン)

「金のこととか?母さんのこともあるし。そんな感じ(うう、セリフ曖昧だ。)」(ウィルは卒業後何をやるのか聞かれたシーン)

「待つよ」(セーフウェイに行く日にマイクの迎えを待ちながらのセリフ。ちょっとねめつける様に観客に向かって言う言い方が好き)

「今日は時間がなかった」(タバコ臭い服を着替えられなかった理由を言うシーン)

「可能性はある」(急に迎えにくると言い出すマイクに対して、自分にも予定があるかもと言うシーン)

「お前は良い脳外科医になれると思うよ。それがお前のやりたいことなら」
(ここで、初めてウィルがマイクと対等に話した様に感じました。このセリフを言われた時の、「えっ」ていうマイクの表情も好き。
ウィルはさらっと思ったことを言ったんだろうけど、マイクはすごく自分にとって意味のある言葉をウィルからもらったんだろうな、
というのを表情から察せられる。)

今作は特に繊細な囁くような小声でのお芝居が多くて、声を張らない演技に含ませる感情がすごく好きでした。

あと、何より、歌ですね。

いままで健介さんの歌を聴くことが多かった刀ミュでは、低い音域の曲が多いので気づきにくかったのですが、
健介さんって高音がめっちゃ出るし綺麗ですよね。
今年の刀ミュの陸奥一蓮公演での蜂須賀ソロが割といつもより高めの音域でその魅力が出ていたのでやったー!!と思ったのですが、
その時よりも更にレベルアップした歌声がたくさん聴けたのが本当に嬉しかった。スコーンって抜ける綺麗な高めの声が好き。
だから「Reaching Out」が始まった瞬間に震えました。私の知らない健介さんの歌声だ!!!歌い方も今までと違う!!
しかも、すごく綺麗なハモリだ!!!
これだ、これを聴きたかったんだ、、、、と歓喜しました。これを待ってた。
そもそも、出てきた瞬間から、今まで見てきた健介さんのお芝居とは全然違っていて、もう完全にウィルとして見ていたんですが、
ウィルの感情が痛いくらい歌から伝わってきて、最高でした。
ウィルの歌声なんだな、と感じた。

もうひとつ、色々な方が言及されているけれど、高橋萩谷ペアは、お互いの視線での表現が素晴らしかった。
目線でのやり取りが本当に豊かで、これを感じられるのもシアタークリエというちょうど良いサイズの会場だからこその醍醐味で、本当に豊かな演劇体験でした。
ひとつひとつのセリフを受けての目線や、セリフが無いシーンでも、目線だけで感情を豊かに表していて大好きでした。

高橋健介さんとウィルという役を出会わせてくれたGIRLFRIENDに本当に感謝です。

◯萩谷慧悟さんのマイクのずるさと強さ

最初に萩谷さんのマイクを見た感想は、悪い男だな〜、でした。
圧倒的なプロムキングで、かっこよくて強くて優しくて、裕福で将来もあって。
でもウィルにはずっと優しくて、愛してくれていて。
こんな人に大好きオーラを向けられて、ずっと一緒にいたら、そりゃあウィルはマイクのことを好きになっちゃうよね。

でもそんなパーフェクトマンなマイクも、結局は10代の田舎の青年で、
ウィルと一緒にいることよりも、父親の支配下を離れることに必死だった。
そこはどうしても譲れないところで、
そこがマイクのずるさでもあり、人としての強さだなと。

この”悪いな、ずるいな”っていう感情、木原マイクや吉高マイクには感じなかったんですよね。
彼らは意識せずに自分の感情の赴くままに恋をして、それが結果的に意図せずウィルを傷つけてしまってショックを受けていたように感じたけれど、
萩谷マイクには、自分の人生のチェックリストを埋める作業にウィルを付き合わせているという自覚がおそらくある。
自分の計算ずくの人生をどこかで意識していて、そのレールを外れることができない自分のキャパシティーもどこかでわかっていて、
ウィルとは別の意味で空虚。
自分が引っ越すための道具である箱を、自分のことが大好きで街に残って欲しいと思っているウィルと一緒に買いに行くなんて、
思い返せばすごく残酷でサイコパスなシーンですよね。そういう歪みがマイクにはある気がします。

だからこそ、引越しの朝にウィルに拒絶されたことが、相当ショックだったんじゃないかなと。
これまではずっと自分から別れを告げる立場だったんだろうし(実際、劇中でも彼女を振っているし)
だからこそ、You Don’t Love Meの最後のシーンでウィルと目を合わせてくれないんだろうなと。
この曲の最中、ずっと萩谷マイクは自分の感情を制御するのに必死で、いい意味であんまりウィルを意識していない気がします。
拒絶されたことにびっくりしちゃって、自分の人生とかウィルへの愛とかでぐちゃぐちゃになっちゃって、
何よりも自分のプライドが傷つけられてしまって、子供みたいにふてくされて、最後にウィルを見れないんだろうな。と私は感じました。
対するウィルは悲しみをおびながらも、毅然とした視線でマイクを見つめている。
ここで初めてマイクはウィルをちゃんと個の人格をもった1人の人間だと気づいたのかもしれない。

だからこそ、見にこないって言ったくせに結局は野球を見にきちゃうウィルに対して、それまでのシーン以上に一番誠実で真剣でした。
特に千秋楽のここのシーンの間の取り方とか、セリフの言い方とか、本当に好きでした。

セリフうろ覚えですが、ウィルにキスして、
「あいつらに何と言われようと気にしない」
「お前が何より大切だ 愛してるよ」
って言って抱きしめてくれる。
初めてここで愛してるよってちゃんとウィルに告げているのに、
こんなに悲しいキスシーンってあるんだって思いました。

このシーン、立ってやるか座ってやるかも多分ペアごとに違って、
高橋萩谷ペアは座っているところから立ち上がってましたが、立つとウィルの方がちょっと背が高くて、
少し背中を丸めているウィルと、背伸びしてすがりつくようなマイクの対比も良かったなぁ。

マイクは愛を込めてキスしてるけど、ウィルはずっと悲しくて遠くを見るような目でうつろな表情で焦点が合っていなくて。
おそらくマイクには見えていないであろう”あいつら”が視界に入りつつ、
それよりも何よりもマイクとの別離が何より辛くて。でももう諦めちゃってるんだろうなという気持ちも見えて。
だって、いつも持ち歩いてマイクからもらったカセットテープを聴いてたポータブルのカセットプレーヤーをこの日はもう持っていない。
それでも、「じゃあここに残って」って言いながら、震えた手でマイクの背中に弱々しく手を回してくれるウィル。優しいし健気。
確か木原マイクの時も吉高マイクの時もここは手を回していなかったはず。唯一萩谷マイクのことは抱きしめ返してくれる。

でも、最後のなけなしの勇気で背中に回した腕を、マイクにゆっくり解かれて、それはできないって言われてしまう。
辛すぎる。どうしろっていうんだよ!!!ってウィルは思ってたんじゃ無いかなぁ。
そりゃあ、今の両者のスペックじゃ、「もう無理」でしかない。八方塞がり。
この現状を打開するには、ウィルがもっと力をつける以外の選択肢が無かった。

マイクは愛を伝えてはくれるけど、一緒に行こうとも、大学受験の勉強をしろとも、言ってくれなくて、将来を語ってはくれないんですよね。
どう動くかはあくまでウィルに委ねられている。

こうして書くとやっぱり萩谷マイクに対しては無邪気に身勝手だな〜、こいつ〜!!!という気持ちが湧くのですが、
でも、初日から千穐楽まで、ウィルを好きでいることにはとても誠実でした。(途中見れてない公演もあるけども)
ずっと優しかったし、ウィルを雑に扱うことはしなかった。
だからこんなにもマイクのことも愛しく思っちゃうんだと思います。

映画のシーンもろくすっぽ映画を見ないでずーっとウィルの横顔を愛しそうに見つめていて、エンドクレジットだねって言われて、あ、あぁ、そうだなって感じでやっと正面を向く感じで。
吉高マイクと木原マイクはもうちょっとちゃんと映画見てたのに。

Winonaのビデオ越しの顔も、こっちが照れるぐらい愛に溢れていて、
こんな顔を観客が見ちゃっていいんですか!?っていうぐらい照れました。
かっこいいし、相手のこと本当に好きなんだな、という目線。すごい。

Evangelineのキスの後にお家に向かう時に、手を繋いでくれるのも多分萩谷マイクだけだったはず。
一緒に手を繋いで行ってくれる感じが、マイクの作り上げた完璧なプロムキング像の根底にひそんでいる、彼本来の優しさが見えていて好きでした。

あと、タバコ臭いって言われたことを気にして離れて地面に座っちゃうウィルに対して、自分もすっと近づいて一緒に地面に座ってくれる萩谷マイクも好きでした。他のマイクとだとセットの上でやってた気がする。
そこからの「俺のこと、かっこいいとか思う?」「まぁ、思う、かな」のやり取りですよ。焦ったいな〜、可愛らしすぎる。

もひとつ、マイクを許せちゃうポイントとして、
悲しいことに、大学生活はあんまり楽しくないって言ってるところがもう、本当に、つらいな〜と思う。
やっと父親の支配下から逃れて念願の一人暮らしができて、清々するかと思いきや、思ったより楽しくなかったんだな、というのが、どうしようもなくリアル。すっごく人間的。

初日を見たイメージでは、マイクにウィルが振り回されていて、ウィルの感情は赤裸々に見えるけれどマイクはあくまでウィルから見たマイクで、真意が掴めない孤高の人の様に感じていましたが、千秋楽は人間味が増して、お互いの葛藤を感じられた気がします。
それは元々そうだったけど、自分が何回か見たことで見えてきた景色なのかもしれない。何にせよ、どちらも好きでした。

高橋萩谷ペアの作り上げたGIRLFRIENDは、
空虚と空虚を抱えた人間が出会って、惹かれあって、でもそれぞれの環境や立場や今までの人生によってどうしても譲れないもの、
どうしても踏み出せないこと、それぞれの言い分があって、10代の無力さの中であがいて、最終的に別れを選んでまた出会う。
そういった人生を見せていただいたな、という印象でした。
やっぱりメインペアってすごい。

他のメインペアだとおそらく全然違うストーリーに見えていたんだと思うからこそ、見なかったことがちょっと惜しく感じるとともに、
自分の中の物語を決める上では間違ってない選択だったのかなとも思います。

余談ですが、この作品の面白い現象として、
自分のお目当ての俳優さんの相手役の俳優さんもめちゃめちゃ好きになっちゃってる方が多い気がするんですが、
私も例に漏れず萩谷さんが役者としても人としても、とても好きになりました。何なら初日を迎える前の萩ちゃんねるの対談の時点ですでにファンでした。

ORDERMATEも入っちゃったし、
この感想の仕上げをLuckyFesの7ORDERさんの配信を見ながら書いています。かっこいいなー!!!

◯木原瑠生さんのマイクの若さと誠実さ・井澤巧麻さんのウィルの包容力

木原さんマイクは、本当に誠実で真面目で、一番若いマイクに感じました。
本当に夏の草の匂いがしてくるような、青春を体現していたマイク。
いい意味の未熟さと優しさを持っていて、苛烈なカリスマ性というよりも、
静かだけれど確実な存在感を高校の中で持っていたのかなというイメージ。
あとめちゃめちゃジーンズ生地の衣装似合う。
歌の実力は刀ミュで知っていましたが、本当にお上手。綺麗な声。
その上手さをあえて感じさせないでサラッと歌われているので、ストーリーに入り込むことも邪魔しない技術がすごかった。

中の人たちの関係性もあるのかもしれませんが、
高橋木原ペアは、すごく信頼が見えた公演だったように思います。それに心が本当に熱くなった公演でした。不思議な安心感があった。
高橋ウィルが精神年齢が高めでちょっとお兄さんに見えて、そこに信頼を寄せるように木原マイクも誠実に成長していったイメージ。

一番マイクの誠実さを感じたのが、手紙のシーン。記憶が確かだったら、ウィルの足元に跪いていた気がする。
本当にまったくウィルを責める気持ちがなく、自分の中での後悔をただただ吐露していた気がします。

木原マイクはなんか本当に純粋だなーと思わされるシーンが多くて、色々な感想を拝見していて皆様も仰っていますが、
映画をひどい映画だって言われて、ちょっと間をおいて好きなんじゃなかったの!?って言うシーンとか、
本当に気づいてなかったんかい!?って思ったり。
ちゃんとカオスな映画を楽しんでるのが可愛い。

あと、Looking at the Sunの時に、「マジで俺と逃げ出し〜たいの? ツッタカツッタカ🎵」みたいな謎のボイパ?が入ってるのが
独特で記憶に残ってます。可愛い。

木原マイクの一番好きなシーンはWinonaでした。
ビデオ越しに映し出される顔が本当にかっこよかったことと、最後のあたりの、「ひとりぼっち」と言う歌詞の時に、
確か背中をこちらにずっと向けていて、その背中が本当に寂しそうで、
一番ひとりぼっち感を感じたのは木原マイクでした。
優しいからこそ本当の自分の気持ちをちゃんと見せられる相手がいなくて、寂しく思っている中で、
ウィルに出会えてやっと心の拠り所を見つけた、そんな印象を受けました。

そんなマイクだからこそ、井澤さんの包容力がありそうなウィルとのコンビは、とてもマッチしていたんじゃないかな。

木原さんのメインペアの井澤巧麻さん。一番包容力があるウィルなのかも。
友達感覚が強いウィルとマイクという感想もちらほら拝見していて、気になる。
しっかりものかと思いきや、インスタライブで木原さんと一緒にボケ倒しているのを見ると、意外とおちゃめな方だぞこの人。
6人のインスタライブでのOINARISANの発音がめちゃめちゃ好きでした。何でアーカイブ消えちゃったんだ泣

YouTube拝見しましたがめっちゃ歌お上手。Venus良い曲だし、かっこよい。

ギターとかピアノも弾けちゃうんですね。そんなん好きやん。
あと、インスタに上がっているお写真を見るとすごくかっこよくて、マイクも似合うイメージもあります。
実際にインタビューを拝見するとマイク役はどうですかって打診もあったみたいですし。
でも、Xのポストとかインスタライブでの様子を拝見すると、とても暖かくチームを見守ってくださるイメージがあって、
それは一番年上というのもそうだと思うんですが、根本があったかい方なのかなとほっこりして、やはりウィル役が適任なのかも。
まだお芝居を見たことないので、ぜひ見てみたい。

◯吉高志音さんのマイクの全力の愛・島太星さんのウィルの全力の愛

吉高さんマイク、発表された時から絶対似合うしかっこいい、と思って気になってました。実際に拝見しても、めっちゃ素敵。
とはいえ、お芝居されているところは今回初めてみたのですが、
インスタライブとかで感じる絶対いい人だなこの方というオーラが滲み出ていて、
すごく素直に全力全身で愛してくれるマイク。ハッピーエンド力が高い。
卑屈さとかがなくて、みんなに愛されて自然とプロムキングになっていた歴史を感じられました。
あとなんだか触り方とか愛情表現が色っぽくて照れる。声が意外と高めで、歌声の響きが本当に綺麗。
インスタライブで他のマイク役の皆さんから言われてましたけど、吉高志音っていう名前、すごくかっこいいですよね。響きが綺麗。
今年はさらに冬のシアタークリエ公演next to normalへのご出演が発表されていますが、ぜひ見に行きたい。

高橋吉高ペアだと身長もほぼ一緒で、
とくかく吉高マイクがまっすぐウィルに対して向き合ってくれるから、高橋ウィルもひねくれが少なめでまっすぐ向き合おうとしていて、
一番対等に恋愛しているなぁと感じた。私この公演すごく好きでした。

前述したYou Don’t Love Meの最後の時に、萩谷マイクはウィルと目を合わせてくれないけれど、
吉高マイクはちゃんと、泣きそうなしょぼんとした大型犬みたいな顔でウィルと目を合わせてくれる。これ、嬉しかったなぁ。
この曲中も、すごく2人がちゃんとシンクロしている様に感じて、対等に葛藤していることが伝わってきました。
高橋吉高ペアはYou Don’t Love Meが一番好き。

この曲に入る前の引越し当日の朝も、本当にすっごくわくわくして部屋に入ってきて、嬉しいな嬉しいなという感情が溢れていて。
だからこそ、だんだんおかしくなっていくウィルに対して、本当に自分のせいなのかなって焦りながら「昨夜俺が何か?」って聞いて、
すごく不安がっていて、ウィルが帰った後に本当にすごく悲しそうに泣いてる。

ここのシーンか、野球のシーンかが思い出せないのですが、ウィルが感情を吐露しているところで、その思いを受けてかなり後ずさってたじろいでいて、正面からウィルの気持ちをガンと受け止めてくれている感じが素敵でした。

そうだ、忘れちゃいけないのが、「最高の場所に連れてく(セリフうろ覚え)」のセリフがすごく誠実でドラマチックでした。本当に、びっくりするぐらいドラマチックで、そりゃあウィルも堪えきれずニコって笑うわ、と納得しました。あんな風に言われたら全身で歓喜せざるを得ないだろうな。

あと、最後のミニライブの時の曲(なんだっけ?Girlfriend?)の最後の音をグィンっと2人で上げていて、
新しいパターンキタコレ!とテンションが上がりました。これは島さんペアの時はいつもやってるのかしら?
こういう差分が見れるからシャッフル公演は楽しい。

吉高さんのメインペアの島太星さん。
お芝居を見ることは叶わなかったけど、明るい雰囲気がずっとXから伝わってきて、島吉高ペアの公演は愛情が溢れていた公演だったんだろうなというのが見ていないのに分かって、素敵だなぁと。
あの全力愛の吉高マイクを、同じく全力愛で受け止めてくれるウィルだったのではと推測しました。

公演期間中ずっとYouTubeの「たいせいはボク」で歌を聞いていました。本当に素敵な歌声と表現力すぎる。
歌声の中に切なさを混じらせる力がすごくて、特に切ない女性目線の曲のカバーがかなり自分に響きました。
一番好きなのは「シンデレラボーイ」。初日に萩谷マイクを見た時に私が受けた印象に近くて、勝手にイメージソングとして聴いてました。
(だんだん萩谷マイクの印象も変わって行きましたが。今はもっと愛情深いイメージ。)


島さんウィルを見た方々の感想が、生まれながらのウィル、演じているよりもウィルそのもの、みたいな意見が多くて、
そう思わせる力ってすごいですよね。
島さんのラジオを聴いて、初日公演の際にカセットテープがなかなか入らなくて、マイクから貰ったカセットを破壊しかけてた話にかなり笑いました。
でも、そのアクシデントの中でも、いろんな対応をリアルタイムで考えつつ、ちゃんと入れたい!って粘りに粘って入れたところに、
冷静さと物語としてのこだわりがあって、こういう方めちゃめちゃ好き。

インスタライブの時の強烈な印象ももちろんご本人の一面だとは思うものの、(吉高さんとのインライの時の犬種の名前がカオスで何だかやたら記憶に残ってます。そもそも犬種を答える問題じゃなかったし)
ラジオをお聞きしていると、楽しい方という印象はそのままだけれど、お芝居や歌を技術的にコントロールして、どう見せるかを冷静に考えられているところが見えてきて、すごくプロだなぁと感じました。
ぜひお芝居を生で見てみたい。来年のフランケンシュタインのチケット狙ってみるぞ!

◯キャスティングの妙

こうして見てみると、キャスティングが絶妙だなと思いました。
東宝さんのキャスティング力ってすごいですね。誰が選んだんだろう。

ウィルとマイクは同い年という設定とはいえ、
物語序盤で相手をぐいぐい引っ張っていくマイクと、引っ張っていかれるウィルという関係性を見ると、
単純な考えでは大きくてかっこいいマイクと小さくてかわいいウィル、みたいな発想になってもおかしくないところを、
メインペアで考えると身長は基本的にウィル>マイク、島さん吉高さんペアはマイクの方が高いですがそんなに大きくは違わない印象、
実際の役者さんの年齢もウィル>マイクで、おそらく意図的にこの組み合わせにしていると思うのですが、
このキャスティングが非常に生きている気がしています。
これによって、ウィルとマイクの対等な関係が構築できている気がします。バランスが非常にいい。
高橋萩谷組だと、最初はマイクがぐいぐい引っ張っていってくれていますが、お部屋のシーンでマイクがウィルにもたれかかって甘えているようにも見えて、お互いがお互いを支え合っている感じを強く感じました。

これは他の方々が言っていて気づいたのですが、ドライブインシアターでマイクの友達が近づいてきた時に、マイクがウィルにちょっと屈んでくれない?と言うシーン。
高橋ウィルは基本的に屈まないんですよね。え?っていう怪訝な目でマイクを見つめ返すだけ。
私が見た中で唯一屈んでたのは木原マイクとのシャッフル公演。吉高マイク(2公演目)の時も屈んでなかったはず。
好きな相手にお願いされても、自分が嫌な気持ちになったら突っぱねてみせる、ウィルの芯の強さが見えたシーンで、
他にも「どうしよっかな〜」とか「オッケー、ベイビー」とか、
マイクの方が優位だった関係がいつの間にかウィルが優位に立ってるシーンがあって、そういう時に、こういうキャスティングの良さが滲み出ているなと感じました。

あと、これはやりようによっては、全部がシャッフル公演みたいにもできたと思うんですよね。
メインペアというものは存在させずに、各組み合わせで3公演ずつみんなやる、みたいな。普通のミュージカルのダブルキャスト・トリプルキャストみたいに、偏りを設けないで均等に公演の機会をふっていくということも全然できたと思うのですが、
でも、メインペアを作ったということが、今回のミュージカルでは大正解だったのではないかと。

メインペアがいることで、落ち着いて役に深く深く入り込んでいくことが出来たんじゃないかと感じました。
メインの相手との相性の中でそれぞれのウィルとマイクを作り上げて、
そうして独自の性質を強めたウィル・マイクの状態で、シャッフル公演を迎えたからこそ、
その化学反応も大きく、更にいろんなストーリーが生まれていったのではないかと。
海外の公演でもシャッフル公演ってやっていたのかな?日本独自の試みなのでしょうか。知りたいところです。

メインペアの公演って5公演しかなかったんですね。正直な話、もっともっと見たかった。シャッフル含めても1人9公演。改めて数字で見ると本当に少ない。
思った以上に儚い舞台期間の中で、こんなにインパクトを残して去っていくなんて。
ウィルとマイクという大事な友達2人が遠くにいっちゃったような寂しい気持ちをずっと感じています。

◯ハッピーエンド…?

初日の観劇のカーテンコールで、脚本家のトッド・アーモンドさんがいらしていて(舞台上のどのキャストよりも背が高くてびっくりしました。すらっとしていて素敵な方でした。なんてハッピーなサプライズ!)
「2人がすれ違っているシーン(ウィルがマイクに別れを告げた後の、マイクが大学で勉強して、ウィルがスーパーで仕事をしているシーン)を見て、
僕はちゃんとこの物語をハッピーエンドにしたんだっけ?って不安になってしまいました。最終的にはもちろん大丈夫だったけど」的なことをおっしゃっていて、

え、このお話、ハッピーエンドだったの?! と衝撃を受けました。
バッドエンドじゃないけれど、純粋なハッピーエンドともちょっと違うんじゃ、と初見の私は思ってました。

そもそも、最後の再会からのラストのシーンがちょっと急な感じがして、え、もう終わり!?という印象がありました。

例えばですが、
ウィルがKマートのラジオ(ここちょっと曖昧)でGirlfriend? I Wanted To Tell You?が流れてるのを聴いて、はっ!俺何やってんだ!って思って、
街を飛び出してバスに乗ってコンサート会場に辿り着く、
マイクも勉強に疲れて街を歩いてたらふとライブのポスターを見つけて、夏の日のことを思い出して、
チケットを買って1人でライブ会場に赴く、(ここは100%私の想像ですが)

どこか相手のことを思い返しながら、おんなじ音楽を聴きに来て、また偶然にも巡り逢う。
(要はこれってマシュー・スウィートさんのライブのリンカーン公演に2人が来てたってことですよね?)

っていうシーンが20分くらいの尺で必要だった気もするけど!
ちょっと一足飛び感がすごかったけど!でもまあ想像で補うからOK!

多分、キャストのお芝居の作り方的にもっとスムーズにハッピーエンドにもっていく様なペアもいたと思うんです。
私は残念ながら見れていないですが、島さん・吉高さんや木原さん・井澤さんはもっと明るい雰囲気だったのかな?

でも、私はこの高橋健介さんと萩谷慧悟さんの初日公演に出会ってしまって、それが深く刺さってしまったので、
これが私のこの物語の終わり方として完璧でした。

だってそもそも別れた時から数ヶ月しか経っていなくて、
マイクはまだ大学生で、親の仕送りで生活しているだろうし、医学生ということで独り立ちするにはまだまだ時間がかかりそう。
ウィルはKマートで働き始めたとはいえ、給料は高くないだろうし、バスで街を飛び出してきてリンカーンに来たってことは、また職探しから始めるってことですよね?
不安定な生活には変わりない。

まだ足元がぐらぐらの10代の2人で、正直このままハッピーエンドでいけるのかというと、激しく不安定で歪な2人。
2人の人生はどうしたって続いていくので、10代の甘い思い出で済まされないような現実にぶつかっていくかもしれない。

でも、少なくともウィルは変わりました。新聞の求人欄に丸をつけることを覚えて、働いて、自分の足でリンカーンまで来ることができた。
実際、このシーンで現れたウィルは、背筋が伸びていて、前とは何か違うぞ!?と思わされた。

そうやって、音楽を通して恋人になった2人が、音楽を通してもう一回出逢い、また一緒に歩き出す。
最後の紙吹雪はライスシャワーってことなのかな?つまり世間的には当時は認められていないけれど、2人だけの擬似的な結婚式のような光景を経て、覚悟と決意を持って2人でこれから歩んでいく、
という意思の表明の様なこの2人のラストシーンを愛しています。
純粋なハッピーエンドとは違うけれど、途方も無い戦いへと歩いていく2人にエールを送るような、そんな気持ちを客席全体から感じた気がしました。

他の物語だと、将来的にマイクは世間体のために女性と結婚して、ウィルが悲しんで終わるみたいな展開はありがちですが、
でも、そういう演出はもう古いよ、と言われる未来が来るといいなと思いました。
もう同性愛がスペシャルなことじゃなくなって、ちゃんと幸せなお話でも物語として成立するんだ、と信じられる力がある舞台だったと思います。

◯もう一度見たいけれど。

ここまで書いても、まだまだ言葉は出てきます。
改めて文章を見返してもなっが。すごい。なっがいな自分。でもまだまだ言いたいこと言えてない気がします。
それこそキスシーンとか、電話のシーンとか、大好きなシーンはたくさんあるし、シンプルかつ効果的なセットのこととか、映像のこととか、バンドメンバーさんの素晴らしさとか、
マシュー・スウィートさんの楽曲の素晴らしさとか、日本語の歌詞の絶妙な翻訳とか、シアタークリエという劇場の良さとか、
何よりも演出家の小山ゆうなさんの巧みな演出とか、
もう語りたいことだらけなのに、書ききれんのじゃぁ!
何にせよ小山さんの演出舞台は今後も見に行かせて頂こうと思いました。
とても丁寧な作品づくりをされる印象が、公演や事前のインタビューからも感じられて、ファンになりました。

まだまだ1シーン1シーンをオーディオコメンタリーできるぐらいに感想がありますが、一度私の中のGIRLFRIENDをここで止めておこうと思います。
いや、加筆する可能性は十分あるけれど。
そろそろ自分も次に進まないと苦しい。
でも、ずっと人生の宝物として心に置いておく素敵な物語だという事実は揺らがないです。

初日が明けてからじわじわと評判が評判を呼び、それを受けて見にきた人達の中でも更に評判が高まり、最終的には大好評で終わった作品だと思います。私の個人的な体感ですが、たぶん間違いではないはず…。
だから、おそらく再演みたいな話も夢では無いと思うのですが、キャストはもしかすると変わってしまうのかも。
若手の俳優さんの登竜門みたいなかたちになっていくのかも。

でも、この初演のキャストの皆さんのお芝居が私たちの記憶だけにとどまるのは心底もったいないと感じてしまうのも事実で。
だからといって再演をまたこのキャスト・ペアで見たいのかと言われると、どうなんだろう。
初演のこの思い出をずっと心の中で大事にしておきたい気持ちもすごくあって、もし再演して同じキャストでやったとしても、
この初演の熱が出るのかな?いや、それは確実に出ますね。絶対初演を超えてくるとも思う。みくびってました。すみません。
そこは皆さんプロの役者ですわ。

今回は収録も配信も無いということで、主に見ている舞台が2.5次元舞台の私にとっては、かなり珍しい状態で、何でもかんでも円盤化してくれる状況に甘えすぎていたな、と反省しました。
どうしようもなく好きなのに、もう見れないという事実を受け入れなければいけないことがこんなにつらいってことを久しく忘れていました。
このつらさをどうにか落ち着かせるのは私の責任ですね。仕方がない。

でも、どうにかして、何かの形でこの6人の物語が残って欲しい。
もちろん円盤化や配信は望まれますが、一番思うのは、声が残って欲しいなと。それぞれのペアでの楽曲の歌唱音源が欲しい。やはり人の声のバランスが奇跡だと思うので。
そして、日本語の脚本が欲しいです。英語とは違うニュアンスが滲んでいる台詞回しは、日本公演のオリジナルのものだからこそ、
セリフを辿っていくだけでも公演の様子が鮮明に思い出せると思うので。
願うのは自由ですもんね。声に出して言っていこうと思います。

幸いにもマシュー・スウィートさんの楽曲はいつもそこに存在してくれているので、どうしてもネブラスカが恋しくなった時はプレイリストを聴いて、音楽に寄り添ってもらって慰められています。

改めて、BOYFRIENDのお話だけれど、
2人の人生を作り上げるのに不可欠だった出会いのきっかけのアルバムである”GIRLFRIEND”をタイトルに持ってくるという、
(そして、そこに当時の同性愛に対する生きづらさ等も含めているのだと思わせる)絶妙なバランスの名付けも含めて、すばらしいミュージカルだったと思います。
本当に本当にありがとうございました!!!

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