吾輩はあらすじマニアである
Twitterランドで読書感想文がアリかなしかなどという話が盛り上がっていたが、私は小賢しいガキだったので、本は好きなものを読みつつも自分の感想はおいておき、感想文は「こういう感想が好きなんじゃろ?」という教師ウケしそうな内容を提出してそしらぬ顔をしていたのだった。
誠に小賢しいガキであるが、私のありのままの感想を知ってほしいと思うほど教師を信頼していなかったのである。誠に小賢しいガキだったので仕方がない。
むしろ限界集落的な田舎では自由研究の方が10000000倍苦行であった。
何せ学校で調べ物に必要な本を借りに行こうとしても、歩道もないトラックがギュンギュン走る道路を30分以上チャリをこがねばたどりつかないのである。親が車を出してくれるとは限らない。友達と一緒に自由研究なんて、もっとひどい。親の送り迎えが必須=親同士の関係に忖度しなければならないので、行くたびにジュースやお菓子などの手土産を必要とする。どっちにしろ、家業の農家を手伝わないとならないので、自由時間には制限がある。
というわけで、課題図書しばりも特にない学校で、読書を苦にせず過ごしていた私が、読書感想文をウルトライージーモードだと思っていたのもしかたがないのである。自由研究とは前提が違いすぎたのだ。
まぁ、そういうわけで読書感想文を書くことに困らなかった私なのであるが、私は誠に小賢しいガキだったので、中には「あんまり真剣に読んでいない本」などもあった。
というのも、我が家は牛飼い農家であったから、365日年中無休、宿題があろうが何だろうが容赦なく家業の手伝いをさせられていたからである。農家の子供は家業の奴隷である。
つまり、本を読む暇があるとは限らない!!!(血涙)
その結果、私には妙な読書習慣が備わった。
とりあえず最初にあらすじだけ把握するのである。
物語の内容がわかる程度に飛ばし読みをして、あらすじを把握してから読むという習慣である。
図書室の本には貸与期限があるが、万が一期限までに読むのが間に合わなかったとしても、あらすじがわかっていればまぁまぁ諦めがつく。
そして、あらすじの時点であんまり好みではなかった本は後回しにできる。
それゆえ、なんでもかんでも、とりあえずあらすじを確認する。ネタバレは何も気にしない。ミステリですら、犯人を知ってから読み始める始末である。
あらすじを調べる癖は、読書だけではなかった。我が家は限界集落の農家であったゆえに、映画はほとんど観られなかった。映画館まで車で1時間ちょっと。もちろん、そこから2時間映画を観て、さらに1時間車で帰るなんてことを親が許してくれるわけがない。ホルスタイン様は、こちらの都合に合わせてメシや搾乳の時間を待ってくれないからである。
金曜ロードショーがやっていたら観られるかもね、くらいだった。チャンネル権はもちろんない。2時間ちかくテレビを占拠できるということがまずあり得ないので、ビデオに録画しても意味がない。
レンタルビデオ屋も、車で30分先である。もうこの時点で、映画という文化はテレビのロードショー番組以外にないのである。それも必ず観られるわけではない。
あと、アニメも私が子供の頃はTV東京系が放送範囲外だったのであんまり観てない。(あと、夕方のアニメ時間帯は大体農業手伝いの時間)
というわけで、私はどうしたのかというと、図書館にある映画評論本、アニメ雑誌のあらすじ紹介などで、ひたすらあらすじだけを読み込んで行ったのである。
ひたすら、ひたすら、あらすじばかりを読んで生きてきた。
これは生存戦略である。
たまに読書家らしき人が「本好きなら子供の頃にこのシリーズくらい読破していて当たり前でしょw」みたいなことを言っているのを見ると、「もののけ姫」のモロ様よろしく「黙れ!貴様に本を読む時間すらなかった農民の気持ちがわかるのか!」と牙を剥きたくなる所存でございます。
借り物本だから二宮金次郎よろしく、仕事しながら読むなんてことできないんですよ!!!ああん!!??(※最寄りの本屋も車で30分)
そういうわけで、私は未だになんでもかんでもあらすじを調べてしまうくせがある。
本でも漫画でも映画でも演劇でも、少しでも気になったらあらすじを調べてしまう。
ので、「実は読んだことも観たこともないけど、内容は大体知っている作品」がめちゃくちゃ多い。めちゃくちゃに多い……。
この前、友達と「ショーシャンクの空に」を観に行った。復刻上映である。
ちょっと時間を勘違いして、最初の5分くらいを見逃してしまったのだが…
友達「ごめんね、大丈夫だった」
私「大丈夫、あらすじと設定は知ってる!」
あらすじと設定は知ってた!!!!!
ディズニーアニメとか、実はアナ雪の最初のだけしかみてないけど、全部大体あらすじ知ってる。
クッソ古い映画やアニメも、大体あらすじは全部知ってる。
あらすじは……知ってる。
あらすじ調べるのが!趣味だから!!
農家に生まれたゆえの悲しき習性だったのですが、今ではすっかり単なる趣味です。でもわりとこれ、仕事には役立ってます。作品名だされて「あ、あの作者のこういう話ですね」ってするする出てくるので。
あと、あらすじを延々と読んでいると自然と起承転結のつけかたとかを学べるので、物書き的にもまぁまぁ得をしているかな、とも思います。
でもまぁ、あくまであらすじしか知らないので、改めて見ると「なんだこれ」ってなることもあるけどね。それはそれで楽しみです。
あと、あらすじを把握するクセがついているとネタバレに対して、広い心で受け入れられる。むしろネタバレを見てから読んだりした本が結構ある。
私はまどか☆マギカを、ほむほむのターンから見始めた女です。(マミられ回ですらねえ!)
ところで、最近色々あって、作家志望の方の作品を一応プロ(シナリオライターやってるからね)としてアドバイスする機会があったりしたわけなんですけど。
あのね、あらすじマニアの吾輩だからちょっとエラそうに言うけど許してほしい。
あらすじにまとめた時点で話が破たんしているのは!
「あらすじにまとめるのが苦手で~(汗)」とか言ってる場合ではなく!
貴方自身が自分の作品の内容を把握しきれていないからです!!
ちゃんと起承転結がしっかりしている作品は、あらすじだけでもちゃんと物語が成立していることがわかるので、とりあえずそこから始めて欲しい!
あらすじで面白い話は、ネタバレされててもちゃんと面白いから!!
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