できることとやりたいことは違う
私は社会人になってからのほとんどを、ライターをやりながら生きてきている。
もちろん、それだけで食べていくのは簡単ではないので、ほぼ兼業ライターである。兼業はDTP屋だったり、書店員だったり、外注ライターと内勤ライターを兼業していたりするが、とにかくフリーライターとして一本で食べていけたことはない。
そういう「本業が別にあるライター」なので、よくよく誤解されることが多い。「ライターをやりたくて、趣味の延長みたいに書く仕事をやっている」という誤解である。
私は書くことは昔から得意だったし、できるからやっている。できない仕事はそもそも私のところにこない。趣味ではないので、できないことはやらない。
私は小説を書きたいし、自分で作った企画でコンテンツを作りたい。
あくまで自分が作った物語をアレコレしたいわけである。これがやりたいこと。
基本的にライターの仕事というのは、企画者やディレクター、プランナーが別にいて、オーダーにそって書く。ので、私の「やりたいこと」ではない。「できること」だから仕事をする。
もちろん、書く仕事そのものが楽しい、やりたいという人もたくさんいると思うけれど、私の中で「やりたいこと」と「できるからやっている仕事」は別物である。
私は小説やコンテンツを作る仕事がしたい。ので、そのために投稿をしたり、自費出版したりしている。引き受けるライターの仕事とは全く別。
仕事をして稼がないといけないし、仕事として不満があるというわけではないけど、ライターの仕事を「利益度外視してでも、喜んでやる仕事」かというとそんなことはなく、まずは単価の話をしようか、ということになる。
ここを本当によく誤解されて、「書く仕事できて嬉しいでしょ?」「やりがいがあっていいね」みたいなことを言われると「嬉しさもやりがいも単価次第かな」ということになる。
自分が書きたくて小説やコンテンツ原作やるのと、依頼を受けてやるライター仕事は別!というか、そんなやりがい搾取みたいなことを言っちゃダメ!
親などは本当に世代もあって何もわかっておらんので、私のことを「好きな仕事をして都会で遊んでいるくせに、給料低いと文句を言っている」みたいに言うこともあるのですが、いやいやいや。そんな簡単なお話ではないし、両親よ、あなたの娘は書くこと以外には恐ろしく器用貧乏なことしかできないんだ、察してくれ。
そもそも、私がライターで食いつないできたのには『直撃氷河期世代で、新卒の頃にはろくな求人がなく、アルバイトをしながらフリーで仕事を持っていた方がよほど生活ができた』という社会情勢的な問題なのだった。
私と同世代の人間には、この『やむを得ずフリーランス』がびっくりするほど多い。
私などはまだ生き残れただけマシな方。だから私が自分の生き方について語ると、生存バイアスかかりまくりになってしまう。だから私はフリーランスで生きていけるとは絶対に言いません。まともな職場に当たったらラッキー、そこにできるだけ長くしがみつこう、くらいしか思わない。
まぁ、そういうわけで私にとってライターの仕事とは生きるための手段だったので、「やりがい」のために、人生を充実させるためにやっているのとは違うんですよ。できるからやる。これができるからお金になる仕事をさせてくれ、というビジネスの話なの。
これが小説なら、条件によっては利益を度外視することもあるけれど、それも生活の基盤があってこそのものですよ。
これ、本当に小説に限らず漫画やイラストでもそうだと思うんですけれども
「やりたいことを仕事にできてるんだから、お金にならなくてもいいよね」
という思想は大変に危険、すぐにやりがい搾取につながっちゃう。
「やりたいことを仕事にできているので、つらくても乗り越えられるよね」
これも大変に危険。社畜の思想ですよ。
仕事をしたくないとまでは言わないので、できることとバランスが取れた就業時間とお金を重視して欲しい。本当に大事だよ、ここ。
私は前会社の頃、ヤバいと思った瞬間に猛烈に転職活動しちゃったけど、その後にしっかりと身体を壊したので……。職場なんてころころ変えずに済むなら、それにこしたことはないので。
ヤバいと思ったら転職すればいいけど、だからといって職場を変えればいいからちょっと変なところにあたってもいいやとか、好きな仕事だから大変でもいいやとか、そんな問題でもないと思うんだな。
私は好きな仕事っていうと、本を作るかコンテンツを売るか、みたいな極端に狭いジャンルになってしまうので(そして大学に行かせてもらえなかったし、就職氷河期直撃でキャリア形成に失敗もしてるので)そんなに簡単に好きなことで生活はできない。
ので、「できること」で仕事して生きています。
それを簡単に「好きだからやれる」でくくってしまうと、「仕事」として考えたときに割り切りできなくなっちゃうのでダメ。
好きなことに近いほど割り切りが難しくなるので、自分の中で絶対に「仕事」にできないことはあるっていうのも、頭の中に入れておきたいね。
まぁ、それはそれとして小説の仕事はほしいよ。
やりたいことで生活できるならそれが一番いいよ(台無しの発言)
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