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【映画】「マーベルズ」レビュー

▼あらすじ

マーベル・コミックのヒーローたちが活躍する作品群「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の一作で、アベンジャーズ最強ともいわれる女性ヒーロー、キャプテン・マーベルを主役に描いた映画「キャプテン・マーベル」に続くシリーズ第2弾。キャプテン・マーベルが、アベンジャーズオタクな高校生ヒーローのミズ・マーベルと、宇宙ステーション「S.A.B.E.R.(セイバー)」に所属する敏腕エージェントのモニカ・ランボーとチームを結成する。

規格外のパワーと不屈の心を兼ね備え、ヒーロー不在の惑星を守るため幅広く宇宙で活動していたキャプテン・マーベル。そんな彼女のある過去を憎み、復讐を企てる謎の敵が出現する。時を同じくして、キャプテン・マーベルと、まだ若い新世代ヒーローのミズ・マーベル、強大なパワーを覚醒させたばかりのモニカ・ランボーの3人が、それぞれのパワーを発動するとお互いが入れ替わってしまうという謎の現象が起こる。原因不明のこの現象に困惑するなか、地球には未曽有の危機が迫り、キャプテン・マーベルはミズ・マーベル、モニカ・ランボーと足並みのそろわないチームを結成することになるが…。

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以下、感想には多少のネタバレを含みます。


▼感想

全体的にはテンポも良く、カマラがいる事でポップさも加わってポップコーンムービーとしては楽しめたし、全体的なトーンが暗く上映時間が長い作品が多くなってたマルチバースサーガの中ではとても良い軽さだった様に思う。これ位の感じで良いんだよと。
中盤のミュージカル調になる星のくだりはディズニーをいじってるのかなとも思った。
書類上とは言え、そこの王女で、その中に入ればそこのルールに従うというのがディズニー傘下に入ったマーベルというブランド自身の事だとしたら皮肉が効いてる。

しかしながらどうしても大きく気になる点があった。
今作の中で描かれた「多くの命を救う為に犠牲を払う」場面というのはトロッコ理論の様であり、言わば答えのない様なものだと思うのだが、躊躇いなく犠牲を払い、その事を大きく悔いたりする事などは無かったのが引っ掛かった。特にアラドナに関してはその後に気にする様な描写も無かった為、一応書類上でもそこの王女のはずなのにそこの安否とか全く気にしないのはヒーローとしてどうなんというレベル。

もちろん答えがないからこそ、多少の犠牲をはらんでしまうというその考え自体は理解できなくもない。キャプテンアメリカもそうだったし、いかにもアメリカ軍人的とも言える。しかし、それを多くの子供達も観るであろうヒーロー映画で、本流の考えかの様に通してしまうのは非常に危険だと思った。
世界中で戦争が起きている今の国際事情だからこそ、「何の罪のない人達の命」をどう扱うかは非常にデリケートな問題だと思う。
GOG3でもそういうシーンはあったが、それがそんなに目立たず他のクウォリティが素晴らしかったので気にならなかったが、今作はそれが前傾化していた為、とても引っ掛かりを感じた。

あまりにキャプテンマーベルがチート級な為、「そんな彼女でも難しい事がある」というのを表現する事自体はとても良いと思ったのだが、そういう彼女の人間くささの表現のスイッチとしてこの様な表現を使ってしまったのはいかがなものかと思う。
その考え行き過ぎるとサノスと一緒ですよと。
ヴィランの命でさえも自分の命を賭けてでも助ける不殺のスパイダーマンの話に感動した後では余計に気になった。

そういったキャプテンマーベルが苦悩する姿を見せるのは良かったが、逆に無責任さを表現する形にもなってしまっていた。最後もあまりにあっけなく太陽を復活させたので、そんな簡単に出来るのなら何故もっと早くしないの、と。
そのせいで今回のヴィランが生まれてしまったし、何ならあのヴィランめっちゃ可哀想で、呆気なく死んでしまったので救いがない。


あと別の点ではパク・ソジュン演じるヤン王子の登場の少なさが気になった。
彼が出演する事はかなり前から話題になってたし、メインビジュアルのポスターにも登場してたので、それ目的で観にきた人もいたはず。それであのボリュームで安否も分からない尻すぼみな登場の仕方はダメだと思う。カマラの母ちゃんのが登場時間多いやん、と。
そういった意味ではマーベル、ディズニーに関わらずまだまだハリウッドはアジア人の扱いが雑だなぁと感じられるポイントでもあった。

3人が入れ替わるギミックもそれ自体はとても面白いが、それが何かを解決する事にはなって無かった。

ニック・フィーリーのキャラクターも個人的にはこれ位の要素もたまには良いかと思うが、「シークレット・インベージョン」のテイストと余りにギャップがありすぎて、時系列的にどっちが先かは分からないにせよどちらにしても今作の監督絶対ドラマ観てないだろというレベルでヤバい。(まぁあのドラマは何なら正史から消して欲しい位のヤバさだがそれはまた別の話)。
恐らく今まではそういった作品ごとに異なる個性を持つ監督を起用する事で生まれるギャップをケビン・ファイギがものすごく良いバランスで統率を取ってたのかなと思ってたが、今作を観ると、フェーズ4以降崩れてしまったバランスはまだまだ取れておらず、マーベル内の混乱が見える形となった。

今作は全体的にはキャラクターの個性も際立って魅力的だったし、そう言った意味ではキャラクターの個性全殺しだったアントマン3よりかなり良く、ついに集合作品を思わせる描写もあり、未来に期待が持てる形ではあった。遅いけど。
そういった点で「MCU復活だ!」と盛り上がってる人も多いが、まだまだ今作を観るだけでは早いのでは思った。

しかしながらMCUが「暗い、長い、面白くない」というダメな時のDCみたいになっていってると危惧しているので、MCUが何とか軌道修正を掛けていってるのだなという一片が見れただけでも希望の持てる作品ではあった。
あの最高のクオリティのインフィニティサーガを作った会社なのだから、今後大復活があると信じてファンとして楽しみに待ちたいと思う。

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