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さわいさん

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さわいさんたちのこと。 超ぷらいべーと。
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記事一覧

10年前の手紙

また1年巡って、今年で10年目。

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9年目。

11月11日は命日で。

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百合と言えば百合①

大学時代の話。
亡くなったあの子の話。

僕は医学部でキャンパスが本学と別だった。
ただ、″一般教養科目″という全学部共通の選択科目があって、それは本学で開講されていた。医学部と本学はまあまあ離れてて、行き来するのも億劫なので、1回生の時間の余裕のあるうちにその選択科目をかためて詰め込んでおいた。

1回生の前期、金曜日は丸1日本学オンリー。
皆は友達どうしで科目を選んでいたみたいだけど、マイペー

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百合と言えば百合②

そんなこんなで、あの子との関係が始まった。

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百合と言えば百合③

僕が目の前にしているのは、僕が見る限りでは、
男の子だった。
服装も体つきも髪型も。
僕と背格好が同じくらいの、少し小柄な男の子。

そんなあの子が言った。
女の子です、と。

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百合と言えば百合④

僕らがキスをしたことは1度もなかった。

あの子は仮にも、見た目の上では男の子で、男の子の身体のつくりをしていた。
そして僕は基本的には男性が嫌いだ。
当時は父親からの性的虐待のトラウマがまだ強く、髪の毛を触られるだけでも、不意打ちだと咄嗟に身構えて、両手でガードしてしまうほどだった。

それ以上に、あの子自身が駄目だった。
僕があの子を駄目だったんじゃない。
あの子が僕を駄目だった。

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百合と言えば百合⑤

「星、見に行こうよ」

自分が生きている中で、そんなロマンチックな誘いを言葉にされる日が来るなんて、思いもしなかった。きっとこれから先も、そんなこと言われる日は二度と来ないだろう、最初で最後の、空前絶後の、それはそれは、特別な約束だった。

3回生の夏。
前期のテストが全て終わり、夏休みに入る頃。
「田舎がほしい!!」
君が唐突に言い出した。
「ごめん、うちも提供できる田舎がない」
僕の返しに吹き

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千春のこと

千春のこと

今年はお墓に会いに行けた。
今住んでいるところから若干遠くて、特に車椅子になってからは行きにくくなった。
できれば当日に行きたかったけど、予定が詰まっててどうにも行けそうにない。仕方なく前倒し。
その日はまさかのどしゃ降りで、次の日、案の定しっかり風邪を引いた。
もし貴女が生きていたなら、すぐさま飛んできて林檎のシナモン煮を作ってくれたかな。そんなことを思いながら、独りで林檎をそのまま齧る。固い。

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かたわれHB

かたわれHB

10/17
あの子は今年で29になった。
20代最後の年だ。

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目覚ましの声

声がして、目が覚めた。

スマホを開くと、目覚ましの時刻を過ぎている。
そうだ、どうせ痙縮に何度も起こされるから、
昨日は目覚ましをセットしていなかったのだ。

身体を起こし、部屋の中をぐるりと見回した。

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