百合と言えば百合①

大学時代の話。
亡くなったあの子の話。

僕は医学部でキャンパスが本学と別だった。
ただ、″一般教養科目″という全学部共通の選択科目があって、それは本学で開講されていた。医学部と本学はまあまあ離れてて、行き来するのも億劫なので、1回生の時間の余裕のあるうちにその選択科目をかためて詰め込んでおいた。

1回生の前期、金曜日は丸1日本学オンリー。
皆は友達どうしで科目を選んでいたみたいだけど、マイペースかつ興味のないものにはとことん興味のない僕は、友達と講義が被らず、1日ずっと学部の子とは別行動になってしまった。

僕は目が悪いから、席指定のない講義はいつも教室の前の方を選んで座っていた。
とある講義の初日。
人気のある科目だったらしく、大教室でも多学部の学生で溢れかえっており、後ろ半分の席はほとんど埋まっていた。
なるほど、程よく消極的でよろしい。
僕は前から2番目に座り、時間になるのをぼんやり待っていた。

そして、声をかけられた。

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