百合と言えば百合⑤

「星、見に行こうよ」

自分が生きている中で、そんなロマンチックな誘いを言葉にされる日が来るなんて、思いもしなかった。きっとこれから先も、そんなこと言われる日は二度と来ないだろう、最初で最後の、空前絶後の、それはそれは、特別な約束だった。

3回生の夏。
前期のテストが全て終わり、夏休みに入る頃。
「田舎がほしい!!」
君が唐突に言い出した。
「ごめん、うちも提供できる田舎がない」
僕の返しに吹き出した。

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