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春風

こんにちは。
やわひゃーです。

今回はインスタント小説第四弾です。
前々回「主人公」、前回「ヒーロー」の完結編です。
ご覧になられてない方はこちらから読まれるとより楽しんで頂けると思います。短いのですぐに読んで頂けるかと。


それではどうぞ!!



春風

早朝の渇いた空気が体を襲う。
コートを置いてくるにはまだ早いようだ。
見上げると吸い込まれそうなほど青い空が広がっている。
昇る陽に心地よさを感じながら導かれるように、歩く。


「ってことは?」

「辞めるかも」

「それダメじゃん」

「でもなぁ」

「知ってんのはお前だけなんだろ?」

「俺はなんにも出来ないよ」

「お前が動かなきゃ変わらないって」

語気が強くなる。

「まぁやってみるわ。ただ一言だけね、それで許してくれ!」


川を渡る。
近くの店に寄り、用事を済ませる。
良い匂いが心を落ち着かせる。


「みんなに説明したよ」

で、どうなった?

「部長に直訴することになった」

お、かっこいいやん

「茶化すのはやめてくれよ」

でも救えたんだろ?あの人

「うん。辞めずに済んだし、所長が変わったおかげで娘と過ごす時間増えたよ」

良いことづくめじゃん
みんなのヒーローになってるよ

「やめてくれよ、俺はそういうの似合わないから」

おいおい、この期に及んで怒らせないでくれよ

「ごめんごめん、お前には敵わないと思ってさ」


膝を曲げる。
ブラックコーヒーを渡す。


「なんだよ、3本目じゃん。
被っちゃったな」

「こういうところも俺なんだよ、すまんな」


思ってもない謝罪を口にする。
毎度思っているがやはり目を引く、場違いなほどの華やかさがこいつの人生を語っている。


「やっぱりお前は主人公だよ」

いつまでそんなこと言ってんだよ
お前も主人公なんだよ

「だって最後まで…」

言いかけた言葉を飲む。

「誰かの主人公になれれば幸せだよな」

俺はお前に背中押されたからな
今度は俺の番
間に合って良かった

「報告遅くなってごめんな」
「なかなか向き合えなくて」


持っていた彗星蘭を置く。


「また報告しに来るよ」


立ち上がり伸びをする。
陽の香りをいっぱいに溜め込む。


背中から暖かい風が吹いた。

(736字)



いかがだったでしょうか。

ちなみに僕も主人公やヒーローに憧れてる派でした。笑

インスタント小説と言ってますが3遍に分けて書いたので実質詐欺ですね。笑

少しでも楽しんで頂けたら表現者の端くれとして本望です。

また書き次第上げていきますのでそちらも是非ご覧ください。


お読みいただきありがとうございました!

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