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わだち

慣れない雪は初めて話す異国の旅人のよう。

戸惑ってしまったけれど、溶けてしまえばやはり同じ水なのだと安堵する。

気が付けば自分が何歳なのかも忘れてしまった。

目線が高くなる楽しさに手足を動かしていた。

見える景色が変わってゆく。

その変化を意識するのは数年の時を要する。

あれは何年前のことだっただろうか。

自分の年齢を覚えていないのだから当然わからない。

足元に白と黒のボールが転がってくる。

駆けてくる子どもにまた安堵した。

やはり変わらない。

足元に視線を落とす。

そこで気がついた。

こんなに時が経っていたのか。

鈴の音がシャカシャカと鳴る。

雀が飛び立つ。

日陰の猫が気だるげに目を開ける。

朱は剥がれているが変わらない。

まだもう少し変わらないでいさせておくれ。


お読みいただきありがとうございました!

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