なりたいものは何ですか?

"Hvad vil du være, når du bliver stor?" af Christina Busk Marner, Marie J. Engelsvold. Forlaget Fahrenheit, 2017  「おおきくなったらなにになりたい?」クリスティーナ・ブスク・マーナ―作、マリー・J・エンゲルヴォル 絵 デンマーク 絵本

写真やイラスト、子どもの描いた絵などをふんだんに使ったコラージュが楽しい絵本。テーマはタイトルの通り、主人公レオが、周りの大人との会話の中で大きくなったら何になりたいかを探っていくというもの。レオはパパやママ、おばあちゃんやお友達との会話の中で、毎回新しい職業を思いつく。時にはインディアンなど、職業ではないものも思いつくのだけれど、レオは毎回その話をした日の夜、様々な思いを巡らせなかなか寝付けない。そして、ある日、車の中から眺めた月に、レオは心の中で話しかける。

「お月さま、ぼくは、大きくなったら何になったら良いと思う?」

お月さまはせきばらいをし、「わたしに話しかけているのかい?」とこたえました。レオはうれしくなりました。まるで楽しい夢を見ているようです。「うん。ぼくは何になったら良いと思う?」

お月さまはこたえました。

「レオ、世界中で、君が大きくなったら何になるかは、君にしかわからないんだ。もし何になりたいかわからないなら、色んなことをためしてごらん。でもすぐにあきらめてはいけないよ。色んなことをためすんだ。そうしたら、レオ、君が君らしくいられる時がきっとある。それは、君が一番幸せなときだ。」

レオはベッドに入り、月が言ったことを考えました。そしてとつぜんあることに気がついたのです。レオはやっと、自分が大きくなったら何になりたいか、わかったのです。レオは目を閉じて、月にささやきました。

「お月さま、ぼくはぼく、レオになりたい。大きくなっても、レオになりたい。」


私がデンマークで子育てをしていて感じることのひとつはまさにこれだなと思う。幼い時から、自分は何が好きで、何が得意で、何をしたいか。何をしたくないか。それが大したことでなくとも、自分がどう感じていて、どうしたいのかを子どもたちは常に問われている。自分自身でいること、自分の気持ちを自分でわかることのトレーニングを日常的に受けているなと感じる。この作品では、レオは様々な職業につくことを想像して頭を悩ませるけれど(そして大人はどうして子どもに将来なりたい職業を聞きたがるのでしょうか?)、その前に、自分自身でいること、自分が幸せだと感じることの大切さを忘れないでと作者は子どもたちに伝えている。そのメッセージには、自分らしくいることを忘れがちな大人もドキリとさせられる。

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