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「背中かじって」
夫はよく背中がかゆくなる人でしょっちゅう私に「背中かじって」と言ってくる。今や私は何のためらいもなく夫の背中にがぶりと歯を立てがじがじ噛む。なんてわけはなくて。
「かじる」とは千葉県で使われる方言だ。(調べるとほかの地方でも使われているらしい)ただ、埼玉県生まれ埼玉県育ちの私は、当初この言葉に戸惑った。千葉でのこの言葉の使われ方を知ったのは塾講師をしていた時だ。
生徒A「蚊に刺された所かじっちゃってすごい赤くなっちゃった、見て。まだめっちゃかゆいんだけど」
(かじ・・る・・?かゆいからってかじるか・・?)
生徒B「あー、かゆそう!あ、私いま爪ちょー伸びてるからかじってあげようか?」
(ん?爪でかじる?)
私「あのさぁ、かじるってもしかして掻くって意味?」
生徒A「えっ、あたりまえじゃん、先生なんで知らないの?」
私「いやだって私千葉出身じゃないからさ」
生徒B「うそー、かじるってみんな言うでしょ、先生埼玉だっけ?言わない?」
私「・・言わない。かじるっていったらさ、ネズミが壁をかじるとかさ」
生徒A「あー、でもその意味でも使うよ」
(まさかのダブルミーニング!)
というわけで、かじるとは
”歯を立てて削り取ったり砕いたりすること”という意味以外に「掻く」という意味があるらしい、in千葉。
ちょ、待てよ。
(とここで千葉県で小中高に通われていたキム〇クさま登場)
埼玉と千葉ってたいして離れてないですよね!?首都圏ですよね、どちらも。
「翔んで埼玉」ではライバル視しあうくらい近いですよね?(遠い存在ではないはず)
なんで通じないの?
そりゃああれですね、司馬遼太郎の小説、「燃えよ剣」で倒幕の志を持って集まった各地の侍たちがそれぞれの出生地によっては「筆談してた」っていうくだり、納得だわ。ええと、薩摩藩出身と南部藩出身の武士だっけ、とにかく、うん。
言葉の壁は海を超えなくてもあった。(薩摩藩から本州に来たら海超えてるじゃん)
でもやっぱり方言を理解するにはその土地に住んでどう使われているのかを知るのが一番だよね、と思うわけで。だって今の私埼玉在住より千葉在住期間が長くなったせいか、千葉のみなさんのいう「かじる」に慣れたもの。
とはいえ。埼玉出身の私はどこを蚊に刺されようと絶対に「かじる」ことはしない。私はかゆいところはあくまで「掻く」人だ。掻くことをかじるなんて違和感があってキモチワルくてとてもじゃないけど言えない。
結論:千葉県に紛れ込んだ埼玉県民をあぶりだすには「蚊に刺されたらどうするか」を訊くとよい。
もとい、近隣県でも通じない言葉があるのだから「言葉」による相互理解って難しい。(日本語でも外国語でも)
そして、言葉はアイデンティティと直結している分、やっかいだ。
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