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人としての尊厳と希望 #読書記録4-3

絶望を希望に変える経済学(Good Economics for Hard Times), アビジット・V・バナジー , エステル・デュフロ, 日本経済新聞出版, 2020

 1) 人の尊厳を踏みにじってはならないこと

 2) 人間が生きる上で希望が非常に大切であること

 これが私が本書から学んだ最も大切にしたいことである。そして、これは本当にみんなが心に刻んでおかなければならないと思った。


1) 人の尊厳を踏みにじってはならない

 Chapter9「救済と尊厳」において、著者は、社会政策が目指すべき目標を次のように述べている。

「今日のような不安と不安定の時代における社会政策は、人々の生活を脅かす要因をできるだけ緩和しつつ、生活困難に陥った人々の尊厳を守ることを目標としなければならない。」
 「助けてもらう人の尊厳を踏みにじってはならない」
「彼らは問題を抱えてはいるが、けっして彼ら自身が問題なのではない」

 著者は、貧窮者、失業者という括りで観るのをやめ、一人の人間として見るべきであると述べている。

 「人の尊厳を守る」とは、誰も人の尊厳を侵害してはならないともいえる。人が生まれながらにしてもつ尊厳は、いつも尊重されなければならないのである。私はこれは、人と関わる上で最も大切なことだと考える。その人がどのような状況にあるかのかと、人の尊厳を尊重することは全くの別問題なのである。

 ただ私は、人と接するとき、何の偏見も持たずに接することは極めて難しいと考えている。たとえ何も知らない人だとしても、会った瞬間に、その人の服装や表情、姿勢に基づき、その人の印象を形成するものである。

 私が重要だと考えるのは、「その人のほんの一部分を見て、勝手な印象を作り上げている」ということを、心の隅に置いておくことである。自分の印象が間違っていることもある、自分は常に偏見をもってその人のことを判断しているのだ、という意識である。この少しの配慮を日々積み重ねることで、自分の思考の柔軟性が高められるのだと思う。


2) 人間が生きる上で希望が非常に大切であること

「発展途上国を旅して何度となく気づかされるのは、希望は人間を前へ進ませる燃料だということだ。
 抱えている問題でその人を定義することは、外的な条件をその人の本質とみなすことにほかならない。
 そのように扱われた人は希望を失い、社会に裏切られ疎外されたという感情を強く持つようになる。」

  

 本書の結論では、私たちひとりひとりが行動することを呼び掛けている。

「行動の呼びかけは、経済学者だけがすべきものではない。
 人間らしく生きられるよりよい世界を願う私たち誰もが声を上げなければならない。
 経済学は経済学者に任せておくには重要すぎるのである」

 経済学に限らず、社会で起きている問題は、一部の人に任せておくには重要すぎる。私たちの日常はすべてのものとつながっている。小さな一歩でも、ほんの少しの変化を大切にすること。それがいま求められているのである。


 最後に、著者はとても愛が深い人だと感じた。著者は、開発経済学者で、インドやバングラデシュなど、貧しい国の人々や状況をたくさん見てきている。それでも希望をもって、人々に呼びかけるような本を書いていることがとても尊敬できた。

 私も、日々、希望をもち、愛に基づいて行動していこう。



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