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半同棲類

眠くなったのに、噛み付かれているかのような痛みが重く鈍く続く──熱を持つ瞼、黒目が腫れてる錯覚/感覚は常に鋭敏な氷の礫だから、鏡越しに光を反射してあらゆる嘘を暴く諸刃の剣、(Bluetooth対応、)ただしWi-Fiがなくては意味を持たぬ鉄の塊/春落ちて、夏溶けて、秋はさめざめ震え地に落ち花開く冬が魅せる幻に手をかざし笑いあった青春の日々よ!永遠にさんざめけ、その輝きに囚われても虚ろに移ろう、伸ばした指は残酷な現実をも透かして/微細な穴、その集合が壁一面を覆い尽くして部屋は白昼でも十分闇が満ちて染み込む床を、天井を、廊下を侵食して飲み込むもののけの類/切られた爪の一部は三日月型のゆりかごみたいにフローリングに落下して粉々。探しても集めても戻らないから、早々に諦めて魔法瓶のお湯を注ぐ。たちまち湧き立つ湯気が上へと登るほど透明に消えてくから嬉しい/カーテンに噛み付いたまま離れない洗濯バサミは、その存在を無視されたままTシャツの内側へと隠れて、ようやく安心して眠りにつける/魔女を吊るし上げるような黄色い笑い声が響くバラエティーも、この部屋のBGMには相応しくなく、エアコンから放出され続ける冷房の音、室外機の回転率、二人分の呼吸音/荒削りのまま研ぎ澄まされた音楽と、怪僧のようながなり声の実験音楽空間は白いイヤフォンのLとRによって鳴る/牢屋のような嫌味、sympathy、積読でできた街と一向に減らないto doによって焦燥ばかり早くなり、8月。夏の終わりの気配はいつも肌で直接感じ取られる/永遠に嘘をつく約束を僕は僕と交わす、と約束した脳裏にいくつもの本音が貼られて、まるで昭和のアニメに出てくるようなラーメン屋みたいだったから、ついラーメンセットを注文してしまった/明らかに、胃の内容量と不釣り合いなのに、きみの顔が浮かんだ。花みたいだった、なんて形容すれば詩になるのかな。実際はもっと、廃れた街の汚れたポスターに印刷されて、Ctrl+C Ctrl+Vで大量生産[拡散]され果てて画質と音質もガビガビになった切抜き画像みたいな、そんな笑顔/思い浮かべて深夜になって、テンションばかり高くなり(高くなり!)指先は冷たく、お腹の具合はあまりよろしくない/右耳から寝息が聞こえる。一人称不在、半透明の僕がふらふら立ち上がり、常夜灯の下でゆらゆら燃えて影になる。灰と化す。ゴミを踏んで、リビングで溶ける、夏なのか秋なのか、もしかしたら春なのかもしれない玄関で散らかった靴を履いて外に出れば、ようやく一人になりたかった/隣の家の木々の節目から滲み出て光放つ、月が眩しくて目を閉じそうになった

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