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濡れた手

赤茶けた街、人々は影と衰え
見るも無残な灰と化してサヨナラ
火球が流れた夜更けにきみは
一つ年上の彼と寝たんだろう
ネオンサインの文字通り
小洒落た部屋のボタンを押して
天国行きのエレベーター
それに乗って、ふたり口づけ
舌は入れたの?
そして、そこからどうしたの?
お互いの硬いところ触り合って
気持ちよかったんでしょう
わかるよ、僕にも
部屋のライトは少し暗くて
だけど、明かりは点けたまま
シーツに付いた血と汗のシミ
脱ぎ捨てられたきみの体の汚れまで
彼はちゃんと取ってくれたの?
舌の上のざらつき、歯の鋭さ
糸を引く唾液の、その温度だって
絵に描けるくらい理解している
だって毎夜想像してる
その度に手を濡らせる
誘蛾灯に照らされて影になるふたりが
一つになる感触と、その囁きだって
僕には全部お見通し
遮光カーテンはシンプルな白色
窓は馬鹿みたいに四角くて鍵が閉まってる
絶対に開けないで、それは意味を持たない
首筋にキスマーク、落ちたヘアスプレー
柔軟剤の香りが付いた鎖骨噛んでヨガって
ほら、濡れてきてるあんなところ
こんなところも好きでしょう
弱いものイジメだって嫌じゃないんでしょう?
指と指絡ませて、感覚器官滲ませて
足の指で触って、そのまま道連れ
息切れ
一人で、僕だけ

絵:二歩 (@tomatomato1121 )

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