見出し画像

海と血

青い果実は心臓のように
脈打ちながらのたうって歌う
ハミングのような嬌声と
裏声のような怒号を連れて
歌詞のない深海の森で目を開けよう
雑に剥がされたシールが
脳のちょっと懐かしいところで
苔むしながら囁いているのに
わたしは海に素足を浸して
手首にカッターを突き立てている
流れた血は月に引かれて肘の先
ぽたり、と落ちると水面で滲み
すぐに見えなくなったから
あなたは海に来るたびに
わたしのことを思い出せばいい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?