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歯磨きしているときにわたしがふと笑ってしまう理由

小さいころ、私がいちばん「すごい」とおもっていた人は母親だった。理由はたんじゅんで、母はかなりの読書家で知識量もあったからだ。

しかし大学生になって親元をはなれ、いろいろな本を読んだり人と会ったりインターネットをやったりするようになると、実家にかえって母親と話をしたときに「このひとの知識はちょっとかたよってるな」と感じるようになってきた。自分の知識量が母親のそれに匹敵してきたことで、母にいだいていた幻想が解消されたんだとおもう。

大人は意外とテキトウだった

もうひとつ、わたしがいだいていた幻想は「大人はみんな、ちゃんとしてる」というものだった。これはとくに大学で就職活動をしているときに感じていた。

とうぜんながら、会社説明会や面接をする人というのは、みんな立派できらきらしている人ばかりだ。会社というのはそういう一分のスキもない人たちがやっているものなんだろうと思っていた。

ただこの幻想も、社会で働きはじめるとあっさりくつがえる。実際に仕事をしていると、けっこうみんな「ナマケモノ」で「うっかり」していて、びっくりするほどやる気がなかったりする。そして、そういう人たちがあつまってなんとか回るようにしているのが会社とか社会というものなんだろうと思うようになった。

いまも幻想を抱いている

さて現在、いまのわたしがかつての「親」や「大人」にたいして抱いていたような幻想を持っていないのかというと、そんなことはない。

たとえばベストセラーを連発してきた編集者や、社会的に成功を収めたビジネスパーソン、セレブリティな人たちと話をしたりしていると、「この人たちは普通のビジネスパーソンとは桁違いのすごいことをし続けている人たちなんだ」と思って尊敬する。

しかしそれが本当なのか、それともかつての私が抱いていた幻想と同じようなものなのかは、いまのわたしにはわからない。ただ、もしかすると「それもまだ醒めていない幻想なのかもしれない」ということを頭の片隅で考えられるようにはなっている。

みんな歯を磨く

わたしは寝るまえに歯をみがくとき、「いまこの瞬間に、だれかも歯をみがいている」ということをふとかんがえる。どんなに地位がたかくてお金持ちのひとでも、(たぶん)歯みがきのは自分でやる。

総理大臣でも、大企業の社長でも、トップアイドルでも、サッカーの日本代表でも、ベストセラー作家でも、わたしとおなじように歯ブラシをもって、口をアホっぽくあけ、シャコシャコしているかもしれない。

そういうことを考えながら、わたしは「フフ」とちいさく笑う。

(了)

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