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「読んでもらえる」論理的な文章を書くコツ ー『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』【執筆】ー

「論理的な文章を書けますか」と問われたら、自信を持って「Yes」と答えられる人はどのくらいるでしょうか。

軸がしっかりとした、読む人を深く納得させられる文章。
そんな文章に憧れます。

「読んでもらえる」論理的な文章を書くにはどうしたら良いか。
この答えをもとめて『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』の【執筆】を何度か読みました。

「論理」ということばの意味からはじまり、「読んでもらうため」のコツまで丁寧に説明があって、繰り返し読む中で理想の文章像や書き方がだいぶはっきりしてきたと思います。

何を意識してどう書けばよいのか。
そのポイントを、「読者にとってわかりやすく、しっかり納得してもらえる文章」を書きたいと思っているわたしが大切にしたいと感じた内容を中心にまとめてみました。


1.「論理的な文章」の構造を理解する

著者の古賀史健さん(以下「著者」)は「論理的な文章」をこんな風に定義しています。

みずからの主観に基づく論が、何らかの客観(理)によって裏打ちされたとき、その言説は「論理的」な文章となる。

『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』古賀史健

「論理」ということばは「論」=主観(考え)と「理」=客観(事実)から成り立ち、「論理的な文章」とは主観と客観がワンセットになっている状態。

「主観」と「客観」はピラミッド図のような3層から成り、頂点に「伝えたいこと=主張」、その下にその「理由」、そして最下部の「事実」が「主張」と「理由」を支える構造なのだそうです。

注意したいのは、「主張」と「理由」は書き手の意見=「主観」に過ぎないということ。

私はこれまで主張は、それを支える相応の「理由」があれば十分なのだと思っていました。論理的な文章が書けなかったのは、ここが原因の1つだったのかも知れません。

ピラミッドのとおり、「主張」と「理由」には、それを支える客観的な「事実」が必要です。「事実」というと、論拠となるデータや資料が必要なイメージがありますが、全てのケースでそうしたものを引っぱってくることは不可能ですよね。
「事実」とは何なのでしょうか。

主張と理由を支える論拠は、データや数値でなくともかまわない。「実例」や「類例」を論拠とすることによっても、論理性は担保されるのだ。

『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』古賀史健

著者は「事実」として、「調べ上げたデータ」よりも「誰もが膝を打つような類例」「見事なたとえ」を提示することを推奨しています。

そして、そのような納得度の高い論拠を提示して文章を面白くしてこそライターだと。

このくだりで著者は「カレーが国民食である」と主張するための論理的な文章を例題にあげ解説しています。

模範解答の文章をみるとあまりに高度過ぎ(カレーをひらがなに結びつける類例を紹介!)ですが、要は「事実」はデータに頼らず納得度の高い論拠を考えて書こう、と提案しているのです。

2.「納得」してもらう文章を書くために


ここまで「論理的な文章」がどの様なものかその構造を詳しくみてきました。次のポイントは、読者が受け入れやすい論理的文章を書くコツについてです。

「論理的な文章」には短所もあって、論拠でガチガチに固められていると
たとえ書いてあることが正しいとしても読んでもらえなくなる可能性があります。それでは本末転倒ですよね。

人間のこころには「作用・反作用の法則」が働いていて、「10の力で壁を押すとおなじ10の力で壁から押し返される」という物理の法則と同じことが
起きるそうです。
書き手が論理で説得しようとすると、それとおなじだけのちからで読み手は反発する。

それを回避するために、著者は読者が求めている「納得感」を生む方法を探っていきます。

書き手と読者が、ひとつの課題を共有すること。それができてようやく、納得の下地は整う。

『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』古賀史健

取り上げるテーマについて、読者と書き手双方がその課題を共有できると
「納得感」が生まれるのだといいます。

あらゆるコンテンツにはテーマ(=課題)があります。
コンテンツは課題の設定→共有→解決の流れで進むもの。

この「課題」が共有されないまま話が進むと、それは読者にとって「他人ごと」となり、論じる内容は「説得」と受け取られてしまう。
逆に課題が共有されると読者にとってその課題は「自分ごと」に変わり、「納得」する可能性が出てくるというのです。

読者と課題を共有する方法として著者が提案しているのが「起転承結」というの文章の型です。
一般的な「起承転結」の真ん中2文字が入れ替わっていますね。

:テーマについて触れる
:話が一転。「展開」する
:「転」の内容を継承しつつ広げたり深めたりする
:結論

「起」でふれたテーマについて「転」でいきなりひっくり返し、持論を展開する・・・ここで読者は「どういうこと?」と興味をもってテーマを「自分ごと化」することになります。
それが結論を提示することによって「納得」感につながる、というのです。

3.どんな文章なら読みたいか、という視点を忘れない


著者が【執筆編】でところどころ強調していたのは、読者に「読みものとしてのおもしろさ」を感じつつ通読してもらうということでした。

著者は「論理的な文章」を書く上でも、この点にこだわった「執筆」を心がけているということが、第四章を読むと伝わってきます。
最終的な目的はあくまで読者が楽しみながら通読してもらうこと。

納得感をもって最後まで読んでもらうために目指したいのは主にこんな文章でした。

●主張と理由がしっかりとした事実(単なるデータより納得度の高い論拠)に支えられている 
→なにかを主張するときには、必ずその理由と論拠をワンセットで!

●作者と読者が課題を共有していて読者が納得できている
→話題の展開によって読者を巻き込み、「自分ごと化」してもらった上で深く納得できるようにみちびく

論理的でありながら「読みものとしてのおもしろさ」も感じられる、
読者が深く納得できるような文章にするために、この2つを繰り返し思い出しながら書きつづけたいと思います。



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