見出し画像

#ふるさと納税を考えよう ~現場からの提言~

こんにちは!三条市CMO(チーフマーケティングオフィサー)の澤です。2021年10月1日より新潟県に移住し、三条市CMOに就任、三条市役所で働く公務員です。ふるさと納税や情報発信などの仕事をしています。

ふるさと納税のポータルサイト、ふるさとチョイスを運営しているトラストバンクが「#ふるさと納税を考えよう」という意見広告を出しました。制度に反対の人も多く、賛否両論がある中で、ふるさと納税がもっとも注目される12月にこのキャンペーンを当事者として打ち出したことに敬意を表します。

ふるさと納税という制度について、現場の公務員という立場から見える景色、現場から伝えたい私個人としての提言について、私も当事者として記事にしたいと思います。


そもそもふるさと納税ってなんでやるんだっけ?

総務省が掲げるふるさと納税の理念

総務省のふるさと納税ポータルには「三つの大きな意義」が挙げられています。

第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。
それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。
第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。
それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。
第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。
それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。

総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税の理念」より引用

また、下記のように結んでいます。

さらに、納税者と自治体が、
お互いの成長を高める新しい関係を築いていくこと。
自治体は納税者の「志」に応えられる施策の向上を。
一方で、納税者は地方行政への関心と参加意識を高める。
いわば、自治体と納税者の両者が共に高め合う関係です。

総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税の理念」より引用

関係を築き、自治体と納税者が「志」によって高め合う、という理念に私も賛同します。一方で、これらのことが自治体側、寄付者側からも意識されていない、というところが大きな問題だと考えています。

なぜ理念が実現できないのか?

これらの理念に沿って運用できている自治体がどれだけあるのでしょうか?残念ながら、ほとんどこの理念は実現されていないと私は感じます。それはなぜなのか、私なりに現場視点で原因を考えてみました。

自治体や事業者がお金稼ぎに走りすぎていること

今年度ふるさと納税のルール改定が行われたことがニュースになりました。費用の5割ルールについて、今まで計上するかしないかグレーだったものを計上するようにした、というところで、値上げされるのではないか、というところが主に取り上げられていたように思います。

熟成肉や精米についてもルール変更がありました。書いていないからどう解釈してもよい、という考え方をしている自治体がいたことが原因だと言っても過言ではないと思います。それはお金稼ぎが最大の目的となっており、手段を選ばない自治体や事業者が多くなったことに起因します。お金を稼ぐ制度ではあるので、競争優位に立とうとすること、それ自体は否定しませんが、バランスというものがあるのではないでしょうか?

例えば新潟県のコシヒカリを他県に持ち出し、精米をしたからその地の地場産品なのだ、という理屈で出品をしていた自治体がありました。このような例があるために今回のルール改定に踏み切ったということは明白です。そもそもそんなことをしてまでお金を稼ぐ必要があるのか、また中長期的な視点でのメリットを考えるとブランド棄損が甚だしく、逆効果だったのではないかと個人的には思っています。

この制度の寿命を自ら短くしているだけでなく、モラルを持って取り組んでいる自治体にもルール改定による余計な手間がかかったため、大変迷惑な話でした。

使い道と予算の仕組み

ふるさと納税の使われ方について、よく質問を受けます。地方自治体の全体予算については、年度予算を3月議会にて承認をもらい、翌年執行するかたちとなります。その承認された一般財源の予算に対して、ふるさと納税の財源を当てていくわけです。もちろんわかりやすい政策に使いました、と言い切ってPRすることもできますが、本質的には年度予算で承認された一般財源に当たることになってきます。

つまり、日頃から自治体がどのような施策に予算を割いているのかの年度予算を見ていくべきです。なぜなら、予算配分はその自治体の方向性に他ならないからです。ふるさと納税の使い道だけ切り取って、それだけを見ても果たして全体としてよい使い方をされているかは定かではないと言えると思います。


ご希望の使い道に沿って寄付金は使われているものの、さまざまな予算に広くふるさと納税の財源が当たっているため、使い道については表現が難しく、広い表現でしかお伝えすることができない、というところが多くの自治体の現状だと思っています。

結果として、使われ方について考えるきっかけにあまりなっていない、という現状を生み出していると考えます。

寄付者に考えてもらうことの取組

寄付者の皆さんに考えるきっかけにしてもらう、という趣旨はあるものの、ポータルサイトのCMはどれだけお得であるかを連呼するだけで、むしろ逆の方向性を助長しています。

前述した理念があるのであれば、それを広く国民の皆様や自治体にも啓蒙する仕組みなどがあるとよいのではないかと思います。例えば、ふるさと納税の財源があるからこそできた政策を紹介したり、自治体の取組と寄付者とのつながりについて紹介したりすることです。

トラストバンクがふるさとチョイスAWARDを毎年行っていますが、国が主導して取り組んでもよいのではないかと考えます。

本来的なふるさと納税に向けての提言

中長期的なメリットに向けた取組へ自治体が切り替えること

モラルを持つということに関して、綺麗ごととしてだけ言っているわけではなく、産地偽装などを行っているところに関しては、それによってどれだけブランド棄損をしたのか、つまり、マイナスになってしまったのかをよくよく考えたほうがよいと感じます。

ふるさと納税に限らず、国民や市民に共感されない取組は、自分たち自身の首を絞めるだけにしかなりません。

目標額の話を本当によくされるのでうんざりするのですが、直近の目標額だけに注目するのはやめていただきたいです。正しい方向で、正しいプロセスを適正な量で遂行しているかのほうが大事であり、普通にまじめに努力のできる職員や事業者にあまり根拠のない目標額を与えることはナンセンスだからです。(努力できないという前提があるから目標額を定めるのかもしれません。それはどちらかというとチームマネジメントの問題だと個人的には考えます。)

そのようなあまり意味をなさない目標額(特に無理がある根拠のない数値)によって、この制度がゆがめられている側面もあると考えます。数字に向かって無理をし続けなければいけない、ということでなりふり構わずに理念に沿わない運用をしてしまうところもあるのではないでしょうか。

(補足として言いますが、仕事としてやる以上、数字は毎日見ていますし、数字はないがしろにせず、予測は都度報告しています。また、KPIもなぜそのKPIを持つのかの意味を職員に説明し、それを向上させるプロセスをしっかり行うことを重視しています。)

金額だけにこだわるのではなく、地域としてのブランド価値の体現がどれだけできるのかをまず考え、その結果としての数字をみるべきではないかと思います。

例えば、三条市のふるさと納税ではミッション、ビジョンを掲げ、なぜふるさと納税をやるのか、どのようなふるさと納税にするのかを関係者に明示ししています。稼ぐだけではなく、全国にPRすること、ビジネスの力を上げること、投資をすることを目的として、ホンモノの価値でチャレンジしていくことを明示しています。

場当たり的でない、戦略的な総務省のガバナンス

今回のルール改定については、方向性としては悪くなかったと思っています。そもそもの趣旨を理解し、自治体がモラルを持って運用しないといけない、というメッセージにもなっているからです。今後も自治体側が趣旨に沿った運用ができない場合は締め付けをするのはやむを得ないことだと思います。

ただし、戦略的に、かつ、事前の告知をもってやっていただきたい、というのが現場の声です。6月27日に告示があり、熟成肉や精米のこと以外は言及されなかったにも関わらず、昨年度と運用が異なり、工業製品なども地場産品として認められないものも出てきました。8月末に連絡があり、10月1日の認定に向けて、全国の自治体職員が膨大な量の事務作業を余儀なくされました。

また、三条市のように工業製品を扱っているメーカーさんとやり取りしている場合、生産計画というものがあり、お互いにどれだけの台数を見込んで生産していくかを話し合い、すでにその数量を作ってしまっている場合もあります。その中で、告示もなく、運用だけで今回はNGというのはあまりにも急でした。その基準もかなり曖昧で、他の自治体では海外工場で造られているのが明らかでありながら今だに出品されているものもあります。メッセージとしての運用変更なのであれば、同じ基準での認定をすべきではないでしょうか。

また、自治体による寄付額のバラつきも難しい問題だと思います。基金に積み立てられ、執行されずに貯金額が増えている自治体もあります。人口など自治体のサイズによって年間の総寄付額の上限を設けるなどのルール設定を行うことで、都市部からの不必要な流出も多少なりとも減るのではないでしょうか。

本当に残念なことですが、理念だけでは動けない人たちも多いという現状ではありますので、一定の範囲でガバナンスをきかせていくことが必要になっていると感じます。ただし、それは戦略的であってほしいですし、自治体に過度な混乱を与えない形での導入であってほしいと現場からの声として申し上げます。

首長の理解と全庁としての取組

前述の使い道と予算編成については、首長と主に政策立案や財務をつかさどる部署がいかに意識的に方向性を示していくのかが鍵となってきます。これはふるさと納税に関する話だけにとどまらず、自治体全体としての肝になるところだと考えます。

そのうえで、ふるさと納税に関する財源は未来のまちに向けた投資を行うなど、市民も納得し、寄付者も関わってよかったと思えるようなまちづくりに使うことが望まれるのではないでしょうか。

ふるさと納税は興味を持ってもらうきっかけとして使いつつ、一方でふるさと納税に限定せず、どのように投資を行っていくのかの方向性を示すこと、そして、全庁としてその方向性へ予算を付けていくこと、情報を出して、市民や寄付者はしっかりそれを見ることこそが肝要だと考えます。

寄付者の目利き

最後に寄付者の皆さんにもしっかり目利きをしていただきたいと思います。その返礼品はどこで誰が作っているものなのか、その自治体のスタンスはどうなのか、そのポータルサイトのスタンスはどうなのかを見ていただいてから寄付に進んでいただきたいです。

一般の消費においても、その製品が持続可能な生産工程を経たものなのか、環境に配慮されているか、フェアにトレードされているものなのか、などが重要視されるようになってきました。

ふるさと納税においても、中長期的な目線でも本当に応援したい地域のためになっているのか、どのような自治体なのかをお調べいただいてからご寄付いただくことがよろしいのではないかと考えます。

結びに

ふるさと納税に現場で関わる個人としての提言を書かせていただきましたが、この制度については歪んだ面があることは多くの方が同意するところなのではないかと思います。ただし、断片的な部分だけを見るのではなく、全体像も理解したうえで、なぜそのような歪んでしまった断片があるのかを見ること、それを正していくことが必要なのではないかと考えます。


X(旧Twitter)@sawa80もやっています。フォローお願いします!
メディア取材や講演依頼などもお気軽にDMしてください!

インスタ@masafumi.sawaやってます。三条での暮らしなども投稿していきたいと思います。

最後に宣伝になりますが、記事を見てくださった全国の皆さん、こんな三条のふるさと納税っていいなー、と思ったら、ふるさと納税は三条市でお願いいたします!

ふるさとチョイス(三条市返礼品ページ)

楽天ふるさと納税(三条市返礼品ページ)

ふるなび(三条市返礼品ページ)

さとふる(三条市返礼品ページ)

※三条市民の皆様は三条市に寄付しても返礼品はもらえませんよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?