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「根拠・理由・主張の3点セット」〔 鶴田教授のご講演から④〕(2018年2月12日)

 前回の焦点であった「類推思考」は、論理的に考えることの「理由づけ」の部分の核心となるものであると私は理解しました。
 ここで鶴田教授が、今回のご講演の柱としてあげられたのが「根拠・理由・主張の3点セット」でした。

 現代イギリスの分析哲学者であるトゥルミンの「トゥルミン・モデル」は、議論を分析するためのモデルであり、ディベートの等でよく紹介されるものです。

  ①主張(Claim)…結論
  ②事実(Date)…主張の根拠となるデータ
  ③理由づけ(Warrant)…なぜその根拠によって、ある主張ができるかという説明
  ④裏付け(Backing)…理由づけが正当であることの証明
  ⑤限定(Qualifiers)…理由づけの確かさの程度
  ⑥反証(Rebuttal)…「~でない限りは」という条件

 井上尚美『思考力育成への方略〈増補新版〉』(明治書院/2007年)では、このモデルのうち①主張(Claim)、⓶事実(Date)、③理由づけ(Warrant)の3つのみを取り出して、小・中学校段階では「これで十分」とした「三角ロジック」が提唱されているそうです。

D 事実(根拠=情報の取り出し)

↓ ← W 理由づけ(推論=解釈)

C 主張(結論=熟考・評価)

 「ピーマンを食べよう。」という主張では次のようになります。

ピーマンにはビタミンCが多く含まれている(D:事実)

↓ ← ビタミンCは人間の健康維持には必要不可欠である。(W:理由づけ)

ピーマンを食べよう。(C:主張)

 日本ではしばしば「根拠」と「理由」が混同されていることの指摘もありました。
 「根拠(evidence)」とは上記の「D:事実」の部分の内容であり、「客観的な事実・データ」、つまり、テキストからの引用で〝わかる〟ものです。
 しかし、「理由づけ(reasoning)」とは、「事実・データを解釈・推論すること(意味づけ)」であって、「各自の既有知識・生活経験などによって異なる」ものとなります。つまり、「D:事実」の内容が〝なぜそう言えるのか?〟について、自分の知っている知識をたとえとして用いたり、これまでの経験を当てはめたりして説得力を高める働きを持たせる部分となるものです。
 この後は様々な事例があげられました。(次回に続く)

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