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成功法則の罠――「マス」の時代の終焉と「自己責任」の本当の意味(2020年10月7日メルマガ)

 先日、実家に帰って両親とTVを見ていたのですが、はたと気づいたことがあったのでシェアしたいと思いました。

 現在、指導を受けてファスティングを実施しています。その取り組みの中で知った「腸内フローラ」という用語を冠した番組が始まった時に、こと不健康な食生活をしている父に見るように言ったのですが、“まったくわからない” “結局何が言いたいんだ” とイライラしだしたのです。

 ※腸内フローラ……詳しく知りたい方のためにひとつリンクを貼っておきますが、これがベストの解説というわけではありません。情報の出自が明確ということで採用したということをお断りしておきます。
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html

 番組の中でも、コメンテーターの3人が非常に不服そうな様子で、わざわざ呼ばれて番組で説明をしている先生に対して、感情丸出しで疑問をぶつけていました。番組を見ていた私の母親が “あの3人も納得してはいないね” と言い、“あ、そうか” と思いました。

 私はファスティングの指導を受けている方からあることをくり返し聞きました。そして、その方の師匠の本にも同じことが書かれていました。それというのは、健康を回復する(維持する)処方というのが、全員同じではないということ、そして、同じ人であっても、時間的な経緯の中での変化や、その時その時の状況における違いが生じるということでした。

 つまり、個人差があり、個別的な指導が必要なものについて、それをTVで全体に向けて解説するということ自体に無理があったのです。せめて、コメンテーターがそこに気づいて伝えられたよかったのですが、そこに気づけないまま不審な表情をしているので、多くの受け手もおそらく不審なままに終わるわけです。

 文字通り、マスコミは「マス」(=集団)の「コミュニケーション」なのです。――時代は変わろうとしています。

 この私の小さな気づきと、主にSNSから生み出されている多くのコミュニティの出現という社会現象は、一致しています。「マス」によって与えられる単一の価値と事物ではなく、個々が提供するそれらを個々が自ら選択し、その営みの延長において、個々が複数のコミュニティ(自らが運営するものも含む)に所属する時代への変化です。

 SNSのグループで、お会いしたことはないのですが、少しばかり辛めに面白いこと発言している方がいます(私よりひとまわりくらい年上だと思います。社会に対する独特な切り口がちょっと苦手……みたいに思っている人もいそうですが、私の秘密の師匠の一人です(笑))。

 その人が、「成功法則には性格分析が必須だ」といった内容のことを、ある日発言していました。ほぼ反射的に私は「いいね!」を押しました。

 それは、私が学校教育現場を去った無意識的な理由でもありました。学校教育の「マス」な指導の限界を感じているからです。『徒然草』で、馬を見る名人の段落を学んだ時に生徒たちに言ったことがあります。

 “これがいいから” と言って、ある教材をクラスや学年や学校全体で与えても、それが全員が全員に同じように有効なものではないし、この3年とか6年とかいう期間で、みんながみんな同じように成長するわけでないから、焦る必要はないと心得よってことだね……と。

 (まあ、今の子どもたちは私たち世代とは違う聡明さがあるので、そんなのは肌感覚ですでに理解してそうですが……。)

 「人生をつかさどる5つの要素」(①お金・②人間関係・③時間・④健康・⑤感情)について知人から教えられたことがあります。この優先順位は個々で違います。

 人が、自分とは5要素の優先順位がおそろしく違う集団にいれば、日々はきついわけです。また、何らかの必要から “自分はこうだ” と優先順位を決めつけて、気づかず自分の本来ではない生き方をしていれば、もっとタチは悪いです。――そして、私自身を含め、優先順位を誤って生活している人がたくさんいるのだとわかりました。

 SNSやYouTube上で無数に出現した、同じようなことを提供できます、売っていますという人たちの中から、誰を、何を選ぶのか? ――それにはまず、自分を知った上で、私のSNSの師匠の言葉を借りれば、「性格分析」をした上でなければ、「言われたとおりやったのに、なんでうまくいかないの?」と言って、それを提供した人を無駄に攻撃したりしすることになります。

 あなたが本当に望み、心から満足できることとは、何か……?

 提供者とあなたは違う個性です。レビューを書いている人たちも同様です。今後、提供する側の反論はありうるわけで、「あなたはちゃんと自分に合った人(物)を選べたんですか?」と返されたらそれまでかと思います。ーーものすごく厳しい自己責任ですね。

 最初に戻りますが、両親と見ていたTV番組に出ていた若い先生は、笑顔を絶やさず穏やかな口調でずっと一番大事なことをくり返していました。

 「個別の検査を受けていただくことでわかります」

 コメンテータの人たちは、それをちゃんと聞いて理解できたのかなあと思いました。TVを見て、視聴者が私の父みたいに納得できないだけならまだしも、コメンテーターたちの気持ちに乗じて、気持ちの上であってもその先生のことを攻撃したりしないといいな……と切に願いました。

 「マス」の時代の終焉と、「自己責任」の本当の意味を考えさせられた一件でした。

〔原題「言われたとおりやったのに、なんでうまくいかないの? ~成功法則の罠~」〕

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