新入職員と教育担当

いまは5月25日。新入職員が入職して2ヶ月が経過したところです。

俺も新入職員の時代もあったけど、数年だけ上ってだけでやたら偉そうな先輩にムカついたことを今でも鮮明に覚えている。特に今みたいにわりと酒が入ってて、過去の回想モードに入った日にはね。
10年以上も昔のことを昨日の出来事みたいに思い出してムカついたりもするんです。

そして俺が教育担当を仰せつかってた時期もあった。教育担当として限界を感じた。俺の見てるところでも見てないところでも新人に偉そうにマウントするクソみたいな連中、そして俺にまで新人の仕事の覚えが悪いとか難癖つけてくる連中、
…そして教育担当とは名ばかりでそんな先輩にも強く言えない、新人に毛が生えただけの当時の俺。

あぁ思い出しただけで今でもムカつくし悔しい!どんだけ過去の話を引きずってるんだよって感じだけど、そう簡単には流せない問題よこれは。なにせ「パワハラ」とか「落ちこぼれのレッテル貼り」とか「人間関係での退職」とかって、された人間の一生を左右しかねないビッグイベントなのだから。

組織のなかで立場の弱い新人に、その組織でしか通用しないようなローカルルールを知ってるとか知らないとかでマウント取りたがる人っているんだよね。確かにその組織のやり方に馴染んでもらわないとチームとしてやっていくのに不都合はあるかもしれないけど、マウントニキはそこまで考えてるの?「説教するのってぶっちゃけ快楽」ってだけじゃね??…なんて思うんですよ。

…なんか過去の反芻モードに入ってしまいました。
今日は、あまりスポットライトが当たらない気がする「教育担当」というポジションについて、思うところを書いていこうと思います。

教育担当を任されるのは入職数年目くらいの人が多いようだけど、ちょうど薬のことや組織のことのあれこれがわかってきて、その反面わからなかった時代の記憶が薄れつつある(けどいくらかは残っている)段階なんじゃないかな。

俺が新人だったころ、どうだっただろう。
教育担当と新入職員のやり取りを聞いていて、また教育担当が今思う胸の内を聞いて、これまでの自分が思い出されてしまう。
(教育担当が俺に胸の内を話してくれるのはありがたいことで、まだ数年は俺も職場の「お荷物おじさん」にならないでいけるのかな…なんて思うのです。かなり嬉しいことなのです)

今はただ傾聴と、「しょうがないさ、まだ2ヶ月だし覚えきれないんだよ。決して(教育担当)先生の説明を聞いてないってわけじゃないんだよ。」…と返しています。

でも俺の本心は別にあります。
その本心、「ぶっちゃけ俺はこう感じているんだけど、どうだろう?」というのを教育担当の先生に伝えるのは、もうちょっと先になると思う。今はまだ傾聴と受け止めまでにしておいたほうが良い気がするから。

そんな俺の本心だけど、まず口頭説明ってのは伝わらないよ。
話し言葉って精度がものすごく低い。言葉の内容というよりは「空気感」がふんわりと伝わる感じがする。ジェスチャーや表情のメッセージのほうが、言語のメッセージより圧倒的に伝わる…みたいなことがよく言われてるのはご存知だろう。
それから、伝える側が自信ないために表現をあいまいにしてしまうところもあると思う。例えば、AよりもBのほうが自分は良いと直感しているけど、その良さをきっちり言葉にできないから「AでもBでもいいよ」と言ってしまったり。
(俺はこれよくあるんすよね…。何日後かに、あぁこれこれこうだからBのほうがいいよって言えればよかった…と思って、後になって数日前の話を蒸し返して「あれやっぱりBでやって欲しいな。理由はこうこうこうだから」とか言ったりして、新入職の先生に(えっ何の話??)とポカーンとされることもよくあります。良くも悪くも、口頭説明は全然伝わらないというのを実感する次第。)

本当に伝えたいことは書面で説明したほうが良い。
口頭だと、「話し言葉のあいまいさ」もあるし、言った言わないの問題もある。

自分が新人だったころを思い出して欲しい。聞いてないor理解できてないことでも、先輩が「あなたにこう説明したはず!」と強く言われたら、「すみませんでした」ってつい言ってしまわない?俺は言ってしまうほうだなわりと。
でも先輩が本当にそう言ったとして、それが新人が理解できてかったとして、これどっちの問題だろうな?新人が謝ることなのかな?

これがもしも、『患者さんに服薬指導しました→患者さんあんまり理解できませんでした→さて悪いのはどっち??』という図式にしたら10:0で薬剤師が悪いって思うだろう。逆にここで患者も悪いって意見が出たら薬クラ総出でフルボッコまである。

患者と新人薬剤師は違うだろうか?
持っている予備知識(新人薬剤師の場合はその病院特有の調剤内規など)のありなしで考えると、そんなに的はずれな譬え話でもないと思う。

「一回教えたんだからわかれよ」という指摘、これも教育担当からよく聞こえてくる話だ。
でもそんなスーパー人間はいないぜ。
高校でも大学でも、授業で一回聞いただけで試験満点取れた奴だけがそれを言っていい。
罪のない者だけが石を投げよ、ってのはこういう状況での箴言じゃないだろうか?…いや俺クリスチャンでもないのに適当なことを言ってるだけだけど。

そんな、どちらかというと新入職員側の肩を持ってる俺だけど、「一生懸命伝えようと頑張っているから、それが伝わらないのは悲しいし腹立たしい」という教育担当者の気持ちはすごくわかる。
いやちょっと嘘、腹立たしいって思ったことは俺自身ないからそこだけは同意できない。
けど、工夫してあれこれ伝えようとしたのに伝わらなかったむなしさはよくわかります。

これは、誰が悪いってわけじゃないんだよ。教育担当者が入職してから今に至るまでの年月で理解したことを、新入職員に言葉で1ヶ月2ヶ月で伝えられるわけがないんだ。
大学教授が半生かけて取り組んだ研究やその予備知識を、いくら半期の授業で教授が情熱を傾けて解説したとして、学生は100%理解できない(てか初学者向けに大幅にグレードダウンした試験問題にして、そのうち60%が正解できれば単位認定とする)わけじゃないですか。
教育担当者の心構えとしては、初めからそういうものだと思ってたほうが良いんだよ。

教える側が心得ておくべき基本は「教えすぎないこと」。
これまで受けた教育を振り返ってみて欲しい。
小学校の先生は小学生に理解できそうなことだけ教えてきたし、
中学校の先生も中学生に理解できそうなことだけ教えてきただろう。
教育担当者を任せられる世代なら、まだギリ自分が新人だったときの記憶があるはず。どのレベルまでなら理解できて、どれは全然わからなかったとかいう記憶が。
今一度、それを思い起こして、新人が無理のない範囲で最低限の動きができるような「指導」をして欲しいなって思います。
新人と役職者の境界にいて、どっちの気持ちも理解できる貴重なステージにいる方に教育担当をお願いしています。

いや「お願いしています」って、俺は薬剤科長でもないし、業務をお願いできる立場じゃないんだけどさ。
科長が「今年の教育担当者はこの人!」と見立てたその見立てを信じ、教育担当の先生をサポートする立場から思ったことを書き連ねた次第です。教育担当の先生が悩んでいて、もし俺が話をする機会があったらこういうことを言うかな、ってことを整理してまとめる目的でこれを書きました。

教育担当者として抜擢された時点であなたの実力は十分認められていますので、あとは「初学者に教えすぎない」という原則を肌感覚で掴めたら、あなたも新入職員も大きくステップアップできると思います。

上から目線って思われるかもしれないけど、俺も一度通った道なんだ。その過程で思ったことを今こうして言葉にしています。
それでもやっぱり上から目線だとか不快に感じられたら、俺も謝るほかないんだけどね。

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