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迷子

小さい頃、よく迷子になった。気付くと知らない街でひとり、ぽつんと取り残されていて、しばらくすると血相を変えた母が僕を探し当てるという、そんなことが多々あった。

その日も、デパートでパフェを食べようと言うのでうきうきしながら母の買物のうしろを歩いていたら迷子になった。突如として消える母。いきなり襲ってくる「世界」という怪物。僕は上から下まで階段を何度も行ったり来たりしては、それでも見付からず最後はなんとかセンターに預けられた。数時間後、やっと見付けたと涙ぐむ母が僕を抱きしめた。

これまで、幾度となく、父親が変わった。途中から僕は知らない男の人をお父さんとは呼ばなくなった。お小遣いを渡され、夜まで帰ってくるなと言われると僕は一人で街をふらついた。かつて迷子になったような場所もそれがどこかわかるようになれば怖くはなかった。僕はアイスやお菓子を買って一人でそれを食べた。

母とはもう何年も会っていないが、そのデパートで母を見掛けた。また、新しい知らない男の人を連れていた。男の人の連れ子だろうか、小さな男の子がその後ろを歩いている。3人が通り過ぎるのをやり過ごそうと柱の影に隠れると、去り際、男の子が僕に気付いて目が合った。かばんからお菓子を取り出し、僕は男の子に小さく手招きした。




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