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グッドモーニング,レボリューション(18)(2014)

18 ラジオとインターネット
 次の曲はラジオに捧げよう。クイーン(Queen)、『ラジオ・ガ・ガ(Radio Ga Ga)』。

I'd sit alone and watch your light
My only friend through teenage nights
And everything I had to know
I heard it on my radio
Radio.

You gave them all those old time stars
Through wars of worlds -- invaded by Mars
You made 'em laugh -- you made 'em cry
You made us feel like we could fly.

So don't become some background noise
A backdrop for the girls and boys
Who just don't know or just don't care
And just complain when you're not there
You had your time, you had the power
You've yet to have your finest hour
Radio.

All we hear is Radio ga ga
Radio goo goo
Radio ga ga
All we hear is Radio ga ga
Radio blah blah
Radio what's new?
Radio, someone still loves you!

We watch the shows -- we watch the stars
On videos for hours and hours
We hardly need to use our ears
How music changes through the years.

Let's hope you never leave old friend
Like all good things on you we depend
So stick around cos we might miss you
When we grow tired of all this visual
You had your time, you had the power
You've yet to have your finest hour
Radio -- Radio.

All we hear is Radio ga ga
Radio goo goo
Radio ga ga
All we hear is Radio ga ga
Radio goo goo
Radio ga ga
All we hear is Radio ga ga
Radio blah blah
Radio what's new?
Radio, someone still loves you!

 ラジオと音楽は関係が深い。ワルター・ベンヤミンの複製技術時代ってのは聞いたことがあってしょ?写真とかレコードとか映画とか複製が簡単につくれる時代が来たってこと。そんで、唯一の芸術作品が発するオーラが消えたってこと。聴いたことあるっしょ?音楽も、それまで音楽聴きたかったら、コンサート会場とかカフェとか、とにかくこっちが行かなきゃいかんっかったわけ。ま、巡礼だわな。でも、レコードがあれな、音楽が来てくれるわけよ。オーケストラがやって来た!オーケストラがやって来た!山本直純!ま、それは電気録音のLPが生まれてからだけどね。

 だけんど、まだ高い。レコードだけじゃなく、蓄音機も要るから。おまけに、買ったもんしか聴けん。そこでラジオよ。局がレコードの曲を流せばいろんなのが聴ける。ラジオを買うコストはレコード買いあさるより安いわな。局は商売だ。個人よりもレコードをたくさん買える。レコーの意義はラジオがあって初めて生きるわけよ。いいかい、料理しながらでも、シッコしながらでも音楽が聴けるんだぜ。そりゃあオーラないわな。こういう時代になりゃ、クラシックよりもポピュラー音楽がウケるのもわかるね。クラシックばコンサートん生演奏前提じゃけどのお、ポピュラー違うけん。レコード録音に力ば入れちょうフィル・シュペクターも出てくるちゅうわけたい。

 ばってん、チューニングするだけでよかちゅうのは、画期的ばい。子ども向けや女性向けラジオばつくらんでもよかけんね。箱は同じで中身だけ変えられる。でも、本だとそうはいかない。『小学一年生』や『女性自身』、『週プレ』、『アンアン』、『アサヒ芸能』。一つ一つ買わなきゃいけない。何しろ、ラジオは音声。読み書きは学校行って勉強しないと身につかない。でも、会話なら家族や近所で暮らしてるうちにできるようになる。ラジオは識字を問わないわけよ。大人も子どももない。大人の子どもへの優位はねーねよ。ラジオが、だから、国民を初めて一体にさせたんだよ。新聞じゃない。

 ってことはよ、ラジオは民主主義の道具にもなるし、全体主義の道具にもなるってことよ。レーニンは、ロシアは識字率が低いし、国土も広いから、共産主義思想をラジオで啓蒙すべきだと言ってる。ナチはラジオでプロパガンダ、ドイツ国民を煽ったし、フランクリン・ローズヴェルトはマスコミュニケーション、炉辺談話つって、囲炉裏の傍で長老が話すように、アメリカ国民に恐慌からの脱出を駆りかける。政治参加も政治動員もどっちもできる、ラジオはね。

 もちろん、テレビ時代の前には、ラジオを持ってる持ってないとか、持ってるならどんなラジオなのかでその人の経済状態がわかるだろうし、あと、一九六八年まで日本ではNHKのラジオの受信料が徴収されててね。その契約数の地域差を使って、社会的関心や教育を受けることの意義について推測するデータとして研究に利用できんのよ。

 ラジオが普及し始めると、そのメリット・デメリットの議論がかまびすしく、発音しにくいな、かまびすしく、ああ滑舌わり―、わりーね。わりーね、ワリーネ・ディートリッヒ、かまびすしくされてる。今のネットの功罪みたいのはこん時にもう出ちゃってる。書物不要論なんかもあってね。ラジオが新聞や本の代わりになる。記録は、つまりアーカイブはレコードにすればいい。デジタル技術はラジオの提起した問題をブラシュアップしたってとこだよな。

 考えてみればさ、短波放送は、出力にもよるけど、グローバルに聞ける、ラジオがあれば。特別のインフラも要らない。つまり、最初に国境を越えたメディア。ネット環境がよくないところじゃ、今でもBBCの短波放送から情報を入手してる。アフガニスタンの山奥とか。え?さっき話したって?そう?ああ、言ったかもしんない。繰り返しが多いって歳のせい?そりゃあ、白髪もあるし、夕方になると目も見えなくなるし。八〇過ぎると老人的超越になって、多幸感になるらしいけど、そこまでいってねーし。

 インターネットのおかげでラジオも個人で簡単にできるようになったけど、やっぱり言語権威限定されるよね、リスナーは。YouTubeのような動画投稿サイトの方がネットには合ってるよ。映像はグローバル・ヴィレッジの共通言語だね、ラジオをやってるとつくづくそう思う。ラジオにはラジオのよさがあるけどね。

 次にちょっと面白い歌手を紹介します。彼女の名前はリタ(Rita)というイスラエルの歌手なんです。ただ、彼女は幼い頃にイランから移民してきたんですね。イスラエルにはイランからの移民が多くて、そのコミュニティもあります。イスラエルの公用語は現代ヘブライ語ですけど、イラン出身者も多いんでペルシア語も使われてるんですね。それで、彼女はヘブライ語だけでなく、ペルシア語でも歌ってるんです。

 今でこそ、イスラエルとイランは険悪な関係ですが、イラン革命以前は良好だったんです。律法、いわゆるキリスト教徒の言うところの旧約聖書では、ユダヤ人をバビロン捕囚から解放したのはアケメネス朝ペルシアのキュロス大王なんです。アケメネス朝は「寛容の帝国」と呼ばれていて、納税と軍役さえ果たせば、自分たちの宗教や文化を守っていいとされています。ユダヤ人はキュロス王を、異教徒のはずなんですが、救世主と呼んでいます。西洋、西洋って言うけど、起源がオリエントのものってすごく多い。キリスト教だって生まれたのはオリエント。オリエントとの関係から西洋でそれがどう発達したかを考える方が歴史的には妥当じゃないかな。

 リタはイスラエルのスター歌手です。でも、ペルシア語でも歌ってるんで、イランでも人気があるんです。実は、ペルシア語圏は広いんですねー。ペルシア語は美しい言語だとイスラムが普及してからも詩の創作では中央アジアや南アジアで使われてるんですね。インドのムガール帝国でもそうなんですね。そういうペルシア語の詩はインシャー文学って呼ばれてます。ハミド・カルザイがアフガニスタンの大統領になった時も、ペルシア語で演説してましたが、そういう経緯があるんです。

 前置きが長くなりましたが、YouTubeで公開されている公式の配信で、リタの『シャーネ(Shane)』をお聴き下さい。

 ♪♪♪♪

 どうです?正直言って、中東の音楽に馴染むと欧米の音楽が物足りなく感じることがあります。パワーがないというかね。これはそうじゃないんですけど、中東の唄や詩には無常を語ってるものが結構あります。最も有名なのは、さっきかけたファイルーズの『私に葦笛をください(A'Tini Al-Nay)』です。「ナイ」は足の笛のことですから、英訳すると、このタイトルは”Give Me the Flute”です。なお、葦笛は音楽、つまり永遠の比喩です。この歌詞はハリーㇽ・ジブラーンという詩人尾作品です。ハリーㇽ・ジブラーンはレバノン生まれですが、若い時にアメリカに移住して、アラビア語と英語で創作しています。人の命はこの世じゃいずれ消えていく。だから、音楽をする、宗教をする、そんな内容のがあります。無常が日本人お特の心的特徴だというのは思いこみです。村上春樹が三・一一の後にバルセロナでそんなことを言いましたが、恣意的な背夢意です。奢れるもの久しからず。

 ちなみに、URLは”https://www.youtube.com/watch?v=5NnsIqN2yLk”。検索すればsすぐに出てくる。リタはRitaで、シャーネはShane。


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