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Q4.SNSにある資料を使って勉強するってどうですか?

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本もいいけど、やっぱSNSだねー。インスタとかTwitterとかYouTubeとか役立つものがこんなにあるんだもん!世の中には親切な人がいっぱいいるなー!おともさんも本ばっかりじゃなくてこっち見たらいいのに!

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聞こえてるぞ。

①吹き出し下

②吹き出し上

あっ、噂をすればおともさんじゃないですか。

先輩はSNSを使って勉強ってしないんですか?こんなに便利なのにー。

②吹き出し下

①吹き出し上

SNSを使った勉強ねぇ…良いとは思うよ、ただ個人的には便利かどうかを含めて、結局その良し悪しは受け手次第だと思う。

あんまり言うというと『このnote記事自体もSNSを使ったコンテンツじゃないか』って、物凄いブーメランがぶっ刺さるからあまり触れたくないけど。

①吹き出し下

②吹き出し上

誰に向かって喋ってるんですか。

実際、便利ですよ!YouTubeとか、どっかの先生とかすごそうな看護師がすごく詳しく解説してくれてますし、InstagramやTwitterも参考になる資料がどんどん流れてきますもん!

無料でこれだけ情報が手に入るなら、本なんて買わなくてもよくないっすか!?

②吹き出し下

①吹き出し上

もちろん反対はしないよ。SNSは便利だし、良いツールだと思う。

それで学べることが多いってのは否定はしない、だけどな……

①吹き出し下

②吹き出し上

だけど?

②吹き出し下

①吹き出し上

SNSで流れていると言うその情報は、正しいのか?

本当にまるっきり信じ込んでいいのか?

①吹き出し下

②吹き出し上

えっ、だって医療者なら嘘を言うはずないと思いますけど…

この人とかフォロワーが万を超えてますよ。

このYouTubeだってチャンネル登録者が数千人いますよ。

②吹き出し下

①吹き出し上

フォロワーの多さは医学的な正しさを裏付けるのか?

SNSの有名人が言うことならなんでも正しいのか?

①吹き出し下

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うっ…いやそれは……

②吹き出し下

①吹き出し上

何度も言うけど、SNSで何かしら学ぶと言うのは否定はしないよ。発信する側にも、どこかの誰かの力になりたくて真面目に取り組んでいる人がいるのを知っているからね。

だけど、そうじゃないこともあるんだ。そしてそれはとても危ないんだ。

今日はSNSと学習の付き合い方を話そう。

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【SNSと学習、その距離感】

ご存知の通り、すでに多くのSNSが乱立していて、それぞれのプラットフォームで独自に配信をしている医療従事者は珍しくありません(僕もそのうちの一人であるという認識があります)

SNSを使った学習のメリットは
・お手軽である
・ながらでもできる
・情報が無料で手に入る
・他の人の反応を見ることができる
・一緒に勉強している気持ちになれる

などが挙げられるでしょうか。

「よし、勉強しよう」と思わなくても比較的低いハードルで、学ぶ姿勢を作ることができ、新しい知見を得ることができると言うのは行動の始動としては非常に大きな強みであり、他にはないアドバンテージです。また学習と言う、辛くて孤独になりやすい状況の中で同じように学んでいる方が可視化されると言うのも強みだと思います。

ただし、スマホだと他のアプリや通知などによって中断の誘惑が多いと言うデメリットもあることは添えておきましょう。

しかし、情報の受け手側は発信者のリテラシーに甘んじてはいけないと考えています。つまり、発信された情報を鵜呑みにするのではなく、発信者と同じくらいその情報を吟味して取り扱いに慎重になったほうが良いと考えます。


【SNSで理想的に発信された情報とは】

主に医学的情報を信頼する上で、信頼を置けると考えているのは
『academicな団体(あるいは集団)で運営しているもの』
『医学的に正しい情報発信の取り扱いがわかっている企業やチーム』

であると考えています。
(最近の例で言えば『こびなび』はまさにこれです)

学術的な正確性の重要さや、誤った情報の流布がどれだけ多くの被害を及ぼすかを考えられる集団というのが重要です。なぜ『複数人』かと言えば、単独での発信だと、情報に対して発信者の思い違いや誤解があった場合に他のメンバーがチェック機構として機能することが可能です。一人では気づけず、スルーしてしまう内容や表現でもチームならば指摘して修正することが可能だからです。

書籍や学会、セミナーなどであれば(一般的に)著者や主催者の知識だけではなくて他の専門家のチェックが入ったり、校閲や校正が入ることで情報の信頼性が担保されます。もちろんそれでも誤字脱字があったりしますし、医学は日進月歩なので気がつけば古い情報になっていることもあります。ただそれでも何人もの専門家のチェックを通って世に出た専門書などはそれだけで充分信頼に値するものです。

SNSでの発信には、まずそれがありません。最も、だからこそお手軽に誰でも発信できると言うのがあります。

言うまでもないことですが、医学情報の不確かさと言うのは最終的に患者へのリスクとなります。なので情報が不正確であるほど、あるいは偏っているほどその情報は患者にリスクを与える可能性が高いものになります。

というと、「そりゃそうでしょ、何を当たり前のことを」と思われるかもしれません。ここで次に問われるのは、情報の受け手側が『発信された医学的情報の真偽を見抜けるのか?』と言うことです。


【受け手側は真偽を見抜けるか?】

悪意を持って「誤った情報を広げて困らせてやろう」と言う発信者はまずいないか、いたとしても極々少数でしょうし、発見次第ほかの方から突っ込まれて消えていくでしょう。

「そんなこと言われても、そういうのは大体自分は気づけるよ」と思う方もまたいるでしょう。

ところがSNSには、強力なバイアスがかかるのです。

それは情報の発信者のフォロワーの数(とそれに伴う賛同コメント)です。

同じ内容を発信するのであっても、フォロワー10人とフォロワー10000人では受け手側の印象が変わってきます。後者の方がどうしても心理的に信じやすいのです。バンドワゴン効果、エコーチェンバー現象、ウィンザー効果などがこうした背景に影響していると考えられます。そうした先入観抜きに情報と向き合わねばなりません。

以前、フォロワーが20000人を超える方が、心肺蘇生について誤った情報を発信しているのを発見しました。ほとんどのフォロワーが「そうだったんですね、勉強になります!」と言っていた中で、その誤りを指摘するというのは非常に勇気がいることですし、「この人がいうならそうなんだろうな」と思ってしまった方もいるでしょう。そもそも賛同コメントが多ければ指摘や批判のコメントは埋もれて見えなくなってしまいます。

僕としては情報の受け手側がフォロワーの数も、資格も、地位も、知名度も全て横に置いて「この人のいうこの情報は正しいのか?ちょっと自分でも調べてみよう!」というところが、受け手側の学習の出発点になることを願っています。

医療者は、情報と向き合う上で大事な考え方をすでに学んでいるはずです。

それは『クリティカル・シンキング』(批判的思考)です。

SNSでの学習情報の発信者も人間です。発信者側の理解が誤っていることもあれば、単純に表記ミスも起こり得ます。また、難しいことをできる限りわかりやすく伝えようとして、情報を噛み砕きすぎた結果、本来の情報と少し違った内容になることも考えられます。SNSに投稿する前に、情報を発信者が加工しているわけなのでそれはどうしても発生してしまいます。だからこそ、複数人での発信を行うことでこうしたミスを防ぐことができます。

ちなみに自分の場合、このマガジンに他に執筆者も校閲もするスタッフはいないので、投稿する前に一晩寝かせるなどして時間をかけて再考し、推敲して、できる限り何人かの自分でチェックするように心がけています。


【それぞれのSNSとの付き合い方】

人は五感を通して学ぶわけですから、それぞれについて注意点を記述します。

活字(ツイートなど)
→連投や補足をすることで多くの情報を一気に投下できる。一方で、ツイートの場合だとそれまでの背景や文脈を無視して情報を取ってしまうことで、誤った理解に繋がる可能性がある。
検証するにはキーワードをコピペして検索するとか、キーワードを教科書で調べるなどすると良い。削除されてもいいように元ツイートはスクショなりコピペするなりして保存すると検証しやすい。また連投されている場合は全ての投稿を繋げて読んでみたり、他のツイートに真意が繋がっていないかを確認すると良い。

写真・イラスト(主にインスタ)
→イラストや写真は視覚的な説得力が強くわかりやすい。一方で文字情報が制限されてしまい本来の意味で伝わらない、あるいは簡素化しすぎて(理解できた!)と言う錯覚が生まれやすく「本当はこの先はもっと自分で調べてもらいたい」という作者の意図が伝わらないことがある。
さらに深掘りするには、取り上げられた内容を調べて補足を書き込んでみるとか、自分なりに描き直してみると言うのも手段ではある。

動画・音声(youtubeなど)
→字幕を使えば活字と写真のいいとこどりができる手法であり、発信者自身の声が乗ることで更なる説得力が生まれる。オンライン講座などでの聴講も当たり前に流行ってきており、動画で学ぶ素地はもう充分に育っている世界になっている。一方で、その強すぎる説得力と塾の講義を受けているような印象もあり、受け手側がそれ以上主体的に学ぶきっかけになり得るかどうかが問われるところでもある。
聞き流す使い方もいいけれど、一時停止を繰り返して何を話しているのかをしっかり受け止め、場合によっては書き起こしたり、動画と内容が合っているかを調べてみても良い。

また人によって勉強しやすい媒体(感覚)が異なります。イラストがわかりやすい方もいれば、活字が馴染む方もいるでしょう。それは個人の特性ですので学びやすいSNSを有効活用すると良いです。


clubhouseが一世を風靡した時、医療情報を発信する方も見受けられました。発信それ自体は個人の自由ではありますが、中には怪しい情報元(下手すればデマレベル)を根拠に持論を展開する方もいました。

これが活字で、オープンな世界なら、誰かが気づいて指摘することも可能だったでしょう。しかし当時のclubhouseは招待制であり、良くも悪くも閉鎖空間でした。そしてこの閉じられたSNSの中で、実名で自信を持って発言する声の威力というのはかなり凄まじく、活字やイラストよりも印象に残ります。しかも厄介なのは録音が禁止されているため、細かいニュアンスや表現が違った場合に真偽を調べようと思っても、話題は次へ次へと進んでしまうこととモデレーターに許可されない限り聴衆は発言もできないということです。結果、誤った情報は信者的とも言える空間の中で修正も検証もされないまま広まっていってしまいます。

そういう意味では、YouTubeは何度でも見直せますし、InstagramやTwitterも投稿を見直すことができるので検証しやすいと言えます。注意すべきはTwitterの派生とも言えるツイキャス、そして新機能であるspaceですね。これらは発言するときには慎重に慎重を期して発言しているつもりです。


【SNSでよりよく学ぶ姿勢とは】

メジャーどころのSNSとの付き合い方や個人的に思う注意点について書きました。主に情報の受け手側の姿勢について書いてきました。否定的に見えるかもしれませんので何度も書いていますが、SNSを使った学習というのは大いにありだと考えています。むしろ時代の流れとしてこれからもっとメジャーになっていくかもしれません。ただし、それは発信者側の資質やクオリティというよりも、受け手側のスキルや姿勢に依存するところが大きいと考えています。

困っている学習者の助けになろうと、苦心している発信者を何人も知っています。こうした方々はできる限りわかりやすいように、そして自分と同じところでつまづかないようにそれぞれのスキルを活かして情報を発信してくれています。受け手側はそれに甘んじて享受するにとどまってはいけないとも考えています。

つまり、受け手側も最終的には自分で考え、自分で学び、自分で見極めると言うことです。

まとめます。
・医学的な正しさとフォロワー数は相関しない
・SNSでの学習はいいけど、情報を鵜呑みにはしない
・情報が正しいかを自分で検証することが本当の学びに繋がる

個人的には、自分が発信する(アウトプットする)つもりで学んだことを出していくことが、学びの王道だろうと感じています。


【ブックガイド】

情報を正しく選択するための認知バイアス事典

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