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天国のドアを叩く

2021年 12月31日

私は仕事で仙台に向かう。東京に勤務する私は、年末年始の地方応援に選ばれた。選ばれたというか自ら立候補したのだ。年始明けには一日、観光する時間があると聞いていたが、『地方応援の詳細』と書かれた2枚のA4用紙には、最終日まで店舗勤務と記されていた。

私はワクワクしていたのだ。
初詣も、牛タンも、仙台うみの杜水族館も。

雪がふりつもる仙台に、給料も手当も出ず、観光もできない。なんのために行くのか。

こんな私の大晦日だが、今年は笑って過ごしたいし、せっかくnoteを始めたのだから、皆様にも笑って歳を越してほしい。

そんな気持ちで、今年あった2021年最大のサウナ事件をしたためる。

10月。私は深夜の池袋にいた。
一年に一度の繁忙期を乗り越え、「絶対サウナに行くぞ」と意気込む。今日行くところは、「サウナ」と大きく書かれ、以前から前を通る度に気になっていたところ。値段を調べると安かった。頑張ったご褒美に泊まりでサウナだ!

室内は薄暗い。建物に入ると目の前にフロントがあり、そのまま休みどころになっていた。

金額を払い建物に入る。食堂も自販機もない、それでも昔からあるサウナなのか、建物に年季が入っていた。
フロント横のロッカールームで、室内着に着替え浴室に行く。

浴室内のロッカーには鍵はなく、銭湯のように脱いだ服をそのまま置いておくスタイルだった。このご時世になんて物騒な。

浴室にも年季が入っている。ところどころ汚れが目立つが、金額の割に浴槽の種類が多く、外気浴もできるので、案外穴場を発見したかもしれないと思っていた。私の他に、パッと見る感じ、10人前後のお客さんがいた。
体を洗いサウナに入る。ドライサウナだった。室内にはテレビが着いている。

サウナの中には男性が2人。どちらもガタイがいい男性だった。先程から、見る男性客は体ががっちりしていて、鍛えているのがわかる。もしかしたら、ここは筋トレと共にストイックな男性が集まる、ガチサウナなのかもしれない。

2セット目の外気浴中。私はあるものを見つけた。室内で、客が集まっているのだ。

もしかしたら、人が倒れているのかもしれない。
もしかしたら、スタッフを呼びに行かなければならないのかもしれない。

私はとりあえず様子を伺う為に、現場に近づいて行った。

が、人が倒れているから人だかりができていたのではない。

人が5.6人集まり他人の体をまさぐりあっている。

私の頭の中は、パニックになった。ハッテン場という言葉があるのは知っているし、都内のサウナが、そういう場所になるのも話には聞いたことがあった。
しかし、まさか自分がそこに出くわすなんて。

とりあえず思考をとめ、脱衣所に向かう。逃げなければ。現場で何人かと目が合ったはずだ。急いで逃げないと捕まるかもしれない。

私は急いで服を着替え、髪も乾かさずにフロントに向かいチェックアウトした。

スーツ姿で髪がびしょびしょ。そのまま終電に飛び乗った。寒いし、最悪だ。恐らくここまで来れば大丈夫だろう。

私は親しい友人たちにLINEをした。

『今、サウナ行ったら男が交わっていた。』

友人Aはこう返す
『新たな扉が開きそうだったのにwww 楽しいかもよ?ww』

友人Bはこう返す
『最近、コロナで人が少ないから、そういうところでオフ会とかあるみたいだよ。押さえつけられなくてよかったね。』

どちらに転んでもあるのは死。
快楽の意味でも、生命維持の意味でも、私は知らないうちち天国のドアを叩いていた。

私は今年で31歳になる。
初めてハッテン場というものを見た。サウナの名前を検索してみたら「必ず出会える!」と一番最初に書いてあるほど、有名だった場所らしい。
本当に気をつけなければならない。

しかし、今年を思い返してみても、嫌な思い出はこれくらいだった。
今年サウナを通して、私は初めての土地に多く行った。これがなければ恐らく一生降りることの無い場所。
普段使う駅の新たな魅力も見つけた。美味しいラーメン屋さん。美味しい焼き鳥屋さん、美味しいもつ焼き屋さん。

新しい人や、様々なものを見た。

おしりに興味を持ったり、

おじいちゃんのことを考えたり。

サウナというひとつのものを通して、様々な人間味や、自分の中に見つけた考え方。

サウナはいつだって、可能性に満ちている。

来年も、新しいサウナ、新しい土地、新しい人に出会う。
天国へ続くドアではなく、引き続き可能性のドアを叩いていきたい。

それでは皆様、良いお年を。

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