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酔いどれ雑記 129 カサブランカ


もうすぐ母の日ですが、私は機能不全家族育ちにしては珍しく、母の日/父の日を嫌だとは思いません。好きでもありませんが、他の興味のないイベントと同列です(決して強がりではありません)。まぁ、私は母がもう亡くなっているし、比較的若い頃から親とは住んでいないのでそう思うだけなのかも知れませんが......。

しかし、母は母の日の前後に亡くなり、現に今年の命日は母の日......。なのである意味では期せずして「母の日ギフト」などという言葉を見ると「ああ、もうすぐ母の命日か......」と思うようになりました。

母の日のプレゼントを母に要求(暗に要求も含め)されたことは多分一度もありません。けれどプレゼントをあげたことがあります。まだ妹が結婚する前、私が一人暮らしをしていた頃でしょうか。母はそれを父へのマウントの材料に使うんですよね......自分の方が子供たちに思われているんだ!と。父の日にもプレゼントをしたことがありますが、そうすると母が「お父さんにもあげてるのか......」と悔しそうな顔をするのみならず、怒りをあらわにして父とケンカするなんてこともあったので面倒なことこの上ありませんでした。私はそれから10数年ほぼ彼らとは縁を切った状態になりました(もちろん、プレゼント云々は関係ない)。

父はひねくれ者なので私や妹が誕生日やイベントで「はい、これ、お父さんに」とプレゼントの包みを差し出すと、本当は何のことか分かっているくせに「何よこれ?」と訊くのです。妹は「んもぅ!父の日の!」などとうんざりした声を上げるのですが父は「ああ、でもどうせ大したものじゃないんだろ?」などと平気で言うのです。実際中身が「大したもの」か父の気に入るものかどうかはともかく。素直に「有難う」と言えない難儀な人で困ってしまいます。

死ぬまでの数年間、母は何故か(?)カサブランカを育てていたそうです。母は花などに興味ないように見えたのですが......。カサブランカを棺に入れると父は母が亡くなる直前に言っていましたが、カサブランカが咲くまで生きていることは叶いませんでした。花屋に行けば容易に手に入ったのでしょうけれども、棺に入れたのは赤と白のカーネーションとなってしまいました。

富山の球根農家から購入した福袋に、カサブランカの球根が1つ入っていました。白ではなくて黄色い、コンカドールという品種ですが。わたくし、百合を育てるのは初めてでして......なかなか芽が出てこなくてこれは土の中で腐ってしまったかもと思っていましたが、鉢の隅っこから顔を出して、どうやら無事に育っているようです(ヘッダー画像参照)。

お母さん、あなたの命日までにはカサブランカの花を見ることが出来ません。お母さんの好きなのは白いやつ!黄色じゃないよという声すら聞こえてきそうですが、勘弁してください。「悪い虫」が付かないように、毎日ちゃんと見て、お水もあげていますから。

お母さん、あなたを憎み切れないのはあなたがとび切り不幸な一人の女だと思っているからです。それがたまたま私の母だった。でも私はあなたのようにはなりたくないのです。この複雑な思いは一生、私に付きまとうのでしょうーーそういえばカサブランカの薫りを私は間近でかいだことがありません......どうか咲いてほしい、華やかに。薫ってくれ、たった数日でも。