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引きこもりが「初恋」観て若者の眩しさとヤクザのカワいさに泣いた話

※映画「初恋」のネタバレがあります。

映画「初恋」公式サイト→ https://hatsukoi-movie.jp

大学の春休みに入ってから1ヶ月ほど、コロナ騒動と個人的な不安症によって、10時ごろに起きご飯食べてまた寝る、というだけの生活を送っていましたところ、ハンパなく気疲れして家で何も出来なくなりました。

集中力が大幅にダウンし、思考がまとまらず、映画も観られない。本も読めない。むやみやたらに人が怖い。家族と喋るのも難しい。自分が何をしたいのか、何が好きなのかもわからない。起きたはいいけど夜になっちゃった、今日は寝よう。

そんな生活が何週間も繰り返されました。これはヤバいです。どうにか無理くりにでも元気を出さないと、と思いました。

なので、人の少ない平日の夜を見計らって、「初恋」を観てきました。

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公式予告編↓

https://youtu.be/sVcjhOOc8GI

気疲れする前に予告編を見て「絶対観なければ!!」と息巻いていた作品の中の一つで、かつ「殺し屋イチ」(2001)や「クローズZEROシリーズ」(2007)など、大好きな作品を作り続ける三池崇史監督の最新作。

予告編を見た時に、内野聖陽さんが刀の自重に任せて鞘を抜くシーンを見た時に感じた「エッ・・・好き・・・」と言う気持ちと、血みどろベッキーやヤクザたちが暴れ回る映像と「初恋」というタイトルのギャップに感じた底知れないワクワクを思い出し、「これなら今でも観れるかも」とやっとこさ劇場に向かいました。

観た結果

サーーーーーーーーーーーイコーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

「初恋」サイコーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!サイコーーー!!!!!!三池崇史監督サイコーーーーー!!!!!!!!!!!

そうです。めちゃくちゃ楽しかったです。最高でした。観た後、泣きながら自転車を漕いで家に帰り、そのテンションのままnoteのアカウントを作り、およそ1ヶ月ぶりに文を書き殴っています。「初恋」のおかげで思い出せました。私はかわいそうでカワイイヤクザが出てくる映画が大好きだし、劇中でどんなに酷いことが起こっても、舞台となる社会がどんなにドライな現実を抱えていても、ユーモアと可愛げを忘れずに詰め込んだ三池崇史作品が大好きだということを。

この後に「どこがそんなに良かったのか」を書きたいと思いますが、なにぶん興奮冷めやらぬまま書いているので走り書きになっています。

※劇中のネタバレがあります。

本ッ当に三池崇史監督ありがとう。観たかった三池作品が観られた気がします。

もう、全部よかったんだけど、抜きん出てるのはやはりキャラ1人1人の愛しさでした。キャラの愛しさ、それはつまり脚本の凄さ。群像劇でありラブストーリーであるこの作品の中で、少ないシーンで多くのキャラに人物的な深みを与える脚本のえげつなさ。クスッと笑える揚げ足取り、会話のかわいらしさ。

主人公、ヒロイン、ヤクザ側は元より、易者(ベンガルさん!)や酔っぱらいの看護師さんまで、セリフのあるキャラたちの造形が妙にリアルで、かわいらしい。けど一見笑えるような造形すらも、キャラの立場や背景を窺わせる演出になってるところが本当にすごい。

主人公とヒロインのあまりの眩しさ

まず主人公レオとヒロインのユリ。なんで引きこもりのオタクが泣きながら文を書いているかといえば、劇中で一生懸命に人生を歩んでいくこの2人があまりにも眩し過ぎたからです。

なんの目的もなく、成り行きで人生を送ってきたレオ。父親という絶対的な力に支配され自分を失ったまま生きるユリ。2人が出会って、巻き込まれたバイオレンスの中で命のやりとりをして、「生きること」にやっと必死に向き合うようになる。レオは本気でボクシングを再開する。ユリは保護施設の中で麻薬の離脱症状と戦う。

2人が2人、孤独なもの同士が互いに支え合いながら、もう一度自分自身と相対し、新しい人生と戦い始めて、そしてあの静かなラストシーンを迎える。

こんなにも幸せになってほしい若者の物語があるか!!!!こんなにも清らかでまっすぐすぎる、三池監督から若者へのメッセージ。前述の通りグダグダな生活を送っていた身にとってそれは致命的で、迷わず私の涙腺をぶち抜きました。ホント、10時間ベッドにいるような生活変えなきゃいけんのよ。わかってるのよ。わかっては・・・。

いや、みんな好きだと思いますが、やっぱり電車内のイヤホン半分こシーンにあの2人の物語の美しさが詰まっている気がします。クソ父親のブリーフ一丁の幻覚を怖がりながらも、それを笑えるものに(沖縄民謡を聞くと何故か父親の幻覚がカチャーシーを踊り出す)して、泣き笑いしながら頑張っていく姿に、笑いながら号泣していました。

「なんか面白いことになってんのか?」「怖いけど、面白いのか?」「面白いけど、怖いのか?」「見てみてえな、薬はやれないけど」

怖がりながらも笑っちゃうユリの手を握るレオの朴訥さ、誠実さがそのセリフに溢れています。むちゃくちゃイイヤツじゃん。なんだよ・・・(?)2人とも愛しすぎる。

中毒症状を乗り切って覚醒剤を車外にばら撒くシーンは、バイオレンスとの決別。シャワーで血を洗い流すのは、全てのトラウマとの決別。どちらも今までの世界から切り離され、抗争から2人だけ生き残ってこれからの人生を生きるために前を向くシーンでした。最初のユリの寝転がってる姿も、幻覚を見てる姿も悲劇的になり過ぎず普通に小汚くて最高でした。三池監督の「さらばバイオレンス」という言葉が染みる・・・。あんなにバイオレンスを描きながらそんなことを言ってしまう三池監督が好きです。

かわいそうなヤクザの底知れないカワイさ 悲しさ

まっさらな終わり方をする2人と対照的に、かわいそうにムッチャクチャでグッチャグチャな終わり方をするヤクザサイド。全編通して描かれる、厳しくも清らかなカタギの世界とヤクザの世界のこの大きすぎるギャップが、この映画を最高たらしめていると思います。

戦後、高倉健作品の時代から何度も描かれてきたヤクザの世界からの任侠道の衰退。それに加えて平成の暴対法成立以後、三池崇史作品でも描かれてきた、どんどんと規模を縮小して海外マフィアとの共存を図らなければ生きていけない、ヤクザという文化自体の衰退。その筋の方の本当の現状はわからないんですが、映画の中ではその衰退こそヤクザの魅力、代名詞として描かれてきたように感じます。

「初恋」は個人的に大好きな「かわいそうなヤクザ映画」と呼んでいるヤクザがかわいそうな目にあう(そのまま)映画の一つです。

そんな映画では大体、その二つの衰退が大きく関わってきます。滅びゆくものに憧れるのと同じでしょうか、強くて怖いはずのヤクザがバカっぽい一面を見せたり、悲しんだり、報いを受けるように酷い死に方をする映画が大好きな私にはカタギの2人の眩しさと共にその逆説的なカワイさ悲しさがぶっ刺さりました。ヤクザが悲しい目にあう映画が好きな人は「初恋」ホントにオススメです!!

個人的に「殺し屋イチ」で金子が垣原に「アレ?俺、ついてこいって言ったっけ?」って言われるシーンとか、高山の「サラリーマンとか見てるとよ、俺にもああいう生き方あったんじゃねえかって思うのよ」ってセリフとか、かわいそうでカワイくてたまらんのですよね・・・。三池崇史監督・・・・。好きだ・・・。

ヤクザサイドのキャラたちは、単独で次の記事で書きたいのでここでは触れる程度にします。

予告編でサイコーの存在感を放っていたベッキーさん演じる復讐鬼ジュリ、染谷さん演じるバカでカワイイクソヤクザ加瀬、内野さん演じる絶滅危惧種の武闘派極道権藤、

その他にも、大森さん演じるクソ刑事大伴、藤岡麻美さん演じるチャイニーズマフィアながら仁侠を解する女殺し屋チアチー、もう出てくるみんな見た目も考え方もめいめいに筋が通っていて、生きるのに必死でカワイく、そして全員バイレンスから抜け出せずに悲惨な死に方をする様が愛しい。作中屈指の倫理観の無さを誇る加瀬&大伴コンビとジュリの生き方、死に方の振り切れっぷりは愛しさと笑いとでつなさで感情大渋滞でした。

でもその中で権藤のように忘れ去られた美学を必死に守り通した人には、せめて朝焼けの中で美しい最期を遂げさせる。

いや地方のホームセンターで斬り合いして死ぬなんて美学もへったくれもないんだけど、あの最期のシーンは「仁侠」という一時代を築いた美学への称賛と、今は亡き「極道」への憧れの表現だったと思います。そういう切ないのに弱いんですよ・・・・・今まで皆殺しシーンを楽しんでたのに・・・・落差が・・・。

どうでもいいんですけど無数のパトカーに追われるシーン、ずっと「炎のたからもの」が頭の中で流れてました。

あと好きなのが塩見三省演じるヤクザのボスが劇中ずっと2020年TOKYOオリンピックのピンバッジを付けてるところ。刑務所を出てから始終カッコ良すぎるスーツを着た権藤に代表される浮世離れした「極道」組織はもう無くなって、俗っぽい「会社」になっている細かい描写がたまらん。ヤクザサイドで抗争で動かなかったボスだけが生き残るのも皮肉っていうか・・・ドライよね・・・。

あと、権藤さんの強さを目の当たりにして「カッケェ・・・」ってなってたテル、

権藤さんがカッコ良すぎる事に何度かニヤっとして、テルの頭ハタいて「人材不足ですいません」って言って、権藤さんにスマホ教えてあげて、血塗れジュリに対しては完全に復讐の手伝いになってた市川、大好きです。昔ながらの親分子分のカワイイ感じ。

ていうか、感想文書いてるうちに完全に日を跨ぎました。どうしよう。全く文章がまとまらない。ここらへんで一度締めたいと思います。次はキャラにちゃんとフォーカスした記事が・・・書けるはず・・・多分。

最後に

三池崇史監督、そして制作スタッフの皆様ありがとうございました。「初恋」のおかげで元気出ました。生きるの頑張ろうと思います。




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