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思い出が花開く『プリザーブドフラワー「フレームアレンジ」』

はじめに
地域ブランド『薩摩のさつま』の認証品を生み出す作り手の方を訪問し、商品が生まれた背景や風土をお届けするシリーズ。
今回お話を伺ったのは、『プリザーブドフラワー「フレームアレンジ」』を作る有限会社南原農園 代表取締役社長南原 武博さんです。

瑞々しい姿を残すプリザーブドフラワーという技術。その技は、思い出という唯一無二のストーリーを色褪せることなく語り継ぐ技術に昇華されていました。
誰かにとって大事なことを残す。それは未来の話にも通じるものがあるように感じます。地域に、子どもたちへ遺したいのは、どんな花なのか…。



聞き手:青嵜(以下省略)
さつま町で農園を営む”有限会社南原農園”さんの認証品『プリザーブドフラワー「フレームアレンジ」』。認証品のお話の前に、まず南原農園さんが普段されている事業の全体的なところからお話をお伺いしたいと思います。
プリザーブドフラワーにもあるように、農園では基本的に生花の栽培をされているのでしょうか?

南原 武博さん(以下省略)
花というよりも葉物の栽培が主体で、切り葉を中心に作ってます。
基本的には、結婚式等の冠婚葬祭関係やパーティー等の装飾に使うものが主ですね。

あとは、例えば5月だと、母の日の贈物でアレンジメント向けの商品用で葉物を作ったり、というのが今の主な動きになっています。

そうやってさつま町で生産したものを、北海道から沖縄まで全国の花の市場があるので、そこに出荷をしています。


主軸を担う事業は葉物の栽培なのですね。
認証品に関するお話になるのですが、プリザーブドフラワーにはどのように繋がっていったのでしょうか?

まず、そもそもプリザーブドフラワーというのは、植物の生の感触を残したまま生花とは違い長期保存ができる商品です。
たしか14、5年程前に世の中に認識され始めたもので、元々はヨーロッパから入ってきた技術なんです。

日本にはもともと生花の文化があるので、ヨーロッパから技術が入ってきた当初は、お花屋さんからではなくて、プリザーブドフラワー教室という形で習い事の世界で広がっていったのですよ。

お花屋さんからしてみると、花や植物の形が生の感触のままずっと残ってしまうので、あまり積極的な関わりは見られなかったのだけど、習い事教室の世界ではどんどん広がりを見せていて。

自分たちは、植物を栽培して提供してるというメーカーの位置付けだから、プリザーブドフラワーの技術が世の中に出てきたということは、やっぱりメーカーとして取り組むべきじゃないか、という考えで、プリザーブドフラワーに携わることにしました。

例えば、昔作っていたジャスミンという白い花があるのですが、これはよく結婚式のブーケに使われる花なのです。

でも、花が咲くタイミングは大安日に合わせてくれる訳ではないので、咲く日に必ずしも結婚式があるとも限らない。

そうなると結局余らせてしまうので、それを捨てることになってしまうのですが、それをプリザーブドフラワーとして加工に回せば、日程的なタイミングに左右されることもなく出荷ができるということがあって、10年くらい前から始めたんです。

その後、いろんな商品を作っていってたんですけど、胡蝶蘭や桜の花びら、ブルメリアやカブランカという花は、ほぼうちでしか作られていないので、うちの特徴的な商品と言えますね。

基本的にはこういったプリザーブドフラワーを製品として販売するのではなくて、プリザーブドフラワー教室の講師の方が使うための素材として、問屋さんやネット販売の店舗等に卸したり、講師の方に直接お送りしたりしています。

プリザーブドフラワーを触らせていただきましたが、びっくりするくらい質感は生花そのものですね。どうして枯れないのですか?

植物が瑞々しいのは、中に水分があるからですよね?
その水分を1回抜いて、水の代わりに植物の中にアルコール等の特殊な液体を入れることで、肌触りは生の状態に近いまま、枯れずに瑞々しい状態を保つことができるのです。


さらに、今はその生花の形を留めておくことができる技術で、新しい需要が高まっているともお聞きしましたが。

そうですね。
特にコロナ禍に需要が伸びたことなのですが、結婚式や記念のイベント等が出来ない中で、記念になるものを形に残したいというニーズから、例えば、プロポーズで贈った花束をプリザーブドフラワーにして永遠に残したいといったご注文をいただくことが増えました。

ただ、誤解がないようにお話したいのは、うちはあくまでも葉物の生産が1番の主体であって、プリザーブドフラワーは会社全体の10分の1くらいという状態ではあります。

なので、今は生産事業の別部門という形で動いているので、今後は、そういった加工依頼にも力を入れていきたいと思っています。

思い出の花が、額等に入って瑞々しいままの形で残るなんて、すごくロマンティックですね。他にも少し見せていただきましたが、四つ葉のクローバーのプリザーブドフラワーも、とても夢がありますよね。

例えばクローバーや桜、ハイビスカスもそうですけど、そういう素材っていうのは、生花として切ったそばからすぐに枯れていくんですよ。

ですから、僕がそのときに思ったのは、結局、プリザーブドフラワーといっても素材が大事なので、やっぱり生のものが良くないと加工も良くならないということです。

そうなると、収穫する場所の近くに加工場がある必要があるので、地元で生産した植物をそのまま加工して販売することになれば、素材から全てを地域内で行うことができるので地域貢献にも繋がるかなと思っています。

葉物の栽培するビニールハウスの温度管理で火を焚く際、
その燃料には建物の廃材を集め活用している。

そのプリザーブドフラワーですが、普段はアレンジメント等を作る方向けの素材として提供されていると伺いましたが、認証品はアレンジメントを登録されていますね。
これは、アレンジメントも南原農園さんで手掛けられているのですか?

そうです。うちで作っているアレンジメントです。
普段は素材として基本的には卸しているのですが、アレンジメントは、例えば、退職のときの記念品やお祝いごとに作ってくださいっていうご依頼があれば、それを受けて作る受注生産ですね。


アレンジメントには色々な花が入っていますが、花であれば、プリザーブドフラワーに加工できるものなのでしょうか?

花であれば何でもプリダウドフラワーにできるわけじゃないんですよ。
できるもの、できないものがあるんです。

比較的ドライフラワーにできるものは作りやすくて、例えば、バラとかアジサイは簡単にできるんですよね。

ただ、それだと素材に限りがあるので、魅力的なアレンジメントを作るために、いろんな素材のプリザーブドフラワーに挑戦しています。

例えば、チューリップのプリザーブドフラワーはうちでしかできないんですよ。

普通にプリザーブドフラワーの加工をすると、花びらのところが水袋れの豆みたいになっちゃって上手くいかないんですけど、それを、うち独自の技術で出来るようにしたんです。

あとは、桜の花びらのプリザーブドフラワーもそうですね。

桜の花びらのプリザーブドフラワー。まるで散りたてのよう。

桜の花びらのプリザーブドフラワーも触らせていただきましたが、加工しているとは思えない程の手触りでびっくりしました。

春に生の桜が散った花びら、そのものですね。
これは本当にプリザーブドフラワーですか?と疑いたくなる程です。

この加工技術はすごいですね。

特に、記念の花をプリザーブドフラワーにしてほしいという依頼をいただくときに、素材が既にボロボロだったり、加工に適さない種類の植物も来るわけですけど、でも、お客さんはそれを加工して欲しいわけですよね。
記念の、永遠に残したい大事な花な訳ですから。

ですから、その場合はお客さまにもご理解はいただいた上で、でも、何とかそれをプリザーブドフラワーにしたい、という想いで挑戦する訳です。

そうすると、おのずと加工技術もどんどん上がっていくんですよね。
できるものが増えていくというか。

加工できるものが増えることで、アレンジメントにも使える素材の種類が増えて、より豊かな表現のアレンジメントにできる訳ですね。

大事な花とその背景にある大事なストーリーをどちらも美しい形で残す、という点でも、誰かの想いを未来に繋げる技術のように勝手ながら感じました。

その未来へと繋げる想いについてもお聞きします。

薩摩のさつまには次世代の支援といった未来へ向けた取り組みも含まれています。その"未来"という今後に対して、さつま町や子どもたちがどうなってほしいといった想いはありますか?

そうですね...やっぱりリーダーが増えてほしいと思いますね。
さつま町にリーダーをどう作っていくかというのが課題かなと思います。

組織の長や旗振りのような大きいリーダーも必要だけど、小さいリーダーも絶対必要なわけで。
それぞれがリーダーになればいいと思うんです。


組織や集まりの規模ではなくて、自分事として主体性をもった行動ができて、良い意味で人を巻き込める人、という意味ですね。

例えば、薩摩のさつまの実践型セミナーもすごく良い話をしているのだから、認証事業者さんだけでなくて、協議会に関わる各組織の職員で特に若手は必ず参加するとか、そういったことは必要かなと思います。

それでレポートを提出してもらって組織で共有して、考え方を広めて、担い手を増やす仕組みを考えるのが、僕はリーダーの役割だと思っています。

若手もどんどん吸い上げていかないといけないと思うんですよね。

それに、トップに立つリーダーにおいても「おい、こっちに行くぞ」というのはこれからの時代はなかなか難しくて、どちらかというと、周りを盛り上げながらまとめて導いていくようなリーダーが必要な時代なのかなと思います。

リーダーのあり方と、大きいリーダーと小さいリーダーの考え方はとても大事ですね。

とくに今の時代は、共創という言葉もあるように、それぞれが共通の目的と想いを持って物事に取り組むときに、一人のリーダーだけが物事を動かすのではなくて、小さくても主体性を持った方々の集まりであることが大事だと思います。

そう考えると、大きいリーダーが一人いる地域よりも、小さいリーダーが沢山いる地域の方が、目的も課題も多様化する社会において、スピード感をもって物事を進めやすいかもしれませんね。

その、小さいリーダーを地域内で育てることは、次の10年に繋がるとても大事なことだと思います。

あと、大きいことも大事だけど、自分はやっぱり、小さいコミュニティをある意味1番大事にしています。

例えば、住んでいる地域では、毎年12月にグラウンドゴルフ大会をするんですよ。
だいたい150~200人くらい来てくれるんですけど、中学生以下の参加者には、地域のお菓子屋さんのロールケーキをあげたりしてね。

そういうの地域の結び付きをすごく大事にしたいという想いがあります。

そういったふるさとの意識を持てるのは、12歳までの過ごし方が特に影響すると僕は思っているんです。

他の事業者さんを取材させていただいた際も、幼少期に、地域に対して心に残ってる出来事があると、その地域の愛着に繋がるかもしれない、という話がありました。

その思い出の1つは、南原さんがおっしゃったように、地域に親でも親戚でもないけど、自分事として子どものことを気にかけてくれる大人が自然といて、声を掛けてくれたり、良くしてくれていたことがあったそうです。

その思い出があるから、自分も、自分たちの子どもの世代にその輪を繋げたいと。

お話を伺いながら、そのインタビューを思い出していたのですが、小学校までの思い出がとても大きいというお話は、改めて次世代にたすきを繋げることを考える上で、とても参考になります。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。


※取材/撮影:青嵜 直樹(さつま町地域プロジェクトディレクター)


◆◆◆ 認証品のご紹介 ◆◆◆

有限会社 南原農園『プリザーブドフラワー「フレームアレンジ」』

1989年にさつま町で創業し、主にブライダル向けの切葉生産を行ってきた南原農園が、「生花の供給過多による廃棄を少しでも減らしたい」という想いで始められ、15年を迎えたプリザーブド事業。
試行錯誤を繰り返しながら技術を確立し、現在では、お客様がプレゼントなどで受け取った生花にプリザーブド加工を施してお返しする ”加工依頼” や、さつま町の ”エール便” の贈呈品にもプリザーブドフラワーのアレンジが採用された、確かな技術と美しさがなせる逸品です。


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