見出し画像

全国水族館の旅④小笠原水産センター小さな水族館

東洋のガラパゴス、小笠原諸島。東京から南方に約1000 km離れた亜熱帯の離島は、まさに貴重な固有種の宝庫。小笠原でしか会えない生き物がたくさんいるのです。念願の来島を果たし、奇跡の島々の生物多様性を肌で感じました。生き物好き憧れの地・小笠原にて訪れた水族館を紹介します。


東洋のガラパゴス! 不思議な生き物たちとの出会いを楽しもう!!

小笠原諸島は、自然環境そのものが壮大な天然の水族館であり自然博物館! 世界中でここにしか棲んでいない生物がたくさんいます。生き物との出会いの場、学びの場は島の至るところにあります。
小笠原水産センターの水族館を含めて、生き物たちとの出会いをいっぱい楽しみましょう。

東京港区の竹芝港から船で進むこと24時間。航海の途中では、船上からクジラ(おそらくマッコウクジラ)を見ることができました。

地球史において、小笠原諸島は一度も他の島や大陸とつながったことがありません。ですので、小笠原には固有種が数多く生息しているのです。
固有種の他にも、クジラやイルカが周辺海域で見られます。陸と海、それぞれの環境で神秘的な生物たちと邂逅できるのです。

水族館だけでなく、大自然の中でたくさんの生き物と会いましょう。こちらは母島で会ったハハジマメグロ。小笠原の固有種です!
ガイドさんと一緒に行くナイトツアーもオススメです。父島のコペペ海岸では、ムラサキオカヤドカリを発見。主に亜熱帯地方で見られる天然記念物です。

小笠原の旅行では、ダイビングにホエールウォッチングなど様々なレジャーをお考えだと思います。その合間に、水産センターの水族館、小笠原ビジターセンター、小笠原世界遺産センターを訪れて、島々の生命と環境について学びましょう。どの施設も入館無料なうえに、空き時間で手軽に観覧できます。
固有の自然環境を知ることで、小笠原で過ごす時間がさらに楽しくなります!

小笠原ビジターセンターには野生動物の研究資料、標本展示などがあります。こちらは固有亜種のアカガシラカラスバト。とても希少な鳥であり、現在も保護活動が行われています。
小笠原世界遺産センターでは、固有種のカタツムリや昆虫など多くの希少生物の保全活動が行われています。環境省の施設ですので、インキュベーターなどの研究設備が整っています。

遊んで学べる! 海辺の暖かな水族館

激レア固有種の展示と水産施設ならではの学び

父島の二見港から5分ほど歩けば、小笠原水産センターに着きます。その奥にあるのが水族館です。

水産センターは漁業を支援する水産試験施設であり、附属の水族館では小笠原諸島に生息している水棲生物をメインに展示しています。小さくても、とっても学びの多い展示施設です。

駐車場の近くには、アオウミガメやネムリブカの泳ぐ屋外水槽があります。自転車で来た場合は、空いているスペースに停めましょう。

観察飼育棟に入ると、イタチザメの顎がお出迎え。ここが亜熱帯の海ということを実感させてくれます。ダイバーがサメに襲われた事例はほとんどないそうですが、マリンレジャーの際にはガイドさんの指示をしっかり守ろうと思いました。

展示施設に入って、まず目を引くのはイタチザメの大きな顎。小笠原では、体重500 kg以上もあるイタチザメが捕獲されたことがあります。海の中で会ったら、とても太刀打ちできそうにありませんね。

そして、生き物好きにとってお目当てなのは、小笠原の固有種! 一般の観光客が水域の固有種に出会うのは難しいため、その美しい姿を本館でしっかりと見ておきましょう。

小笠原の固有種オガサワラヨシノボリ。オスたちはきれいに婚姻色が出ていて、クールで美しいです。
なんとテナガエビまで固有種がいます! こちらはオガサワラコテナガエビ。小笠原では他にも、固有甲殻類オガサワラヌマエビが生息しています。

大きな魚介類やクラゲの展示もあり、海の側の水族館で見るからこそ特別感があります。水槽の中の生き物たちを見ながら、小笠原の海の中をイメージしてください。

ミズクラゲの展示。丸みのある水槽が印象的です。
大きな水槽が複数あり、近海での魚たちが展示されています。ひょっとしたら、滞在中に居酒屋で食べた魚もいるかもしれませんね(笑)。

小笠原では漁業が盛んな、水産センターは周辺海域の調査を実施しています。その調査作業の内容を学べるのは、水産試験施設の水族館ならではだと思います。稚魚の採取にプランクトンネットが使われているとは驚きです。

水産センターの調査作業の紹介。プロのお仕事が学べる展示は大好物です。
採取調査によって得られた稚魚の液浸標本。深海魚の稚魚が採れるのはすごいですね。

遊び心いっぱい! 魚の歯をきれいに磨こう!!

水族展示の中にはユニークかつユーモラスな工夫が多く、いろいろな要素で楽しませてくれます。なにげないところにスタッフさんの遊びがあり、来館者は心からほっこりすることでしょう。

水槽の中にレギオン(ガメラシリーズの怪獣)! 遊び心が感じられて楽しいです。ちなみにガメラもいました(笑)。

特筆すべきは、特殊な体験型の展示。なんと魚の歯磨きができます。

アカハタ(現地の呼び名はアカバ)は、棒状のものを近づけると寄ってくる性質があります。口内の歯をブラシで磨いても、嫌がる素振りを見せません。
可愛い魚を歯磨きしてあげるなんて、ある意味イルカとの触れ合いより貴重かもしれません。そっと歯ブラシを近づけて、優しく磨いてあげましょう。

アカハタ(現地名アカバ)の歯磨きの手順。こういった体験展示は、日本どころか世界でも少ないのではないでしょうか。
いざ、歯磨きに挑戦。この子はなかなか筆者に心を開いてくれませんでした(笑)。

そして、館内のポスター展示にも、楽しませてくれる要素がたくさん! ネズミフグの針の数を数えたり、耳石(内耳にある炭酸カルシウムの結晶からなる組織)からアカバの年齢を調べたり、学術と遊びの融合した展示内容に見入ってしまいます。

ネズミフグの針を1本ずつ取り出して計上!ハリセンボンの仲間ですが、さすがに千本はなかったようです。
アカバの年齢の数え方を紹介。耳石の取り出し方まで教示してくれるのが嬉しいです。

年齢を問わず、誰でも楽しく魚と触れ合えるし、なおかつ小笠原の海の意外な事実にびっくりさせてくれる水族館。マリンレジャーで海の生き物たちと会うのがますます楽しみになりますね!

小笠原の海にダイオウイカ出現! 改めて見ると美しいですね。
アカバのプールには、子供のアオウミガメもいました。元気に育ってほしいですね。

小笠原水産センター小さな水族館 総合レビュー

所在地:東京都小笠原村父島清瀬(丁・番地なし)

強み:小笠原諸島の固有種の生体展示、魚への歯磨き体験など遊び心あふれる工夫とサービス、滞在中の空き時間で観覧できるコンパクトな施設

アクセス面:父島の二見港から歩いて10分足らずの距離。大村の宿に滞在している方なら、すぐにアクセスできると思います。滞在中の空き時間で、十分観覧できます。なお、前述しましたように、小笠原の父島までは東京から旅客船「おがさわら丸」で24時間かかります。できれば1週間以上の休暇を取って出かけましょう。

学びと遊びを両立させた展示内容が魅力です。魚の歯磨きなどの体験型展示だけでなく、展示の随所にユーモアがあって、楽しみながら現地の生物を学べます。もちろん、学術的にも見応えがあり、ポスター展示では水棲生物に関する多くの知識を得ることができます。
また、コンパクトな施設ゆえに、各自のレジャースケジュールに合わせて好きなときに来館できるのが嬉しいところ。小笠原での素敵な時間を、本館の思い出でさらに鮮やかに彩っていただきたいです。

水族館でウミガメを見た後は、ウミガメ料理を食べましょう! 写真の品は、人気店「あめのひ食堂」で食べたアオウミガメの刺身です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?