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【ショートショート】星屑ドライブ(または「だんだん高くなる星屑ドライブ」)

 小惑星ネハンの調査に飛び立った探査機オオワシが、思わぬ成果をあげた。
 回収した鉱物のサンプルから高密度のメモリ製造に役立つ物質が見つかったのだ。
 ネハン素子と呼ばれたその物質の1nm四方で扱える情報量は、一気にクエタバイト(テラバイトの約百万倍)単位にまで飛躍した。
 その技術を利用した記憶ドライブは「星屑ドライブ」と呼ばれた。
 星屑ドライブの開発に伴いデジタル技術も一気に進化。
 ついに人間の記憶や存在そのものをデジタル化することに成功した。
 デジタル空間にはアナログ現世の人間が移り住んだりデジタル人造人間が次々に産まれた。
 
 そしてある日…

 ひとりの少女が星屑ドライブを内蔵した自分のスマホが部屋の真ん中の空間に、プカプカと浮かんでいるのを見た。
 スマホはあっという間に窓を抜けて空高く飛び去った。
 そして、世界中で星屑ドライブを内蔵したデジタルデバイスが空を目指して飛んで行った。
 大規模データセンターではサーバ群の中から星屑ドライブの記憶素子だけが、天井や屋根を透過して飛び去った。
 無数のデジタル人間を乗せて…

 観測によると、地球を飛び立った星屑ドライブは故郷とも言える小惑星ネハンを目指していた。
 未知なる存在が何のために星屑ドライブを人類に与えたのかはわからない。

 星屑ドライブたちがネハンに到着するのは4年後の予定である。


#毎週ショートショートnote 参加作品です。
やっぱり410文字は無理でした(571文字)…
しかし、お読みいただけばわかるように本題である「だんだん高くなるドライブ」にもかかっているので、2テーマ分ということで、どうぞご了承ください。
😓

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