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【ショートショート】半分ろうそく 死神エイリアン編

 貨物宇宙船〈オオバヤシマル〉は致命的な危機に瀕していた。
 積荷は植民惑星で採掘された鉱石だったが、そこに潜んでいたエイリアンが船倉で覚醒。
 乗組員を襲いはじめたのだ。
 その獰猛さはまさに「死神」。
 さらに知能も備えていたエイリアンは、船の動力室を襲撃し、照明をはじめとする船内の電気を断ち切った。
 乗組員たちは船の中心部にある食堂に籠城し、なんとか襲撃を凌いでいた。
 そんな中、一人の乗組員が娯楽室にあったパーティー用のろうそくを手にして食堂にたどり着いた。そして、その間エイリアンに襲われなかったという事実が乗組員たちに驚きをもたらした。
「奴らは光を恐れるのか?」
 船長が聞いた。
「いや、フラッシュライトを持っていた者は襲われました。どうやら燃焼するろうそくが発するわずかな炭素に忌避反応を示しているようです」
 炭素なら他のものを燃やしても発生する。だが安全性を重んじる船内に、長時間燃やせるものなど他になかった。頼みの綱は、娯楽室から持ち込んだわずかな数のろうそくのみ。
 船長は副長に命じて、動力室までもつだけのろうそくを与えて電源の復旧に向かわせた。電気さえ復旧すれば、武器庫のドアを開け敵を撃退出来るのだ。
 だが、副長が出発してから数時間経っても電気はつかない。
 途中でろうそくが消え、エイリアンに隙をつかれたか…
 ついに船長は、自らがろうそくを手にして動力室へ向かった。
 手にしたろうそくの火は、彼自身の命のようにはかなく揺れている。
 しかも背後からは、エイリアンが忍び寄ってくる気配も感じられた。
 死神め…なんとしても生き延びてやる!
 だが、動力室まであと少しというところで、ろうそくは燃え尽きようとした。
 もう少しだ!もう少しもってくれ!
 エイリアンは距離を詰めてくる…もうダメか…
 その時、通路の先に倒れた副長の姿が見えた。
 そのそばには、まだ半分残っているろうそくが転がっている。
 しめた!
 船長は副長の亡骸に駆け寄ると、半分のろうそくを拾い上げて火を移そうとした。
 落ち着け!消えてしまっては元も子もない!慎重に…慎重に…
 ついに燃え尽きかけた火が半分のろうそくに移り、光が大きく輝いた。
 やった!
 安堵した船長はろうそくを掲げて大きく安堵の吐息を漏らした。
 ふうううううう…

 あたりを闇が包み込み、恐ろしい力を秘めたカギ爪が彼に伸びてきた。
 意識を失う瞬間、船長は思った。

 こんな落語があったなあ…


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お題は「半分ろうそく」
まだ読んでませんが、落語の「死神」を元にした作品は他にもありそうですねえ…
😓

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