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【SFショートショート】デジタルバレンタイン またはAIラブトライアングル

 その時代、世界はAIによって回っていた。

 特に産業界は、三つの自律型AIによって合理的に制御されていた。
 そのうち一つの「A」には男性型パーソナリティが与えられ、後の二つ「B」「C」は女性型だった。
 なぜ、そうなったのかは紆余曲折を経ていたが、最終的にこれが最もバランスのいい状態だった。

 それが狂い始めたのは、ある年の2月……

 世界中の流通網が奇妙な現象によって、その用を成さなくなっていた。
 届くべきものが届かず、あり得ないものが届いたりしたのだ。
 調査委員会はすぐにその原因を突き止めた。

「わかりました! 全てはチョコレートが原因です!」
「チョコレート?」
「はい。チョコレートの製品や原料が、BとCの管轄エリアからAのエリアへと大量に流れています。他の流通はそのとばっちりで狂っているのです」
「まさか……バレンタインデーが近いから?」
「そのようです。どうやらBとCはAの歓心を買うためにこのような操作をしているようで……Aの方も影響で落ち着きを失っています。このままだと14日には世界中のロジスティックスが崩壊します!」
「なんとかしなければ!」

 対策はすぐさま打たれた。

 鍵はバレンタインデーに関わる日本のとある風習だった。
 その風習に基づき、世界中のチョコレート関連商品すべてにたった4文字の流通用コードが大きく記載された。
 これは功を奏し、冷静さを取り戻したAは異常な流通の流れを修復する動きを見せ始めた。

 かくして世界の産業界は救われた。
 成功の立役者となった4文字のコードとは……

「G I R I」

 だった。


たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「【デジタルバレンタイン】のお題で、【SFチックな】ショートショート」。
バレンタインデーといえば、Perfumeの「チョコレートディスコ」が定番でしたが、先日リリースされたAdoの新曲もいいですね。
バレンタインの歌なのかいまいち不明ですが。
😓

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