【ショートショート】続・蜘蛛の糸
地獄に落ちた罪人カンダダは、蜘蛛の命を助けたことがあるというただ一度の善行によって、お釈迦様から蜘蛛の糸で極楽浄土へ昇るチャンスを与えられました。
が、浅ましくもその糸を独り占めしようとしたため糸が切れ、再度地獄に落ちてしまったのでした。
「お釈迦様、今一度あのカンダダにチャンスを与えてやっていただけませんか?」
蜘蛛はお釈迦さまに懇願しました。
「命乞いかえ? カンダダは自らの浅ましさで再度地獄に落ちたのじゃ。あの男の性根がなおらぬ限り、何度やっても同じことじゃよ」
「でも、仏の顔も三度というではありませんか。二度地獄に落ちた者には、もう一度チャンスがあってもよいのでは」
「ならば、お前が自分で勝手にするがよい。無駄じゃと思うがの」
そう言ってお釈迦様は立ち去りました。
蜘蛛は早速糸を繰り出し、地獄のカンダダまで届かせました。
糸を伝って蜘蛛の声がカンダダの耳に入りました。
「さ、もう一度この糸を登っておいで。今度は糸ごと引っ張り上げるから誰も付いてこれぬよ」
これ幸いとカンダダは再度糸を登っていきました。
ようやく、極楽浄土に辿り着いたカンダダに、蜘蛛は言いました。
「よかったな。これというのも私がお釈迦様にお許しをいただいたお陰というもの。口利き料として、十万円ほどいただきましょうかね」
カンダダは顔をしかめました。
「十万は高過ぎらい! せいぜい五万くらいしか出せねえな」
「では、間を取って八万では?」
「間を取ったら七万五千だろうが」
そんなやりとりをしていた二人は、いつの間にか背後にお釈迦様が立っているのに気づきませんでした。
呆れたお釈迦様は、二人をひょいとつまみ上げると、まとめて蓮の間から地獄へ落としてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし……
たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「命乞いする蜘蛛」。
極楽浄土で円が通用するのかという問題については、国際通貨や為替レートに詳しい方のご意見をいただきたいと思います。
よろしくどうぞ。
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