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【長編SF小説】銀河皇帝のいない八月

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宇宙を支配する銀河帝国が地球に襲来。 軍団を率いる銀河皇帝は堅固なシールドに守られていたが、何故か弓道部員の女子高生、遠藤アサトが放った一本の矢により射殺されてしまう。 しかも〈…
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2022年5月の記事一覧

銀河皇帝のいない八月 ㉙

銀河皇帝のいない八月 ㉙

4. 反時力航法エンジン

「これほど足元のおぼつかない新皇帝も、帝国史上にそうはいないだろうな……」

 〈守護闘士宮〉の屋上から、玉座機の操作に悪戦苦闘する空里を遠目に見つめ、ミ=クニ・クアンタは言った。
 玉座機には短い四本の足が生え、主人の命令で赤子のような歩みを試しているところだった。

「あらゆる意味で、閣下のおっしゃる通りです」
 傍に立つ完全人間のリーダーが言った。
「何より彼女に

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銀河皇帝のいない八月 ㉚

銀河皇帝のいない八月 ㉚

5. スター・サブ

 空里たちはスター・コルベットで〈青砂〉ウォーステーションに帰還した。

「それが皇冠《クラウン》か?」
 シェンガが言った。
「そうよ。似合う?」
「ちょっと、トゲが痛々しいな。かぶってて辛くないのか?」
 ティプトリーも改めて空里の姿に目を細めた。
「なんか……イエスがかぶってた茨の冠みたいね」
「えー、やな感じ……」
 空里は顔をそらすと、スター・コルベットの搭乗口に立

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銀河皇帝のいない八月 ㉛

銀河皇帝のいない八月 ㉛

6. 包囲網突破

 銀河帝国宇宙軍の若き星威将軍エンザ=コウ・ラは旗艦ブリッジの司令席で身じろぎすると、吸引パイプを取り出し、深くメセビン・ガスを吸い込んだ。

「閣下……」
 旗艦の艦長でもある、コルーゴン将軍が声をかけてきた。
 三代にわたってラ家に仕えてきた軍人家系出身で、色黒の偉丈夫である。
「本艦は艦内時間の明日未明には第三惑星の軌道に到達します。しばらくは航海をお任せいただいても問題

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銀河皇帝のいない八月 ㉜

銀河皇帝のいない八月 ㉜

7. カプセルの中の幻想

 耐Gカプセルの中で重力に身体を押さえつけられながら、空里は出来るだけ心身をリラックスさせようと試みた。

 ネープの話では、反時力航法による飛行は約八時間で終わるとのことだった。その間、眠って過ごすことでも出来ればいいのだが、空里の意識はむしろ冴え冴えとしており、うたた寝に陥ることも出来そうにない。

 しかし、なんとか耐え抜かねば……

 そんなことを思っていると、

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