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【長編SF小説】銀河皇帝のいない八月

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宇宙を支配する銀河帝国が地球に襲来。 軍団を率いる銀河皇帝は堅固なシールドに守られていたが、何故か弓道部員の女子高生、遠藤アサトが放った一本の矢により射殺されてしまう。 しかも〈…
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2021年12月の記事一覧

銀河皇帝のいない八月 ⑮

銀河皇帝のいない八月 ⑮

7. 惑星〈鏡夢〉

 スター・ゲートの向こうは星の平原だった。

 空里は、もっとトンネルのような空間を通っていくのかと思っていたが、どういうわけか行手には地平線が見えていた。
 夜明けか、あるいは薄暮の平原を思わせる広々としたところを、スター・コルベットは疾走しているのだった。ただ地上の平原と違うのは、草花のかわりに無数の星々と色とりどりの星雲が咲き乱れ、それが無限に続いているように見えるとい

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銀河皇帝のいない八月 ⑯

銀河皇帝のいない八月 ⑯

8. エンザ=コウ・ラ

「逃げられた?」

 エンザ=コウ・ラは広い額に皺を寄せていらだたしさをあらわにした。
「機動衛兵は何分隊派遣したのか?」
「一分隊であります。あの程度の船を制圧するには十分な人員でありました」
「だが、そうではなかったわけだ……」
 エンザは立ち上がると広大な執務卓の前に立つ司令官に近づいた。

 ラ家の軍用コートに包まれた長身からは、青年と言っていい歳に似合わぬ老獪さ

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