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2023年 8月 短歌まとめ


連作のもの

Solitude

黒板の三角定規 わし座にも「角a」とあり 解を求むる

波音の近くまでペダルを漕いだら 帰り道のこと覚えてない

電線に止まった蝉の声 アスファルトにはしみ入らなくて、鬱

死んだ赤 商店街のサンゴ店みたいないろのマニキュアを塗る

口紅がやけに残ってさくらんぼ 人生そんなうまくいかない

黄色い断片

「酔ってます」カラカラ笑いしっかりと瓶ビール注ぐ白髪の女(ひと)

死にかけの伯父の顔は蓮の池覗いたじいちゃんみたいにやわい

かろやかなバロンポテトブルースが 誰かの誕生祝いになって

薄暗い夜に浮かんだ月はもう満ちはじめ私を置いていく

いろはすが末期の水になるようで 拒む人にも命を見たり

連作でないもの

「お電話ありがとうございます。」何も有難くなんてないけれども

嬉しくて鼻歌交じりに歩いたの もうお前とは友だちじゃない

長靴で踏んだ地面はいつもより やわからくって 水たまり踏む

突然の「どろり」きちゃった どうしよう「トイレで生理する」しかないか

先生の威厳や経歴無視しても ハゲが気になる 時代があった

忙しさ 言い訳にして筆取らず これじゃダメだこれじゃだめた


コラム

お盆は大好きな伯父に会いました。
どう見てももう、長くはなさそうです。

なんだか仏壇のじいちゃんみたいな顔つきで
強面のおんちゃんだと思ってたのに
やっぱり親子だなあなんて、
呑気に思いました。

私が物心つく頃に
祖父は亡くなっていたので
会った事実はあっても、
記憶にはありません。

ベッドの上で横たわる
おんちゃんを見ながら
じいちゃんに初めて会えたような
気持ちになれました。

ふしぎ、ありがとう。

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