見出し画像

2023年1月 短歌まとめ

連作

Come to the ocean

陽水も思わず詩にしたくなる吾が太平洋どどうどどうど

潮風をもろともしないウバメガシずっとここで見守っていて

西風を受けてゆらゆら水平線 浜は凪いでも沖がほたえる

碧さまで瞳にうつしてしまいたい小さな海は流るるままに

砂の上つけたあしあと見返した 22年は短く長い

6.18MHz

ある夜、彗星の如く現れてわたしの心臓奪っていった

ざぶざぶと鳴いてゆらめく六色のペンライトの海を泳ぐきみ

レンズ越しつめたく黒い雌雄の眼見つめられたら息ができない

かなしみをしあわせに変える魔法をどうか自分につかってください

死にたい夜、なみうちぎわにくればいい音にのまれてふたりでいこう

悪魔的十六歳

距離、時間、理性、まごころ、好き、嫌い どうでもいい強くだきしめて

悪魔的十六歳は最低で最高だったあなたがいたし

もうあまり思い出さなくなったのは死んでいないと知っているから

手を重ね ろくろを回してほしかったあなたが私を歪ませたから

あの春の白く尖った垂れネーム 何よりも好きな二文字だった

初恋じゃないけどあなたは初恋の匂いがしたな。だから、初恋。

誰に何を言われてもあなたしか好きじゃなかったシックスティーン

1組の後ろの窓際 微笑みが見たくていつも通っていたっけ

花柄のおくすりポーチに入れている第二ボタンが全然効かない

ワンルーム宮殿

豆乳の甘さ飲み干す22時 ファミリーユースと書いてはいるが

火曜日の惰性で見ているドラマには突飛なロマンス 馬鹿みたいだな

ワンルーム同居している白いいぬのぬいぐるみと目が合わない

9組のパンダの顔したダンボール壁にもたれて逆立ちしてる

この白い部屋が好きです。だからもう、ここから動けないんです。私。

ラヂオからこぼれる笑いに包まれて今夜も眠る 目が覚めるまで

※投稿は2月1日ですが、詠んだのは1月です。

連作でないもの

無題

兄さんが鳴らした電話に出ればまだ未成年だと思われていた

冷たさが愛しさに溶かされた町 声聞きたくてフラゲした朝

ごうごうと放射に迫るトンネルの光を追い越し故郷にまたね

ハイウェイの森は切り開いただけで共生なんてできやしないよ

ダンシングクイーンが無限ループで流れる部屋にて羽を広げる

もう二度と戻りたくない過去になる タイムマシンがなくてよかった

生活の積み重ねこそ人生 一年の計は毎日にあり

「大丈夫、元気だよ」の台詞を忘れ ト書きの[微笑む]無視して泣いた

煌々とかまえるラブホを車窓から見つめてひとり、死ねとつぶやく

「これからは日付が変わるまでに風呂入る」と毎日思ってはいる

うたの日投稿

「令和五年の抱負」
辛いなら脱兎の如く走ろうか 逃げるは恥だが私を生かす

「故郷」
耳馴染みのよい言葉にほっとする「そうながや」「いかんちや」「たまげた」

「自由詠」 
弦弾き紡がれたビルエバンスのピアノの園でわたしは眠る

「ハート」
傷つけてしまった言葉を死ぬまで覚えておこう痕が消えても

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?