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2023年2月 短歌まとめ

連作

パンプス

着るたびに襟の出し方わすれてる四年前のスキッパーシャツ

我は行く朝陽のぼりし冬の道 入学式より馴染んだスーツで

つま先の痛みが何を産むの「履きやすい」が取り柄のパンプスに問う

受付のバイトをしつついつしかのクソ上司のこともいちど呪う

そういえば建前だけの会話が得意だったねやさしさの外で

貸衣装屋の身勝手な振る舞い: 殿様商売に地域差はなし

卒業旅行

三つずつ串にささったみたらしのように過ごしてきたわたしたち

写真では可愛くても歩き姿がアレじゃあ着物が可哀想

天気雨 月のかたちで浮かぶから渡りたくなる 嘘と知っても

あのビルの「ぶつからないで」の点滅が真っ赤になった鼓動に重なる

よくあたる占い師「あなたは不倫する。だけど幸せになる。」 ……はにゃ?

吊り橋の三原色に照らされてあなたの街をあとにする夜

堂々と卒業したい清水の舞台から飛び降りるつもりで

ファンレター

着慣れない白に包まれてちいさく弾んだ声はまだ訛ってる

完璧な世界なんか要らない 髪の毛がなにいろでも美しい

素晴らしく清潔で艶っぽいきみのリリップキュアでつつんだくちびる

禁断の果実が喉を通らずに引っかかったまんまの低音

この冬も言いたいことがまとまらずレターセットだけが増えていく

世間から肩書ばかりつけられても きみはアイドル 私の星

アドベンチャーワールド201

この家のローズマリーの鉢を見て住もうと決めた十九だったし

アドベンチャーワールドよりもパンダいる名前をつけた「タオル」「カーテン」

住み慣れた白いアパート靴履けば もう他所になる シクラメンまで

泣き疲れ眠った真昼の床さえも貼り変えられる生まれ変われる

こっちゃんをフサフサなでる右手が さようならと振る右手に変わる

夜空には深爪みたいな月ぷかりあの部屋からもきっと見えない

連作でないもの

無題

これ以上TikTokでウケる曲ばかりつくって何になるんだ

空っぽの私を熱く満たしてよすぐに会える距離じゃなくなるし

夜ごはんどうしようかなワンホールいちごのケーキが食べたい気分

もし君が夢なら僕は横になりまぶたをきゅっとして待ちましょう
(ミウラユウガさんの上の句からつくりました)

早朝の目が覚めるような寒さの月額プラン、解約します

ホチキスで綴じた雑誌の解体が面倒で部屋にananを積む

苦しみの末に笑いを産む仕事 ネタを書くって可笑しい すごい

今日だって特に何も成し遂げてはないが魚をきれいに食べた

なぞり書き 私には向いてないみたい はみ出す 途切れる また叱られる

髪の毛に触れてみたいの 栗色に変えた気分をたしかめながら

うたの日投稿

「自由詠」
およそ八割がタンパク質…やっぱり素揚げで食べたい君の髪の毛 

「日本海」
海上はどんな風が吹きますか 鶴はいますか 舞っていますか 

「李」
子曰く「すもももももももものうち」 私は私、気づいてほしい 

「ラブ」
大縄跳びに入る瞬間みたい 今、今、今、愛はタイミング 

「英」
NHKラヂオで学ぶABC 伝えたくなる 言葉が実る

「でも」
「でも悪いところばかりじゃないの」なら、もう一生相談してくんな 

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