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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.06)森美術館 『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』


他の美術館に行ってきた!(Vol.06)


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森美術館 『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』
会期:2022年2月18日~年5月29日


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2022年3月31日(水)曇り。六本木の森美術館で開催されているChim↑Pom(チンポム)の展覧会に行ってきた。Chim↑Pomを知っている人に、この展覧会をおすすめするのは野暮ったい。必ず行くだろうし、もう行ったかもしれない。だから「チンポム」という言葉を聞いて、首を傾げた人にこの展覧会をおすすめしたい。そして、チンポムを知らない人こそ、楽しめる展覧会だろう。チンポムは2005年に6人のメンバーによって結成された。チンポムを一言で表すならば「リアクション」という言葉が思い浮かぶ。社会で起こる様々な出来事に、リアクションをする、という形で作品制作を行っている。だから、彼らの作品を見る時には、そのリアクションの対象である出来事に、自らがどの程度の距離や認識を持っているのか、という事も共に投げかけられている。広島に投下された原爆、東日本大震災、福島第一原子力発電所、コロナ禍。そんな多くの人々が共有している大きな出来事に、チンポムは美術という立場から、積極的にリアクションしていく。時にはその作品によって、多くの物議が醸される。チンポムのリアクションが、更なる他者からのリアクションを生む。その連鎖によって、出来事に新たな視座が生まれる。彼らの展覧会や行動には、そんなワクワクやドキドキ、期待感や好奇心を刺激する強烈なニオイが伴っている。しかし、今回は新作は含まれているが、主に回顧展という形の展覧会である。美術館という場所が持つ制約の煩わしさも察するに余りある。その強烈なニオイを発していたリアクションが、パッケージングされて並んでいる印象だった。チンポムを知らなかった人が、ここからチンポムの今までを知るというタイミングとしては最高だと思う。そもそも回顧展と銘うっているのだから、全く偽りない。でもそれ以上に、チンポムには大きく期待をしてしまう。もっともっと突き抜けてくれと願ってしまう。そんな風に思わせてくれるChim↑Pomをぜひ多くの人に知ってもらいたい。会期中に行われているプロジェクトも興味深い。

【☆8.0】(佐塚真啓)
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「西の風新聞」2022年4月21日(1646号)掲載

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