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国立奥多摩美術館館長の 他の美術館に行ってきた!(Vol.02) DIC川村記念美術館 『ミニマル/コンセプチュアル』

他の美術館に行ってきた!(Vol.02)

チケットミニマルコンセプチャル展ss

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DIC川村記念美術館
『ミニマル/コンセプチュアル』
会期:2021年10月9日~2022年1月10日
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2021年11月30日(火)曇り。
千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館に行ってきた。
ここは、印刷インキなどを扱う科学メーカーの「DIC株式会社」が
母体となり運営されている私立美術館である。
今回は、ミニマル/コンセプチュアルという
美術における大きなトピックを扱った企画展が行われていた。
ミニマルアートとコンセプチュアルアートという潮流は
1960年代に生まれたらしい。
そしてそれらを同時代的に紹介してきた
ドイツ・デュッセルドルフに拠点を持つ
フィッシャー夫妻のコレクションを中心に展覧会は構成されている。
ミニマルアートには、
丸、三角、四角、点、線、面などの、
物事を構成する最小限の要素をシンプルに用いた作品が多い。
正直、作品を前にして、あっけらかんとしたそっけなさを感じる事も多い。
しかしそれゆえに、ミニマルアートは様々な個人の思考を入れられる
「器」の様な機能を有していると感じる。
そんなミニマルアート作品は、
夜空の月を見てその形に思いを馳せる様に、
海辺で水平線を見て人間の存在を超えた大きな意図を感じる様に、
とりとめなく鑑賞すると良いと思う。
コンセプチュアルアートを見る時には、大工仕事などで使われる
「段取り8分、仕事2分」という言葉を思い出す。
物事を行う時、計画がちゃんと出来ていれば、
手を動かす作業は全体の2割程度の要素だ、という意味の言葉。
コンセプチュアルアートには、その極端な
「段取り10分、仕事はそのナリで」という言葉を思う。
理屈は練り込まれているが、
その理屈の表れとしての作品自体はそっけなかったりする。
鑑賞する時は、物自体を見るよりも
作者の思考を想像して追いかけてみると面白くなる。
今回は、1960-70年代そんな美術の潮流が、
様々な作家とフィッシャー夫妻によって形作られていく変遷を
なぞっていく展覧会だった。
だから作家と夫妻の間で交わされた手紙や関連資料も多かった。
観るというより、読むという要素が多く、
読んでいる途中で閉館の音楽が鳴りだした。
急いで最後まで走って観た。
時間に余裕をもって足を運ぶ事をおすすめする。
なによりもまず、ここの美術館のコレクションと
その見せ方がとっても素敵だ。
【☆8.0】(佐塚真啓)

「西の風新聞」2021年12月16日(1630号)掲載


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