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国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた!(Vol.20)-森美術館『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』

国立奥多摩美術館館長の
他の美術館に行ってきた!(Vol.20)
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森美術館
『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』
会期:2023年10月18日〜2024年3月31日
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2023年12月7日(木)晴れ。新宿区にある淀橋教会で行われるイベント設営の下見を12時から約束していた。なかなか都心に行く機会も無いので、そのついでに展覧会を見てから行こうということで、六本木の森美術館に向かった。電車の遅延などがあり、美術館についたのが10時半。美術館から教会までの移動に30分程かかるので、そう考えると、ほぼ1時間しか見れないのだが、それだけあれば見れるだろうと思い入館した。「エコロジー」をテーマに掲げ、国内外34名の作家の作品を集めた展覧会だ。最近では、エコという言葉はSDGsやサステナブルなどと共に日常生活の中で聞かない日はないくらい日常に浸透している。地球にやさしい持続可能な社会をつくっていこう、という意味で使われているように思う。昨今の世界中で起こっている災害は、自然界の均衡を著しく崩してきたここ100年ほどの人間の活動に起因する。そんな「早い・安い・便利」を追い求めてきた人間と自然界の関係についての展覧会だ。そもそも、なににおいても物を作るという事はとても罪深い。恣意的に材料を手にし、それをその時その人が必要な形に変える。必要がなくなればゴミ箱に入れて、さようなら。私たちの身の周りは、一時の必要のためだけに作られ捨てられていく物で囲まれている。その最たるものが日々いたる所で行われているイベントだ。イベントのためだけに作られた物は、それが終わると必要がなくなり処分される。いってしまえば美術館での展覧会も一時のイベントだ。展覧会のために壁をつくり、台をつくり、掲示物をつくる。1回の展覧会を行うために、どれほどの負荷をこの地球にかけていることか。今回の展覧会では、その辺りの事も考慮されていて、前回使った壁の材料で再び壁をつくるなどの形で会場が構成され問題提起が成されていた。現在、私も細々とイベント設営のようなことを仕事としている。この展覧会を足早に見終わったあと、複雑な気持ちで約束していた教会に向かった。美術には「無理・無駄・無意味」な所に価値が生まれるという面白さもある。社会は良くも悪くも、そんなありようが存在しにくい方向に進んでいるように思う。(佐塚)
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「西の風新聞」第1735号 掲載
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