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「フリーペーパー作りからまちづくりへ」石川伸一さん(1992年卒)

第11回目は、1992年に札幌大学経営学部経営学科(当時)を卒業された石川伸一さんを取材。国家公務員として働く傍ら、まちづくり編集者/メディア・プランナー/コミュニケーション・デザイナーとして「まちで人がつながりやすい仕組みを考える」という石川さんに、大学時代の思い出やお仕事についてインタビューしました。

札幌大学について


札幌大学在学中の思い出

Q:どんな学生でしたか?とくに心に残っていることなどがあれば教えてください。

▲国家公務員として働きながら、さまざまなまちづくり活動に携わってこられた石川伸一さん

大学という別世界

▲サツダイ生だった頃の石川さん

大学には実家から通っていて、その距離感もあり、サツダイにいる間は別世界にいるようでした。講義のない時も図書館や談話室、自習室にいるのが好きで、雑談したりぼんやり考えごとをしたりしていました。大学は静かで広々としていて、気軽に長時間くつろげる場所でした。

イギリスのインディーズ音楽やアートが好きな文系学生だったので、本を読んだり、映画をみたり。また、クラブに行ったり、音楽を聴いたり、CDレンタル店の広報物に音楽のコラムを書くアルバイトをしたりもしていました。

熱中したフリーペーパー

▲サツダイ生の頃の石川さんが制作に携わったフリーペーパー

学内でのサークル活動には参加していませんでしたが、音楽雑誌を通じて知り合った仲間(同じ札幌市内の大学生4~5人)と一緒にフリーペーパーを作っていました。あまりはっきり記憶していませんが、1000部くらい印刷していたんじゃないかな?当時はインターネット印刷などない時代ですから、ワープロで作った原稿を印刷屋さんに頼んで版下にしてもらったりして。私はそこのライターとして、おすすめのCDを紹介する記事を書いていました。完成したフリーペーパーはレコード屋さんやカフェ等に置いてもらっていました。自己満足と言えばそれまでですが、自分の書いた原稿が印刷物になるということに大変感動したのを覚えています。

キャリアについて

Q:大学を卒業されてから現在までのご経歴や、現在のお仕事の具体的な内容を教えてください。

父親と同じ国家公務員の道へ

私の父は、いくつか民間企業での仕事を経験した後、国家公務員になり定年まで勤めました。その父のアドバイスもあり、また自分でも定年まで続けていけそうだなと思い、卒業後は(父とは職種は違いますが)裁判所事務官として就職し現在も働いています。総務や人事、会計のような仕事から、事件(民事・刑事・家事)を扱う部署(「事件部」と呼ばれます)で裁判に必要な事務手続きの仕事をすることもあります。転居を伴う異動もあり、これまで道内を3ヶ所ほど移り住んでいます。

「国家公務員は転勤があるから嫌」と敬遠する学生さんもいるかもしれません。しかし、見知らぬ土地に住み、そこで仕事や生活をするということは、人生にプラスなことが多いと感じます。そこには未知の楽しみがあります。「観光で行った」のと「住んだことがある」のとでは愛着が違います。私にとって転勤先は「第2のふるさと」のようで、時折懐かしくなり街をドライブすることもあります。

フリーペーパー作りからまちづくりへ

▲これまで作成したフリーペーパーの中からとくに思い出深いものを見せていただきました

就職してからもフリーペーパーを作る活動は続けていて、一番大きなプロジェクトだと「MAGNET」というフリーペーパーを2002年から2015年までほぼ隔月で発行していました。巻頭特集で毎回インタビューを入れ、アートやカルチャーをテーマに編集を行い、札幌市内のカフェや飲食店、美術館などで配布していました。

2011年、北大で教えていた渡辺保史さんと出会って一緒に函館特集号を発行したのをきっかけに「まちづくりって良いな」と思い始め、それからまちづくりの情報を発信したり、行政や大学の事業に参加したりするようになりました。「まちづくり」と言っても色々あるのですが、私は文化やコミュニケーションデザインに一番興味があります。

▲「コミュニケーションデザインとは、人と人とをつなげるには何があれば良いのかを考えること」と石川さん

「まちづくり」というと、都市計画とかアカデミックで大きなことのような感じがしていたのですが、渡辺さんのやり方はもっとソフトで、まず人が集まったら話しやすい雰囲気を作るというところから始めていました。今でいうファシリテーションということになるのだと思います。渡辺さんのイベントでは、最初に誰でもできるゲームを行い、そういった中から不特定多数の人たちが仲良くなれるような仕組みを作り、最終的にまちづくりの話にしていました。話しやすい環境作りからまちづくりにつなげていくというのが良いなと思いました。自分もこういう方向性ならできるかなと、渡辺さんと一緒に活動する中で感じ取っていました。

仕事で室蘭へ転勤になった際には、室蘭工業大学にカフェを作るプロジェクトに参加し、最初の基礎部分のアイデア出し、いわゆるグランドデザインをやらせてもらいました。そうしたら、今度はそのメンバーだった室蘭市の職員の方から、「室蘭市所有の場所で何か面白いことができないか」と相談を受けて市のまちづくりイベントを企画したり。転勤先でそれぞれ色々な人と出会い、その場その場でのまちづくりに参加させてもらうようになりました。今は室蘭を離れていますが、室蘭とのご縁は続いており、歴史的建築物等に現代アートを展示する「ムロラン・アートプロジェクト」の広報部にてフライヤーやパンフレットの編集長をしています。(2023年秋に開催予定)

夜の街すすきのを文化で盛り上げたい

▲今回のインタビューは、後述の「すすきの怪談」会場である東本願寺札幌別院内にて

最近では、「鴨々川ノスタルジア(略して鴨ノス)」に参加し、主にウェブづくりを担当しています。鴨ノスはイベントやガイド・ツアーなどを通じて、この地のお寺さんとつながりながら「すすきの」の歴史や文化を考えるまちづくり活動です。昨年まではコロナ禍ということもあり活動を停止していましたが、今年から再開することとなりました。

具体的には、9月2日(土)に東本願寺札幌別院内で「すすきの怪談」という怪談朗読イベントを企画しています(詳しくは以下TOPICSをご欄ください)。また「鴨ノス寺子屋」と題し、お寺で気軽に参加できる小さな勉強会を通年で開催していくという取り組みも企画中です。これらの活動を通じて、まち全体を元気にできればいいなと思っています。

▲「豊水小学校大典記念文庫」のワークショップの様子

「鴨ノス寺子屋」は勉強会としていますが、目的は勉強を通じて、人と人とのコミュニケーションを広げることにあります。年齢制限はとくに設けず、色々なカリキュラムを用意します。例えば医学についての話やコーヒー講座みたいなもの、体を使うものがあっても良いと思います。それをシリーズ化したり、単発で行ってみたり。仕事や学校以外の楽しみとして「鴨ノス寺子屋」を生活の一部に入れてもらえたら嬉しいですね。時には生徒と講師が逆転するようなことがあっても楽しいと思います。

札幌大学の後輩に向けたメッセージ

Q:札幌大学の後輩や同窓生に向けてメッセージをお願いします。

好きなことは「みつける」のではなく「つくる」もの

大学の4年間で、講義をきちんと受けることも大事だし、そうして損はないと思います。大学の図書館などを利用するのも良いかと思います。学校の外にも目をむけ、美術館や演劇など(サツダイからは、地下鉄・バスで「札幌芸術の森」や大通エリアにも出られますから)を見る体験も良いでしょう。なにより、自分の「好きなこと」を作ってください。

「好きなこと」は自分の内面にあります。自分が好きだったら好き、探しに行くというよりも自分の心の中で作るものです。興味のあることはなんでもトライしてみてください。「好きなこと」と「それで食えるかどうか」は別のことです。好きなことがなくても良いですが(無理して作る必要はありません)一つでもあると生活が楽になります。自分の人生の軸になります。

私は、サツダイ生時代のフリーペーパー作りを通して自分の好きなことが深まり、それが今の「まちづくり」につながっているように思います。「まちづくり」は決して特殊な活動ではありません。もし、「まちづくり」に興味がある方は、市の主催するまちづくりの活動やボランティア活動に参加してみたり、情報発信をしたりしてみると良いですよ。

経験と内省をバランスよく

経験するだけでは自分の好きなことを作ることは難しく、それを自分の心の中でどう消化していくかという「内省」を行わないと、せっかくの経験もただの「楽しかったこと」で終わってしまいます。もちろん内省だけでもだめで、やはり色んなところに行った経験が必要。経験と内省をバランスよく繰り返すことによって自分が見えてきます。経験することに関しては今の時代はとても恵まれているなと思います。

内省するコツは、自宅ではないところを選ぶこと。私は大学の自習室や談話室をよく利用していました。歩くのも好きなので、歩いているうちに考えを整理するということもよくやります。スマホは使い方に気を付けて。ノートみたいに情報を整理する分には良いですが、色々なコンテンツを次々と見てしまうと、それだけで時間が潰れてしまいます。過剰な情報は、自分のやりたいことを逆に濁してしまうリスクも。アイデアは常にシンプルで良いと思います。

TOPICS

石川さんが広報等を務めるすすきののまちづくり活動「鴨々川ノスタルジア」では、2023年9月2日(土)にお寺での怪談朗読イベント「口伝すすきの怪談2023」を開催します!今年度は、すすきのを舞台にした怪談を一般公募し、入賞作品が当日の怪談朗読会で披露されるということです。

ぜひ足をお運びください!

日時:2023年9月2日(土) 16時〜19時
会場:豊川稲荷札幌別院 玉宝禅寺祖院 本堂( 札幌市中央区南7西4)ほか料金:¥3,000(2会場共通券 公式ガイドムック Co Bocket+鴨どら付)
詳細が決まり次第、こちらのサイトにてお知らせします。

石川さんのその他の活動については以下リンクをご覧ください。

「わたしと藻嶺」について

「わたしと藻嶺」は、卒業生の皆さんが大学時代の思い出を共有し、それぞれの卒業後の活躍を応援する場です。さまざまな分野で活躍するサツダイOB・OGの皆さん、ぜひ取材させていただけないでしょうか?取材にご協力いただける方、また卒業生をご紹介していただける方は、札幌大学交流推進部広報渉外課までご連絡ください。本メディアに関するご質問やご意見、ご要望などもお寄せください。

▶「わたしと藻嶺」バックナンバーはこちらから

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