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校長先生からの電話とインディペンデントな息子氏の自由研究

本日9月8日土曜日。息子氏と一緒に、ポケモンとりがてら、仕事の資料本を買いに行こうと思っていたら、小学校から着信があるのに気づいた。

小学校からの着信は心臓に悪い。また学校でなにかやらかしたのかと思ったけれど(前科あり)、ん? 本人、ここにいるしなあ……
と思って留守電聞いたら

校長先生からの電話でした。

「今日、まだ登校されてませんけれど、大丈夫ですか?」という内容だった。

え? と思って慌てて行事カレンダー見たら、ごめん、息子。

今日は土曜登校の日だった。

しかも、参観日だった。

ちーん。

冤罪ごめん。
やらかしたのは母でした。
レイドバトルでファイヤー取りに行こうぜとかいってる場合じゃなかった。

ポケモン気分満々だった息子氏に慌ててランドセル背負わせて、音読の宿題が終わってないからいけないというので、「じゃあ2倍速で読みな!」というと「物語は読むスピードも大事なんだ」とか言い返してくる息子氏を羽交い締めにしながら「いいからさっさとよんで!」と『大きなかぶ』を音読させ、家を出る。

遅刻の際は父母のどちらかが、子供を持参しないと学校に入れてもらえないらしい。土曜参観ということで、おとーさん、おかーさんが多数ひしめく学校に、2時間遅刻して入場するという、宮本武蔵的な巌流島のアウェイな戦いの始まりです。

息子を届けて先生にお詫びしたらすぐに帰ろうと思っていたのですが、よく考えたら、参観日って、わたしも参加できるやつ、だよね。
せっかくだから、そのまま、2時間見学して行くことに。

夏休み明けの教室には、夏休み中の絵日記と、みんなの自由研究が飾られていました。
これがまた、みんな、ほんとに立派。
1年生とは思えない字の美しさ、自由研究の懲りよう。いやあ、すごいなぁと思いながら、はたと、息子氏の絵日記を見ると、彼の絵日記の絵だけボールペンで描かれたモノクロだった。
分量も、極端に短かった。短歌かよ!
そして、用紙がボロボロだった。
カラフルな絵日記が並ぶ中で、ひとつだけ時代が違う絵日記が混ざっているような異彩を放っていました。

自由研究は……と見渡すと、息子氏の自由研究はちょっとびっくりした状態で置かれていた。

実は、自由研究については、夏休み中に一悶着あったんだよね。

息子氏は小さい頃から工作好きで、まあまあいろんなものを作っている。
夏休みの自由研究という本やら、化学実験の図鑑やら、みきラボのYouTubeやらをいろいろ見ては、竹ひごを買ってだの、絵の具の赤が欲しいだの、ペットボトルの蓋に穴を開けるキリを買ってだの言われ、その都度、我らの味方ダイソーで工作用品を揃えてきた。
まあまあ大掛かりなものから、小さなもの、キットで作るものからオリジナルまで、なんかいろいろやってたっぽいので、自由研究については特に心配してなかった。
けれども、夏休み終盤に彼に「自由研究、どれを提出することにしたの?」と聞いたら、これ、と私に手渡してきたのが、A5のノートを破いた紙1枚。

そこにはカブトムシの絵がやはりボールペンで描かれていた。

♀「え? これ(だけ)?」
♂「うん、そう」
♀「え、でもいろいろ工作作ってたじゃん」
♂「あれはみんな大事だから持っていけない」
♀「え?」
♂「学校に持っていったら壊れるかもしれないし」
♀「……」

まあ、それも一理あるかと思って黙ってしまったのだけれど、でもそれにしても、このA5ペライチ(罫線入り)でいいんだろうかと思って

♀「じゃあ、前に作ったあの工作は?」
と提案すると、明らかに息子氏の顔色が変わって怒り出す。
♂「いいじゃん。先生だって、絵でもいいって言ってたんだから!」
と、大きな声で反論する。

ああ。そうだった……。

この子、インディペンデントなアレだった……

参照



「大人がこっちの方がいいと思っている」という空気を察したり、どこかに誘導されていると気づいたらもう、頑固なまでに動かないんだった、と思い出したときには、時すでに遅く……。

♂「とにかく、僕はこれを持っていく」
と、主張する彼に
♀「わかった。じゃあ、無くさないように、ちゃんとしまっておきなよ」
というのが精一杯だった。

そう、私はちゃんと言ったんだよね。「無くさないように、ちゃんとしまっておきなよ」って。

案の定、無くしたよね。ダチョウ倶楽部のアレかってくらいの予定調和で、無くしたよね。



始業式が始まる日の前日、彼は「自由研究(A5ペライチ)がない」と、大騒ぎしている。もう仕方ないので、これでも持っていったら? と、昔むかしに折って机に飾ってあった折り紙を渡したら、諦めたのか「うん」という。

♂「でも、これ、学校に持っていったら壊れない?」
と心配そうにいうので、紅茶の茶葉が入っていた缶の中に、2匹を入れて蓋を閉めた。
♀「缶に入れておけば、ランドセルの中でも折れたりやぶれたりしないでしょ」
♂「うん」

やっと納得したのか、彼はそれを持って登校したのだけれど……


自由研究発表が並ぶゾーンで、彼の自由研究は、紅茶の缶のまま、しかも蓋が閉められたままの状態で名札をつけられて飾られていたよね。

私は思った。

それ、自由研究じゃないから! ただの紅茶の缶だから!

折しも、今日の参観授業では自由研究の発表をするらしい。
発表の手順は
1)タイトル
2)どうしてその作品を作ろうと思ったのか
3)気づいたこと、頑張ったところなど
4)みんなにとくに見てほしい部分
で、順番に発表をしていくらしい。

彼の番がきた。みんなの前に立つ。

♂「タイトルは『ただの折り紙』です」
手元に目をやると、彼が持っているのは、どう見ても「ただの紅茶の缶」だ。
♂「どうしてその作品を作ろうと思ったのかというと、家に材料がなかったからです」
彼はそういうと、ちらっと私の顔を見る。をい! 夏休み中、何度もダイソーまでご足労あそばした私の時間返せ。
♂「気づいたこと、頑張ったことは……とくにありません」
♂「みんなにとくに見てほしい部分は……とくにありません」
ってゆーか、見て欲しい部分もなにも、それは紅茶の缶! 
カブトムシ、出して。今こそ出して!

という私の念力が通じたのかどうなのかわからないけれど、それまでiPadで発表を撮影していた先生は「はっ」と気づいたような顔をして、「それ、缶の中身、見せてくれるかな」と言ってくださった。
彼は神妙に頷き、茶色いカブトムシだけ、ほんの少し缶から顔を出した。

それまでは友達の発表を静かに聞いていただけのクラスの仲間たちが、彼の発表が終わった時だけ「質問!」と次々手を挙げ出した。
「どうしてその題材を選んだのか」「何か参考にした本はあったのか」「全部自分でやったのか、大人に手伝ってもらったのか」「折り紙何枚で作られているのか」などと質問され、ついに、カブトムシは缶から出て日の目をみることができておりました。


カブトムシさん。なによりです。

下校してきた息子と待ち合わせして、レストランでレイドバトルをしながらランチを食べる。

♀「今日はママ、勘違いしていて遅刻してごめんね」
♂「いや、別に、全然いいよ」
♀「みんなにいろいろ質問されてたじゃん。あのあと、カブトムシ、みんなに見せてあげたの?」
♂「うん」
♀「箱から出して?」
♂「うん」

スマホを連打しながら、彼は答える。
ちょっといい経験をしたんじゃないかなと思った。

♀「あのカブトムシ、かっこいいよね。ママ、あれ結構好き」
と言ったら、彼はスマホから目を離して「よっしゃー」と言った。

レイドバトルに勝ったそうです。

なによりです。

今度の父母面談でなにを聞こうか考えてます。

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