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どうしたら昆虫食を食べなくてよい未来が訪れるか

結論があまりに単純なので最初にどうすればよいか答えておくと、虫以外に食べるものがあればよいのです。
最近、昆虫食を食べたくない人たちが盛り上がっています。私は虫を食べる側の人間ですが、まぁ気持ちはわかります。(デマに踊らされるのはナンセンスですが)私も宇宙から超おいしいエイリアンが降ってきて、それが安全で養殖にも向いているとなっても正直食べたくありません。もしかしたらこれを食べないと飢えるという局面でも躊躇するかもしれません。
いろいろ(現行の食品では無視しているような)リスクを挙げている方はいますが、昆虫食に対する忌避感の本質とはこのようなわけのわからんゲテモノを食わされたくないという感情にあると思います。
では、どうすれば虫を食べなければならないという状況を回避できるのか。生態系を守ればよいのです。

昆虫食に携わる人たちが見ている未来

まず、何か誤解が発生しているように思いますが、昆虫食関係者の方々は昆虫食を食べなければならない未来を目指していません。

前に書いた記事でも解説しましたが、基本的に食文化における新たな選択肢の創造や古来からあった食文化の復権を目指しています。食料危機の解決を目標に据えている方たちも考え方はもっと柔軟で、資源を再利用して生産した昆虫をさらに家畜の飼料に使おうだとか、昆虫のタンパク質から培養肉を作ろうだとか考えています。
そもそも、甲殻類アレルギーを持つ人は昆虫を食べることができないので、そのあたりをきちんと認識しているのに虫を全人類が食べる未来を目指していたらもはや異常者です。甲殻類アレルギー持ちを未来から切り捨てています。(ちなみに私は甲殻類アレルギーなので虫を食べるとおなかを壊します)
昆虫食関係者の方々はだれも虫を強制的に食べさせようとしているわけではないということは正しく認識してください。

昆虫食を食べなくてよい未来のために

とりあえず、昆虫食を食べさせようとしている集団が存在するわけではないということは上の解説で理解していただけたと思います。
一方で、食べ物がなくて栄養になるものはなんでも食べざるを得ないという状況になれば好む好まないにかかわらず生きるために昆虫食を食べることを強いられる可能性があります。このような状態に陥ることを回避するために有効な手段が生態系を守ることです。

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/library/files/TEEB_pamphlet.pdf

これは生態系と生物多様性がいかに人間社会に貢献しているのか経済学的な視点から解説したパンフレットです。上に添付した写真は一例に過ぎずパンフレットを読んでいただければ経済的にわかる範囲でも人類の食糧生産に生態系が大きくかかわっていることがよくわかると思います。
また、これ以外にも例えメガソーラーによる山の開発が進み植生が壊滅した場合、保水力が低下し、川や地下水脈の水が枯れ、農地で作物の生産が行えなくなったり、山から海へ栄養が供給されなくなり今以上に魚が取れなくなるなんてこともあり得ます。
近年では植物工場などの選択肢も登場しつつありますが、少なくとも現状、植物工場で生産されるのは基本的にある程度の単価が見込める作物です。そのような環境で主食である米や麦、ましてや家畜の飼料の生産を行えるのでしょうか。
少なくとも現時点で人類の食糧生産は生態系の影響をもろに受ける環境から脱却することはできないと考えられます。
生態系が破壊された場合、これ以外にも様々なリスクが考えられますが、少なくとも食糧生産において生態系の豊かさが重要な役割を果たしていることは間違いないといえるでしょう。
人類が生きるために食べるものを選べる環境を保つためには生態系の保全が不可欠です。

まとめ

とりあえず、誰かが虫を食べることを強制しているという認識は誤りです。昆虫食は過去から続く文化であり、未来の可能性です。昆虫食の生産や研究を行っている方を含めてこれが正義だとも、確定された未来だとも言っていません。
一方で、昆虫を食べざるを得なくなる可能性が存在します。それは生きるためにそれ以外に選択肢がなくなった場合です。そのような状態に陥らないために必要なのは、昆虫食を攻撃することではなく、そうならない未来を作るために食糧生産の場やそれを支える生態系を守っていくことであると私は思います。

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