不快害虫が人類を滅ぼすかもしれない

殺虫剤に対して強い耐性を持つ蚊が現在東南アジアで猛威を振るっています。
蚊は多くの伝染病を媒介することから世界で一番人類を殺している生き物ともいわれており、農薬を使った駆除というものが一概に間違ったものであるとは言えないと思います。一方で、このような事例を見ていると農薬を乱用する現代社会に危機感を覚えます。

スーパー昆虫の誕生

近年、農薬に対する耐性を持った、あるいは持ったのではないかと考えられる昆虫に関するニュースを多く目にするようになりました。中には農薬被害により一度いなくなった昆虫が農薬耐性を得て戻ってきているのではないかという喜ばしい話もありましたが、多くの場合、駆除対象となっている虫が耐性を獲得し、農薬が効かなくなったという趣旨のニュースです。
下の記事はゴキブリを用いた実験ですが、驚異的なスピードで農薬に対する耐性を獲得し、最終的には農薬が効かなくなるという経過が示されています。

農薬は偉大な発明であり、これにより人類は健康を保ち、安定した食糧生産を行えています。一方で、このようなイタチごっこを続けていれば、そのうちに本当に必要な時に農薬が効かないという事例が発生するのではないかと思えてなりません。

農薬による被害

農薬に対して害虫が耐性を獲得するという問題以外にも農薬は現代にいたるまで様々な被害を引き起こしてきました。
最近特に問題とされている例を挙げるとネオニコチノイド系の農薬がミツバチの大量死や失踪の原因となっているのではないかというものがあります。

こちらはすでに実際の農業被害が生じており、中国の農場で本来ミツバチが担っていた受粉の作業を人間が手作業で行うことになったというニュースもありました。
受粉の役割を担う昆虫はミツバチだけではないとはいえ、このままミツバチが減少を続けた場合には現代食卓を支えるの一次産業や生態系そのものが根元から崩れる可能性があります。
わかりやすい被害以外にも生態系に対する被害は深刻であり、「虫が湧く」という言葉がありますが地方の高齢者に聞くと昔の農地や周辺には文字通り湧き出るほど虫がいたという話を聞くことができます。
一方、現代ではいくら豊かな自然が残った環境といえどそのような状況を目にすることはありません。無論、定量的な観測が行われているわけではありませんし、農薬以外に栄養が減ったなど別の原因も考えられますが、農薬が昆虫に与える影響は確実に存在します。(もっともそうでないと農薬を使う意味はないので、、、)また、目に見えない微生物レベルで見るとより深刻な影響が生じている可能性も考えられるのではないでしょうか。
農薬登場の以前と以降で生態系は全く別物となっている可能性があるのです。

せめて不快害虫に使うのはやめるべきではないか

なんだかかなり農薬に対して否定的な話を書いてきましたが、僕自身は農薬肯定派です。理由としては単純明快で現実的に無理だからです。
冒頭で農薬が効かない蚊が出てきた話をしましたが、これにより蚊の量がコントロールできなくなればデング熱などが大流行し多数の死者を得す恐れがあります。野菜の有機栽培などもよいものだと思いますが、有機栽培のみで人類の食卓を支えることは現実的に厳しいでしょう。
一方で、不必要な農薬の使用は否定的に考えています。
「不快害虫」という言葉があります。要するに、実際に人間には被害を与えるわけではないけれどなんとなく不快だから害虫のくくりでいいよねという虫です。
農薬の乱用が問題になっている中でさすがにこれはやりすぎではないでしょうか。上で挙げた通り、農薬は現実として問題を引き起こしています。今後、より安全な農薬が開発されたとしても虫を殺す以上、少なくとも生態系への影響は出ますし、ネオニコチノイド系農薬のように将来的に未知の被害を引き起こす可能性があります。(実際ネオニコチノイド系農薬は人間や水生生物に対してはほかの農薬よりも安全であるとされています)
農薬は薬でいえば抗生物質のようなもの、抗生物質は無計画に使って適切な効果が得られる薬ではありません。必要なものではありますが、より計画的な使用が求められる段階にシフトしているのではないでしょうか。

まとめ

大前提として農薬は必要なものです。一方で、様々な問題を引き起こしている現実があります。
そのような中で、不必要な農薬の使用を推奨するかのような枠組みを設けて無計画に農薬を使用するということはどうなのだろうと個人的に疑問を覚えます。


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